第3話心地良いとすら感じる関係性

仕事を終えた僕はソフィと共に家を出ていく。

車に乗り込んだ僕らは駅近くのデパートへと向かっていた。

ソフィの提案で向かうことになった場所なので不意に彼女に質問をしていた。


「何が欲しいんです?」


僕の問にソフィは少しだけ怪訝な表情を浮かべて唇を尖らせていた。


「女性が言いたがらないことを根掘り葉掘り聞こうとする男性は嫌われるわよ?」


「え?そんなに大層な話だったんですか…」


「荷物もなしに男性の家に転がり込んだのよ?

必要なものの想像ぐらいつくでしょ?」


「えっと…?」


「下着よ!想像力に欠けるんじゃない?」


ソフィは少しだけ皮肉の様な言葉を口にして苦笑していた。

確かに想像力に欠けていたことに遅れて気付いた僕は申し訳無さそうな表情を浮かべていたことだろう。


「まぁ…連れて行ってもらうわけだし…

私も言葉が悪かったわね…」


「いえ。僕も本当に想像力に欠けていたのは事実ですし…」


「意地悪を言っただけよ…気にしないで…」


「ですか…」


僕らは少しだけ気まずい雰囲気に包まれながら…

そのまま蒸し暑い車内に揺られてデパートへと向かうのであった。



駐車場に車を停めた僕らはデパートの中に入りエレベーターに乗り込んでいた。


「私は一人で買い物してくるから…」


「分かった。日用品なんかは僕が適当に買ってくる。それで良い?」


「良いわ。お願いね」


僕らは別々の階で降りると必要な物を購入してデパートを後にするのであった。




「必要な物は買えた?」


お互いが同じ質問をして僕らは頷き合っていた。


「食材も買っておいた。嫌いな食べ物を聞いていなかったけど…」


「嫌いなものは避けて食べるから気にしないで」


「そう。ありがとう」


「あまり私に気を使わないで」


「でも…」


「良いのよ。私が勝手に転がり込んだんだから」


「ですか…」


未だに彼女の本当の正体を理解できていない僕だったが…

僕らは少しづつ距離を近づけている。

勝手にもそんな気がしていたのだ。



帰宅した僕らはキッチンに立って夕食の準備をしている。

ソフィは買ってきた荷物を開けており僕らには無言の時間が流れていたことだろう。

今度はそれに気まずさを感じるわけでもなく…

僕は今の空気感が少しだけ心地良いとすら感じていたのだ。

勘違いかもしれないが彼女もそう感じていると…

なんとなく直感的に思っていたのだ。


「私が何者なのか…気になったりしない?」


彼女は唐突に質問をしてくるので僕は首を傾げていたことだろう。


「気にならない…?不思議な人ね」


「そう?別に…普通だと思うけど…」


「普通じゃない。ベンチに寝転んでいる女性を家に運ぶのも…

色々と普通には思えないわ…」


「それをソフィが言うの?」


「私は普通じゃない?」


「さぁ。どちらでも良いよ」


「じゃあ私達は変わり者同士ってことね」


「そういうことにしよう」


そんな他愛のない会話を繰り返して僕らは夕食の準備を整えて二人きりの時間を過ごすのであった。



夕食を終えたら…

入浴に睡眠が待っている。


それは次回で。

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