第4話満月と入浴と晩酌と…
夕食を終えた僕らだった。
食器の片付けをしているとソフィはリビングのソファで窓の外の景色を眺めていた。
本日の夜空には大きな満月が出ている。
それを観ていたソフィは何かを憂いているような表情を浮かべていた。
しかしながら何処かリラックスしているような彼女の姿を目にした僕の表情は少しだけ綻んでいたことだろう。
「先にお風呂入ってください」
今は夏だったが彼女のために湯船に湯を張っていた。
しかしながら僕の気を使ったはずの行動は無意味に終わる。
「いいえ…お風呂は苦手なの…」
「えっと…じゃあシャワーを浴びてきたらどうですか?」
「シャワーも苦手なのよ」
「あぁー…じゃあ入らないんですか?」
「うん…そもそも私に入浴は必要ないっていうか…」
「いやいや…いくら美女でもお風呂に入らないと…
色々とまずくないですか?」
「ふぅーん。私のこと美女だって思っているんだ?」
不意に漏れてしまった僕の本音を耳にしたソフィは悪戯な表情を浮かべて微笑んでいる。
少しだけ気まずい思いに駆られた僕は誤魔化すようにわざとらしく咳払いを一つ。
頭を振るように首を左右に振ると苦笑で応えていた。
「まぁ…とにかく心配してくれる気持ちは嬉しいけど…
私は大丈夫だから。
片付けが終わったらなら…お風呂どうぞ」
「そうですか…じゃあ遠慮なく入ってきますね」
それだけ言い残した僕はその足で風呂場へと向かう。
湯船にしっかりと浸かって本日の疲れを癒やすと全身を洗って入浴を終えるのであった。
風呂から出た僕は髪を乾かしてリビングに再び顔を出す。
エアコンの効いたリビングでソフィはソファの上で寝転んでいた。
眠っているのかと思った僕は彼女にタオルケットを掛けていた。
「ん?寝てないよ?でもありがとう」
僕の角度からでは良く見えていなかったが彼女は寝転がりながらテレビを観ていたようだった。
「寒くないですか?」
「うん。問題ないよ。寒さはあまり感じないほうだから」
「へぇー。寒い地方の出身ですか?」
「地方っていうか…国だね」
「そうなんですね。ソフィさんは異国の地からやってきたと?」
「あぁー…まぁ…いつか話すね」
「ですか…お酒でも飲みます?」
「そんな贅沢をしても良いの?」
「僕の晩酌に付き合ってくれるなら。喜んで」
「よし。じゃあいただきます」
そうして僕らは夜を通して晩酌の時間を過ごすのであった。
時計の針が天辺を迎えるあたりまで僕らは楽しいお酒の時間を過ごしていた。
彼女も僕もあまり酔うようなことはなく…
「勝はお酒強いんだ?」
「そうでもないですよ。緊張しているだけだと思います」
「緊張?」
「美女と飲む機会なんて無かったので…」
「ふっ。そうなんだ」
ソフィは容姿を褒められたことが嬉しいのか柔和な笑顔を浮かべていた。
その表情を目にした僕の心は明らかに弾んでいたが…
「明日も仕事でしょ?そろそろ休もう」
ソフィの提案により僕らの晩酌の時間は終了を迎える。
片付けは明日の早朝の僕に任せて。
僕らはリビングで別れを告げる。
ソフィに寝室のベッドを譲ると僕はリビングのソファで眠るのであった。
真夜中のこと…
何かが動いている音がして…
僕は心地良い酔と眠気を感じていたが目を覚ます。
しかしながら…それは…
次回へ…
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