第6話
ギルドの建物に入り食事を頼むとスレイアが隣に座る。
「訓練、終わったんだね」
「終わった。そう言えば聞きたい事があって」
「なにかな?」
「解散した他のパーティーってどうなってるんだろ?」
「誰の事が聞きたいの? 全員?」
「うん、全員」
「そっか、私は家がお金持ちで平和に暮らしているよ。お父さんもお母さんもいい人」
「うん」
「次に男戦士のゴルドはモンスターを倒して娼館に寝泊まりしてるみたい」
「……そういう、感じか」
「うん。そういう感じ、それで女ヒーラーのヨルナはギルドの裏の方で回復魔法を使って生活してるよ。ヨルナはノワールのキャラが嫌いみたい」
なんだろう、生理的に受け付けない感じか。
悪役の俳優をやっているとその俳優が悪者に見えるみたいな感じなのかもしれない。
「今はヨルナに近づくのはやめておく」
「うん、それが良いと思う、それでね、ゲーム主人公の男サポーター、アレクなんだけど、今はメインクエだけを進めててサブクエを断わってるんだって」
メインクエはストーリー進行にかかわるクエストでサブクエはストーリー進行には関係ないクエストになる。
サブクエは報酬がボランティアのように少ないのでメインクエよりうまみが少ない。
レベル上げのついでに受けたり、メインクエを進めるついでに一緒に受けたりする、サブクエはそういうクエストだ。
もっと言えばメインクエを進める事で冒険者の等級が上がるイベントが起きる。
メインクエを進める事でアレクは木等級から元パーティーの鉄等級の俺達を追い越していく。
転生前のゲーム主人公なら困っている人を助ける為にサブクエを受けただろう。
でも今は受けないか。
ストラクタさんから見てノワールとアレクが入れ替わったように見えた理由はそれか。
「アレクって嫌われてるのか?」
「そこまでじゃないよ、ただ、ギルドの職員さんが違和感を感じているみたい」
把握しているのは一部の人だけか。
「そっか、ありがとう」
「所で、パーティーを組む話、受けてくれる?」
「あれってまだ続いてたのか」
「うん、どうかな? 私は魔法使いだから敵に接近されると厳しくて、それにスレイアのキャラは両親が怒らない性格で性格が悪くなっちゃったキャラだから私も嫌われてるんだよ」
「う~ん、それ以前に俺モンスターを一切倒したことが無い、あ、転生してからの話な」
「2人で洞窟に行ってみない?」
「そう、だな、うん、行ってみよう」
こうして2人で街を出て洞窟に向かった。
後ろからサーバント2体がついてくる。
洞窟はゲームに出てくる最初のダンジョンだ。
洞窟に入ると壁が光っておりうっすらと光が見える。
「あれ、思ったよりモンスターが少ないな」
「ゲーム主人公のアレクと戦士ゴルドが乱獲して少なくなっちゃってるよ。その後私も通ったから」
「そかあ、ゲームじゃないからモンスターは倒せば減るよな、宝箱は、無いよな?」
「うん、全部取られてた」
「奥に行こうか」
「そうだね」
2人で奥に進む。
道は大体暗記しているため迷う事は無い。
「あ、スライムだ!」
スライムは水色の丸いプルンとしたモンスターだ。
大きさは俺の腰位。
サーバントが一瞬でスライムを斬り倒した。
まるで豆腐でも斬るように真っ二つだ。
「あ! サーバント、下がろうか」
サーバントが後ろに下がった。
手をかざすと倒したスライムが吸い込まれる。
ストレージでバキュームのようにモンスターを吸い込む事が出来るのだ。
「報酬は山分けでいいよな?」
「今回はいいよ、だってスライムだし」
「……そか」
奥に進むと高さ3メートルほどの大きなスライムがいた。
「狩り尽くしたと思ったのに、まだボスがいたんだね」
「それか新しく発生したか。俺に攻撃させてくれ」
「いいよ」
俺はボススライム斬りかかった。
スパン!
「え?」
スライムがぱっくりと傷口を広げると体が地面に垂れて動かなくなった。
「もしかして倒したのか?」
俺はモンスターを倒したか確認するためにストレージに入れる。
倒していなければストレージに入れられないのだ。
「入った」
「ボス討伐おめでとう」
「お、おう。達成感ゼロだけどありがとう」
「帰ろっか」
「そう、だな」
「うん、ノワールはね、強くなったんだよ」
「そう、みたいだな」
最初のダンジョンとは言えボスを1撃で倒した。
俺は思ったより強くなっている。
スライムの動きが遅く見えた。
まるで止まっている敵に斬りかかるような感覚だった。
街に帰るとスレイアが俺の服を掴んだ。
明日も、ダンジョンに行ってみない?
「うん、分かった。明日もよろしくな」
スレイアが手を放さない。
「……ん?」
「明日の為に私の家で話し合いをしたいなあ」
「なんの?」
「色々と、ね」
「ここで言いづらい事なら、うん、分かった」
「ありがとう」
2人でスレイアの家に入る。
家が大きくて立派だ。
スレイアの両親は俺を温かく迎えてくれて食事をご馳走してくれてシャワーまで使わせてくれた。
そしてスレイアの両親は『君のつらい過去は聞いているよ、ここを我が家だと思ってゆっくりして欲しい』とか『後は若い者に任せて、私達は退散しましょう』と言って部屋に引っ込んでいった。
「絶対に勘違いしてるだろ」
「うん、私の部屋で話をしたいな」
「うん、分かった」
スレイアの部屋に入るとベッドが1つあり、スレイアは俺をベッドに座らせた。
そしてスレイアが俺の隣に座った。
「え?」
スレイヤは無言で俺の手を握った。
反対側の手で自分の髪を何度もいじり落ち着かないように見える。
2人で向かい合い無言で見つめ合う。
「……」
「……」
「……あのね、私とシテくれないかな?」
「……え?」
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