52 うちあげ②
「う———っ! おいひい〜♡」
「そんなに美味しいのかよ、ひな。頬にソースついたぞ」
「えっ!? そうなの? 拭いて! 奏多」
「まったく……」
仕方がなく、ウエットティッシュでひなの頬を拭いてあげた。
そして、カラオケでたくさん歌った俺たちは現在ファミレスに来ている。恥ずかしいけど、俺とひなはこんな風に友達とファミレスに来たことないから、少しテンションが上がっていた。
てか、めっちゃ美味しそうに食べてんじゃん。子供かよ……、ひな。
「ファミレスでイチャイチャするのはよくないですよ、奏多先輩」
「別に……、そんなことしてねぇし」
「ふふっ、二人とも可愛いね」
「如月まで……」
「事実だからね」
「…………」
そして、本人は幸せそうな顔でもぐもぐとハンバーグを食べている。
全然気にしていない……!
マジですか、ひなさん。少しは空気を読んでください。一人だけそんなに美味しく食べるのはずるいですよ。
でも、可愛い……! 負けた。
「ねえねえ、私ね! こうやってみんなとカラオケに行ったり、ファミレスに行ったりするの初めてだよ!」
「えっ? そうなの? ひなちゃん、めっちゃモテそうなのに……。こんなこと初めてだなんて、びっくりした」
「えへへっ、友達が全然いなくてね。でも、ここに来て奏多と出会って! りおもいて、そして……冬子と友達になったから……。すごく嬉しい! 今、めっちゃ幸せだよ〜」
「ひ、ひなちゃん……。私たち、ずっと友達だよ!」
「うん! 友達だよ!」
なぜか、目の前で女子たちの友情が芽生えているけど……、この状況を俺はどう受け入れればいいんだろう。そして、菊池もいつの間にか如月と仲良くなったし……、その凄まじいコミュ力に驚いた。
「奏多、あーん!」
「じょ、冗談だろ? ここであーんとかするわけないだろ? 恥ずかしいから……」
「…………」
すると、すぐ凹むひなだった。
いや、これはやばい。
「奏多先輩!」
「宮内くん!」
なんで、二人が同時に怒ってるんだよ……。姉妹か!
「分かった! あーんすればいいだろ!?」
「えへっ! はい! あーん」
女子たちの前で……、俺はどうしてこんな恥ずかしいことをしないといけないんだろう。恥ずかしすぎて、ずっと下を向いていた。ハンバーグはめっちゃ美味しかったけど、くすくすと笑っている菊池と如月に真っ赤になった自分の顔を見せたくなかったから———。
やはり女子は苦手だ……。
「ふふっ、美味しい?」
「う、うん……」
……
「今日は楽しかったです! こうやって先輩たちと遊ぶのもいいですね〜」
「私も楽しかったよ。本当にありがとう、みんな……」
「私もだよ。だから、また遊ぼうね! りお、冬子!」
「はい!」
「うん!」
駅の前で二人と別れた後、俺はひなの家に行くことにした。
ひなには何も言われてないけど、なんっていうかひなの顔に「うち行くよね?」って書いていてさ。テストも終わったし、バイトもないし、ひなと二人っきりでゆっくりするのもいいと思う。
今日はマジで楽しかった。
「奏多……」
「うん?」
「私、本当に……こういうの初めてだからね。すごく楽しかった」
「そうか? 実は俺も……、初めてだからさ」
「へへっ、田舎にいる時はずっと一人だったからね。やっぱり、みんなと一緒に遊ぶのはすごく楽しい!」
「そうだね。また、みんなと遊ぼう。ひな」
「うん……!」
そう言いながら、俺たちはゆっくりその道を歩いていた。
綺麗な夕焼けを見つめながら———。
そうやって、少しずつ忘れればいい。うみとあったことを、そして思い出したくない昔のことをさ。
「ねえ、奏多。一緒にお風呂入る?」
「なんで、さらっとやばいことを言い出すんだ……。ひな」
「ふふっ、奏多の温もりを感じたいから」
「ひな、変態」
「ええ……」
家に入ったばかりなのに……、まったく。
そういえば、ひな……腹に残ったあのあざは消えたのかな? 少し気になるけど、ここで「脱いで」とか言えないし。他の言い方はないのか少し悩んでみたけど「見せて」もおかしいよな。
三木さんが来たあの日、実は俺もひなの腹をちらっと見たからさ……。
あざがすごかった気がする。
「奏多? どうしたの? ぼーっとしてて」
「いや……、ちょっと気になることがあるけど」
「うん?」
「腹にできたあざは消えたのか? ひな」
「えっ? それって! 奏多の前で脱いでってこと!?」
「いや、違う!!! なんでそうなるんだよ!!! 俺は腹にできたあざが心配だから、聞いただけなのに……」
「つまり……、ここで私を襲って……、私の制服を脱がしたいってこと!? 女の子のお腹を見たいの!? 奏多」
「…………」
「えへっ! 冗談〜」
「まったく……」
「あざね。消えたような気がするけど、どうかな? 奏多が見てくれない? ちょっと待ってて……」
カバンを下ろしてブラウスのボタンを外すひな。
しばらく、ひなから目を逸らしていた。
「奏多が見てくれない? まだ残ってるのかな……? あざ」
「えっと……。ううん……、綺麗になっ———」
その時だった。
スルッとひなのスカートが床に落ちる。
「えっ?」
「あっ!」
「はあ!?!!?!」
め、目の前に……ひなのパン———。
いやいや、落ち着け。宮内奏多、これは……この状況は一体なんなんだ……?
そのままひなから目を逸らしてしまった。
「あははっ、ごめんね〜。見えないかと思って……、スカートのファスナーをちょっと……」
「ちょっと……?」
「見た?」
「何を……」
「下着……」
「見てねぇよ」
「本当に?」
「そう」
「ふーん。テストも終わったし、今日奏多をうちに連れてくるつもりだったから、気合い入れたけど……」
「…………」
気合い……。
ふと、ひなの下着色を思い出す。なんでこんな時に思い出すんだよ! そんなの思い出さなくてもいいだろ!
まったく。
「奏多のエッチ、ふふふっ」
「う、うるせぇ! ひなは早くお風呂入ろ! お、俺は……、適当にテレビでも見てるからさ!」
「はいはい〜。でも、一緒に入るチャンスは今しかないよ?」
「うるせぇ!!! 早く入れ!」
「は〜い!」
なんか、ひなの家に来ただけなのに……疲れてしまった。
てか、スカート……床に置きっぱなしじゃん。
このだらしない女の子を、俺は一体どうすればいいんだろう。
「あっ! 奏多! 私、着替え持ってくるのうっかりしちゃった! えへへっ」
「はあ? タンスにあるだろ? 自分で持っていけば?」
「ダメだよ! 今全裸だから!」
「…………」
「奏多が持ってきて!」
「はいはい……」
三木さん、俺……マジで何もしてないんですよ。誤解しないでください。
と、独り言を言う俺だった。
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