39 一緒②
深夜の0時、奏多のそばで目が覚めた。
そういえば……、寝る前にちゃんとズボンを脱いだはずなのに、なぜズボンを履いてるんだろう私。それに、上着のボタンも———。どうやら、寝ている間に奏多がズボンを着せてボタンをはめてくれたみたいだ。
エッチ……。
「…………っ!」
そして、あの人に殴られたところがまだ痛い。
それもあるけど……、この苦痛があの時のことを思い出させてくれるからすごく怖かった。忘れたいのに、忘れられない。
「…………」
でも、今は奏多がそばにいるから……嬉しい。
こうやって一緒に寝るのは私たちにとって当たり前のことだけど、奏多はまだ慣れていないみたいだ。私だけ、あの時のことを大切にしている。でもね、高校生になっても奏多は奏多だし、私は私だから……、幼い頃みたいに奏多とくっつきたい。すごく気持ちいいからね———。
私は、その匂いと温もりが欲しかった。
他の人じゃダメ、奏多じゃなきゃダメ……。
そして、その時……お母さんからメッセージが来る。『今、寝てる?』と。
多分、学校であったことで連絡をしたはずだから、すぐお母さんに電話をかけた。
私もどうなったのか知りたかったから。
「ひな?」
「うん、お母さん」
「ひなが送ったメッセージを読んで、学校で先生の話も聞いたよ。まず……、体はどう? 大丈夫?」
「うん、特に問題はないと思う……」
「うん。そして、斉藤一馬について話したいことがあったからメッセージを送ったけど、結論から言うと、あの人は退学処分を受けることになった。だから、心配しないで」
「そうなんだ……」
「でも、どうして……あの人について行ったの? 理由……聞いてもいいのかな?」
「…………」
理由ね……、それを考える前に体が勝手に動いた。
あの人がまた奏多に変なことをするかもしれないから、私はあの人と話したことをすべて証拠として残すつもりだった。奏多は私のすべてだから、そんな奏多にまた変なことをしたら私が許さない。今度は……、私が奏多を守ってあげるつもりだった。
りおに言われた通り、奏多はあんなことをするような人じゃない。
そう信じたい。だって、私にすごく優しくしてくれるから……。奏多は……、優しい人だから。
やっぱり……、私は奏多がことが大好き…………。
その名前を言われただけで、すぐついていくほど……私は奏多が好き。本当に、バカみたい。
奏多と幸せになりたい……。
「ひな? どうしたの?」
「ううん……。あの人たちがまた奏多をいじめるかもしれないから…………」
「そうなんだ。ひなは奏多のことが好きだからね。そして、菊池という後輩にも話を聞いたけど、無理はしないで」
「うん。ごめん……、迷惑をかけて…………。お母さん、忙しいのに」
「何言ってるの? お母さんはひなのためならなんでもする。今日は警察を呼んだから……、お母さんは絶対あの人を許さない。私の可愛い娘に…………」
「ありがと……。次はもっと注意するから」
「うん……」
「おやすみ、お母さん」
「おやすみ、ひな」
床にスマホを置いて、奏多の頭を撫でてあげた。
これで、一匹……駆除したね。すごく危なかったけど……。
そして、北川うみ。あんたを苦しめるために何をすればいいのか……、私はずっとそれだけを考えていたよ。私の3年———。いや、それ以上の時間を……私はあんたに奪われた。なぜ、そんなことをしたのか……私はずっと知りたかったけど、奏多にやったことを自分の目で確認したあの日。諦めた———。
そして、絶対許さないとそう思った。
私のために、すべてを諦めたことある奏多が……私を嫌がっていたとは思わない。
だから、あの時……みんなの前で奏多の手を握った。
これは……私の物だよ。生まれた時から、私のそばで……私とたくさんの時間を過ごした。私の大切な宝物だよ。北川うみ…………、あんたは邪魔者。
「…………」
キッチンで水を飲んだ後、しばらく真っ暗な夜空を眺める。
そして、愚かな自分を責めていた。
斉藤が普段から私の方を見ていたのは知っていたけど……、もっと冷静で考えるべきだった。本当に、私はバカだ……。
「はあ…………」
ため息をついた後、部屋に戻る。
そして、ベッドで寝ている奏多を見つめていた。
すぐ前にいるのに、すやすやと寝ている。私に全然気づいていない。
「可愛い……」
「…………」
「ふふっ」
時間も遅いから私も寝ようとした。
奏多の前でさりげなくズボンを脱いで、上着のボタンを外す。奏多と同じ部屋着を着るのも好きだけど、やっぱり私は奏多の温もりを感じるのがもっと好き。そして、幼い頃にはさりげなく奏多の服の中に手を入れたよね。あの時の奏多びっくりしていて、すっごく可愛かった。
今なら……。
「うぅ……」
どうせ、寝ているからこっそりシャツの中に手を入れた。
すごい。奏多の体は……、硬いね……。私と全然違う。
でも、どうして奏多は私に何もしてくれないのかな…………?
もしかして、私……魅力ないの? 奏多。
あるいは……、幼馴染だから恋愛対象として見れないの……? 聞きたいけど、怖くて聞けない。
「…………おぉ」
奏多の胸元に手のひらを当てると、ドキドキする心臓の鼓動が伝わる。
そして、我慢できずぎゅっと奏多を抱きしめた。私と同じシャンプーとボディソープを使って、同じいい匂いがする。すっごく好き……。この時間が永遠に続いてほしい、ずっとこのままでいたい。
私の……物だよ…………。奏多♡
「…………」
でも、なんか足りないなとそう思っていた。寝ている奏多の横顔を見つめながら、なぜか固唾を飲む私……。
どうせ、私たちキスしたことあるから……。こんなことで悩む必要はないよね。
うん……。奏多は私を離れないって約束したから———。
「…………」
チュッ。
「…………っ」
静かな部屋の中、私は奏多の唇に軽くキスをした。
その後、すぐ奏多を抱きしめる。
下着の上に部屋着の上着しか着てないのに、すごく暑い…………。そして、すごく恥ずかしい。
「寝よう…………」
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