77 仲良し②
そういえば……、俺……幼い頃もそうだったけど、高校生になった今も当たり前のようにひなの家に行っている。週に四日……。たまにひなが俺を呼ぶ時もあるけど、俺たちいつもひなの家に行くのを前提で話しているから。そこで一緒に夕飯を食べたり、二人っきりの時間を過ごしたりしている。
ずっとひなとくっついていた。
でも、さすがにそれはくっつきすぎだと思って、「今日はうちに行く」って言ったら、うちについてくるひなだった。
そのまま一緒に朝を迎えて、誤解は解いたけど……。
どうやら、ひなは俺がいないとダメみたいだ。ずっとそばにいる……。
「野菜は……、これがいいね。おおっ! こっちの果物美味しそう! あっ! あっち! セールしてる! 奏多、奏多!!! 何してんの! 早くこっち来てよ!」
「は、はい……」
放課後、ひなと一緒に買い物をする俺。
てか、これじゃ……どう見ても付き合っているようにしか見えないよな? 難しいね。
「奏多!!!」
「あっ! うん……」
「さっきからぼーっとしてて、どうしたの? 具合悪いの?」
「いや、きょ……、今日は何食べる?」
「カレー」
「いいね〜」
すると、こっそり手を握るひな。
それにビクッとして、体が固まってしまった……。
「奏多、本当に大丈夫なの? 最近、変!」
「…………ど、どうして?」
「ぼーっとしてて何考えてるのか全然分からないし、悩みがあるならすぐ私に相談するって言ったくせに何も言ってくれないし」
いや、それは相談できるレベルじゃないんだけど……。
むしろ、怒られると思う。
「なんでもない。ひなが作ってくれる夕飯が楽しみでさ」
「本当に?」
「うん、本当!」
「ふふっ。私、デザートも買いたい! 今日、冬子とチアの練習をしたからね。甘いものが食べたいよ!」
「そうしよう。それより、カゴ俺が持つから……。重いよね?」
「うん、ありがとう〜」
「行こう……」
そう言いながらさりげなくひなと腕を組む。
……
「ひな……、早くこれ冷蔵庫の中に入れないと…………」
「今日の奏多ちょっと変だから、キスして」
「えっ、どこが変だよ……」
「ぼーっとする時が多いからね、最近」
「……っ」
今は何気なく俺にキスを要求している。
そして前の俺だったらきっと恥ずかしくてその場ですぐ諦めたと思うけど、今は違う。ひなに「キスして」って言われると……、その場ですぐひなを抱きしめてしまう俺がいた。それ以上のことはまだできないけど、ひながやってほしいって言ってることは全部やっている。
朝起きた時にキス、お昼を食べる前にハグ、そして寝る前にキス。
恥ずかしいけど、だんだんキスが上手くなる俺だった。前にはひなに食べられているような気がしたけど、最近は……俺の方からひなを食べているような感じ。それほどキスという行為に慣れてしまった。
なのに、俺はどうして付き合ってって言えないんだ?
これはほぼ……。
「はあ…………、ううっ————! 好きぃ……」
「ひな……。最近、俺たちキスやりすぎじゃないのか……? ちょっとやばいと思うけど」
「一緒にお風呂入ってくれないくせに……」
「一緒に入ってほしいの? ひな」
「うん」
「どうして?」
「だって! 私は奏多のすべてが知りたいから!」
堂々と恥ずかしいことを言い出すひな、ある意味で尊敬している。
こっちはめっちゃ悩んでいるのに、ひなは堂々と話しているからさ……。やっぱりすごいな。
「…………」
じっとして俺を見ている。そして首を傾げるひな。
でも、まだ……。
「それはまだ早い、今はキスで勘弁して」
「そう……? 仕方ないね〜。じゃあ、キスして」
「また!?」
それから20分間……、玄関でひなとキスをしていた。
なんか、口の中からひなの味がするような……。
「次は、ぎゅっとして!」
「うん……」
「ひひっ」
「子供だね。ひなは」
「女の子はこういうのが好きだからね〜。好きな人とキスするの気持ちいいし……、奏多は嫌なの?」
「俺も好き……」
「ふふっ」
そしてひなが夕飯を作る間、俺はひなの部屋を片付けていた。
よく分からないけど、ひなは制服とか、私服とか、全然片付けないからさ。洗濯もほとんど俺がやってるし、俺がいないと本当に掃除をしない。なぜだ……? 料理はできるのに、なぜ掃除はできないんだ……? マジで分からない。
あのバカ……。
「……これ、ひなのストッキングか。もう5月だぞ。なんで、こんなところに……」
「奏多のエッチ……」
「うわっ! び、びっくりした……」
「私の部屋で、私のストッキングを持って何をしてるの? もしかして! 匂いを嗅いだり!」
「んなことするわけねぇだろ! ひな……、頼むから洗濯物はちゃんと洗濯かごに入れてくれ……」
「だって、それは奏多がやってくれないと……。私、掃除苦手だし〜」
「分かったからちゃんとかごの中に入れてくれ、それだけだ! 難しくないよな?」
「うん! 分かった! 多分!」
そう言いながら俺に抱きつくひな。
「なんで抱きつくんだよ……! 俺は掃除中だぞ」
「夕飯できたから〜♪ 一緒に食べよう〜。ダーリン♡」
「くっ! そ、そ、そうか……! 分かった。先に行ってて、俺もう少しで終わるから」
「は〜い!」
いきなりなんだよ……。心臓に良くない言葉はやめてくれ。本当に…………。
そして床に落ちているいくつかのボタンを拾って、それを引き出しの中に入れようとした時、俺の視界に……変なのが入ってきた。
「…………えっ? 何これ」
50個入り……。
なぜか、分かりそうな……。
こっそりその箱を開けて見たら、ゴムがたくさん入っていた。
これ……、まだ使ってないように見えるけど、こんなにたくさん……何をどうするつもりだろう。ひなぁ……。
「奏多〜。まだなの?」
「うわっ!」
びっくりしてすぐ引き出しを閉めたけど、顔に全部出てるような気がする。
いや、女の子の部屋に……。ベッドの隣に……、大容量のゴムがあったからさ。
ニコニコしているその顔を見て、なぜか緊張してしまう俺だった。
「どうしたの?」
「いや、えっと……」
すぐひなの体を抱きしめてあげた。
うわぁ、俺の心臓がめっちゃドキドキしている。
「えっと……、俺はひなが大好きだからさ。えっと……、ずっとひなと一緒にいたいとそう思っている。うん……」
「そう? 私もそうだよ! 早く夕飯食べよう!」
「分かった……」
そして部屋を出る前に、俺の頭を撫でてくれるひなだった。
一体……、何を見たんだろう。
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