40 一緒③
「ううん……」
眩しい日差しと、そばからぎゅっと俺を抱きしめるひな。
今朝もひなのベッドで朝を迎える俺だった。
昨夜はずっと不安そうに見えたから、なるべく不安を感じないようにひなを抱きしめてあげたけど。それが原因だったのかな……? 暖房をつけてないのに、すごく暑い。朝から汗をかいているのはちょっとやばかった。
そして、ひなから甘い匂いがする。恥ずっ。
「…………」
てか、俺……寝る前にちゃんとボタンをはめてあげたのに……。
朝起きたら……そのボタンが全部外れていた。一体……、どんだけ寝癖が悪いんだろう。幼い頃からそうだったのは分かるけど、今は女子高生なのにこんな無防備な姿で寝るのはちょっと……。
白———。
いやいや、何を見ているんだ。宮内奏多……!
てか、今のは……不可抗力だ! そんなことより……、どうしてズボンを履いてないんだよ! それもちゃんと着せてあげたはずのに、昨夜……一体何が起こったんだろう。
全然分からない、どうして……半裸のひなが俺のそばに!?
「ひなの寝顔、可愛いよね? 奏多」
すると、後ろから聞こえる懐かしい声……。これは三木さんの声…………。
でもさ、どうして俺の後ろに三木さんがいるんだ?
「えっ!? み、三木さん……!」
「おはよう、奏多」
三木さんと目が合った時、『危機』だと心の底からそう叫んでいた。
昨日……ひなと同じベッドで寝たし、それにひなのこの格好を見たら絶対誤解されるはずだからさ。頭の中が真っ白になる……。三木さんと会うのは3年ぶりだと思うけど、3年ぶりに会った人が自分の娘とこんなことをしているから。絶対、怒られると思う。
どうしたらいいのか分からない。
それもそうだけど、相変わらずすごい美人だな。ひなのお母さんは。目が合っただけなのに、すごく緊張している俺だった。
助けてぇ、ひな。
「ずっとひなのそばにいてあげたの? 奏多」
「は、はい……」
「ありがとう。仲良さそうに見えて、ホッとした」
「は、はい……」
「ううん……。奏多……、朝から誰と電話してるの? 今日は土曜日だから……、もうちょっと寝よう……」
そう言いながら体を起こすひな。
そして、着ていた部屋着と下着の肩紐がずれ落ちて思わず「キャー!」と、俺が声を上げてしまった。
そのまま手のひらで自分の目を隠す。
「ひなぁ……! ちゃんと服を着てくれぇ!!!」
「あっ……。ごめんね。えへへっ」
「ひな……。いくら幼馴染だとしても、奏多の前ではちゃんと服を着て…………」
「はい……」
「あざができたね、お腹に」
「うん……」
「もう……心配しないで。ひな。全部終わったから」
「うん……」
そして、二人がいろいろ話している間、俺ずっと自分の目を隠していた。
いや、俺は一体……この状況で何をすればいいんだ……? 右側には半裸のひながいて、左側には三木さんがいる。
万事休す……。
でも、普通に会話をしている二人だった。
「ところで、これは誰のズボンかな?」
床に落ちているひなのズボン、それを拾った三木さんが俺の方を見ていた。
違う、俺のじゃないです! いや、その前に俺……何もしてないです!
てか、ひなはどうして寝る時にズボンを脱ぐんだよぉ……! 頼むから寝る時は普通に寝てくれぇ……! なんで……、いつもそんな無防備な姿で俺のそばで寝てるんだよぉ! と、話したい俺だった。
とはいえ、三木さんがいるから口に出せない。
「…………」
「私のだよ! 奏多とくっついていて暑かったからね。脱いじゃった! えへっ」
「堂々とそんなこと言わないでぇ……、ひなぁ……」
「…………」
「大丈夫! 奏多は変なことしないから!」
「ふふっ、そうだよね。お母さんは今から朝ご飯を作るから、ゆっくりして」
「うん!」
嵐のようなひと時が過ぎた後、俺とひなはしばらくベッドでじっとしていた。
まさか、三木さんが来るとは思わなかったからさ……。本当にびっくりした。俺は生きているよな? 今……、生きているよな? すごく緊張していて、心臓がドキドキしていた。
そして、ひなの方を見る。
「ど、どうしたの? 奏多」
「まったく、ちゃんと服を着てくれ……。なんでいつもそんなに無防備なんだよ、ひな」
「だって……、奏多とくっつくとすぐ暑くなるから! でも、離れるのは嫌だから脱ぐしかなかったよ!」
そう言いながら、半裸で俺にくっつくひな。
ちょっと……!
「…………分かった、分かった。まずはズボンを履いてくれ」
「はい〜」
なぜか、じっと俺を見つめるひな。
「どうした?」
「奏多は昨日……どうだった?」
「えっ? どうだったって?」
「その……、私とずっとくっついてたでしょ!? 何も感じなかったの?」
「それ……、言わないといけないのか……? ひなぁ」
「言ってくれないと分からないから……。私は……、奏多と一緒にいてすごく気持ちよかったのに…………」
「お、俺もだよ? ひなと一緒にいてすっごく気持ちよかった……」
「だよね!?」
「すごく暑かったけど……」
「ひん…………」
「そんなことで落ち込むなよ……」
「はい〜」
そのまま布団の中でズボンを履くひなと、そんなひなから目を逸らす俺。
やっぱり、いろいろやばいな。
てか、ひなは……俺のことを信頼しすぎじゃないのか? 俺も一応男だから限界ってのがあるし……、ずっと無防備な姿でそばにいるといつどんなことが起こるのか分からないからさ。
まったく……、このバカ。
「…………」
そして、朝だから———。
「ズボンも履いたし、ボタンもはめたし! どー!?」
「なんだよ、そのドヤ顔は……」
「ひな、えらい!」
「…………はいはい、えらい……」
「そして! 今から奏多に突撃しまーす!」
「はあっ———!」
いきなり俺に抱きつくひな、そのままベッドに倒れてしまう俺だった。
なんか、すごく嬉しそうに見えるけど…………。三木さんが来てくれたからか? テンション上がってるね、ひな。
「へへへっ、奏多よわーい!」
「ええ……」
「ふふふっ」
そして……、さりげなく俺の体に乗っかるひなに……すごい危機を感じる。
やばいやばいやばいよ……!
「ひな……。そこから降りてくれない?」
「どうして?」
「えっと……、朝からこんなことをするのはよくないからさぁ……」
「…………ん?」
ぼーっと奏多を見つめていたひなは、お尻から感じられるある感触に気づく。
そして、こっそり頬を染めていた。
「…………」
「…………」
「ご、ごめん……。えっと……! お、お、お腹! お腹空いたから……! そろそろ朝ご飯食べよう! 奏多!」
「…………う、うん」
やっぱり……、バレたのか。
さっきまで首を傾げていたのに、顔が真っ赤になっている。まったく、朝から何をしているんだろう。俺たちは…………。
しばらく二人の間に静寂が流れた。
「奏多…………」
「うん?」
「部屋を出る前に……、その……ぎゅっとしてくれない?」
「…………分かった」
そのままひなを抱きしめた。
本当に……、朝から何をしているんだろうな。俺たち…………。恥ずっ。
「はいはい。行こう行こう」
「うん……」
奏多が部屋を出た後、こっそり熱くなった自分の顔を触るひな。
そして、ちらっと鏡の方を見た。
「真っ赤……」
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