第30話 カミサマとのゲーム。

巡も戻ってきていた。

その話を聞いて驚いてしまう。


「神様っていてくれて、助けてくれたんだよ。気まぐれでラッキーな話で、験と私の願いが一緒で、もう一度会えたら何があっても結ばれるって言葉が本当か知りたいから助けてくれたんだって」

「何それ?」


巡の話を聞いて驚いてしまうが、なんとなくひでーもんだと思ってしまう。

だが、それをしてくれたから俺は今こうしていられる。


俺が死に、遺体を処置する為に連れていかれてしまった後、泣き疲れて寝てしまった巡の夢枕にカミサマが現れる。

神様じゃなくて自称カミサマなのが怖い。


なんでもイケイケな格好の男神が現れて、「面白いな。お前と死んでしまった男の願いが一緒だった。もしやり直せたら本当に再び結ばれるか?」と聞いてきて、巡が頷くと「よし、一つゲームをしよう」と持ちかけてくる。


「ゲームですか?」

「ああ、ルールは俺様の言う事を聞く事、お前はそのルールに従う事。その中でお前達が再び結ばれたら勝ちだ」


そう言って提示されたルールはひでーのなんの、巡と俺じゃなきゃどうしようもないやつだ。


「ひとつ、お前は彼氏にやり直しを悟られてはならない」

「ひとつ、俺様はお前達の愛が気になるから機会を与えてやるだけだ。だから試練を与える。お前の彼氏はモテ期になる。手当たり次第なんかではなく、キチンと…そうだな、2人の女に言い寄られる。お前はそれを拒絶してはいけない」

「ひとつ、お前から告白するのはダメだ」


そして四つ目が酷い。


「なあ、人魚姫って知ってるよな?お前の恋が報われなければ、愛が結実しなければ、お前は死ぬ。それでもやるか?」


巡は躊躇なく「やります。私と験は今度こそずっと一緒って約束しました」と言うと目が覚めて、俺と同じ一年の4月の朝に戻っていた。


目を伏せて思い出すように「験が手術入院してくれて、本当に嬉しかったんだ」と言ってからニコニコ笑顔になる巡をみて、「…でも夢かもって思わなかったの?」と聞くと「思えないんだなぁ、コレが」と言いながらスマホの画面を向けてくる。

画面には長髪男のアイコンがあって名前は「カミサマ」になっている。


「何これ?」

「お、験には見えたね。神様が言うには認識阻害がされていて、選ばれた人にしか見えないアプリ、消す事も何にも出来ないの。起動するとね…」


巡が起動すると、中には指令と記録のボタンしかない。


指令には[バレンタインデーは、チョコレートを用意しても渡しに行くな]が昨日の日付で最新で、遡ると年末には[宮城光を蕎麦に誘え、年始の話題を振って、宮城光を誘え]とか書かれているし、クリスマスは[まだ早い、告白はさせるな]なんてある。

あ、最初のデートは[人魚姫の本をねだれ]なんてある。


「何これ、マジで?イタズラって事にしちゃう気は?」

「ないよぉ、こっち見たら信じるしかなくなるよ」


一度戻って記録をタップすると、記録にはもうない時間、俺と巡が付き合ってから死ぬまでの散々撮った写真達が入っていた。


「げ…、懐かしくない。不健康そう」

「うん。コレがあるんだよ?コレをみたら夢なんて思えないよぉ」


そして、巡は少し含み笑いをすると、「験、ありがとう」と言って昔のようにキスをしてきて、「私達…、験は神様の予測に勝ったんだよ」と言ってとんでもない話をした。


履歴を見ると[高城験は完治した。夏休みから攻勢に出る。覚悟するんだな]と書かれていて、それを読んだ俺に「神様とのルールにもうひとつあったんだよ」と言った。


確かにルールはもう一つあったが、俺と巡には意味をなさなかった。


「ひとつ、お前の彼氏が俺様の用意する女になびきかける度に、彼氏の病巣と同じ箇所に激痛が走る。せいぜい攻勢に出たら引きこもりになるんだな」


俺はそれを聞いて、ようやく2学期初日の巡が日焼けしていなかった理由に気付き、「…あ、それで夏休み明けの巡は日焼けしてなかったの?」と聞くと、涙ながらに笑う巡は「うん。でもね」と言ってから、「一度も背中は痛くならなかったよ」と言うと、俺を抱きしめて「神様がゲームにならないってクレーム入れてきたんだよ」と言ってまたキスをしてくれた。


「え?」

「験はあんなに綺麗な白城さんや可愛い宮城さんに何にも思わないんだよ?嬉しくてビックリしちゃったよ」


下心があれば巡が苦しむ。

それなのに巡は、カミサマが用意した宮城光や白城さんを歓迎して応援をしなければいけなかった。


でも俺は全時間巡一筋で、カミサマとしてはゲームにならない。


俺は無事な巡を見て、「…俺と巡ならワンサイドは当然だけど、ルール変更とかなくて良かったよ」と言うと、巡は呆れ笑いをして「あったよルール変更」と言った。

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