05
普通の女の子ではない。その一言にグサリと胸を貫かれたまま、私は二十歳を迎えた。
それからは、沢山の男性と闇雲に付き合ったり別れたりを繰り返した。身体だけの関係の人も居た。大学の授業には出ていたものの、カウンセリングにも行かなくなり、サークルも辞めてしまった。
このままではいけないと思ったのは、就職を控えた大学三年生のとき。リーマン・ショックが起こり、何の取り柄もない普通の大学生は内定を取れるはずもなかった。私は資格取得に向けての勉強を始め、忙しい毎日をスタートさせた。安定した職を手に入れることさえできれば、病気も治ると思った。実際、忙しさのせいか、症状は安定するようになった。
しかし、大学卒業までに内定を取ることはできなかった。私は以前から続けていたバイト先にフリーターとして残り、就職活動を続けることにした。この辺りの日記は残されていないが、自己分析のためのノートはいくつかあった。長所は明るいところ、短所は焦って失敗することが多いところ、と書かれていた。それはあながち間違いでは無かったと思う。
この頃、今の夫と親密になった。同じバイト先のお兄さん、と関係から、二人きりで遊びに行く仲となった。病気のことももちろん伝えていたが、夫はまるで臆することなく向き合ってくれた。
フリーター生活を一年続け、またもや正社員の職に就くことはできなかったが、市役所の臨時職員に受かった。非正規とはいえ、初めての就職である。給料は驚くほど少なく、実家暮らしでなければ到底生活できない程度であったが、待遇は良く、きちんと有給休暇も取らせてくれた。
それからようやく、今の職場(現在は退職済)と巡り合い、夢にまで見た正社員という地位を手に入れた。同期や上司にも恵まれ、このまま職場にいてさえいれば、幸せな将来を掴むことができると信じて疑わなかった。
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