第31話 変更されたルール。

巡は体育祭の頃に夢枕に立った男神が不機嫌一色で、「なんだお前ら?つまんねーの。全然享楽的じゃねーし。俺様退屈」と出会い頭に言ってくる。


「次までになんかルール変更考えるから覚悟しておけよな」


そう言って帰って行ったカミサマらしいが、巡が無理難題の可能性を想像してに戦々恐々とした翌日、夢に現れた知らない女神が左頬を3倍に腫らした男神やその他の神を連れて謝りに来たらしい。


仁王立ちの女神は巡の前に男神達を正座させると、男神の方を向いて「ルール変更?しないわよね?」と睨みながら聞く。

男神が「はい…、俺様はしません」と肩を落としながら言うと、横の女神達にも「余計な手出し?しないわよね?」と詰める。


震えながら「し…しないですぅ」、「しません…」と言う女神を見て、何もわからない巡が目を丸くしていると、「ごめんなさい。赤城巡さん」と謝ってきた女神。


「本当は命に関わる事をしたくないし、させたくないの。でも始まってしまったから、それをやめさせて、全てを夢にして高城験さんの亡くなった時に戻すことはしない。だからこのままゲームを続けて欲しいの」


巡からしたら俺が消える事はダメだということでゲームの継続を願う。


話の流れから、男神だけじゃなくて、怒られてる女神達について聞いてみると、俺が宮城光や白城さんの誘惑に負けるように、ラッキースケベチャンスをふんだんに用意して、着替えに出くわす、台風でシャツが透けて下着が見える。家に呼ばれて2人きりになる等で、仮に俺が陥落して宮城光や白城さんと肉体関係になったら即ゲームオーバー、巡を泡にしてしまうつもりだったらしく、それを知った女神が男神達をシメてくれて謝りに来てくれたらしい。


こわ、なにそれ。

下心なんてなくても状況とタイミングで迫られれば何があってもおかしくないぞと、思わず思ってしまう。

俺の初めて同士は巡だから平気だけど、何考えてんだよカミサマ。


俺は安堵のため息をついて「じゃあ、ルール変更なくてよかったよ巡」と言うと巡はニコニコと「あったよルール変更」と言った。


「え?」

「その女神様は、カミサマアプリじゃなくて、夢で指示をくれるんだけど、女神様の指示に従う事」


俺は心配して「…不利になったりしないの?」と聞くと、巡は首を振って「しないよ」と言う。


「すっごく優しい女神様で、まずはお母さんがカミサマアプリが見られるようになっていて、他言無用を守れないと私が泡になっちゃうけど、キチンと一緒に見てくれて私を助けるメンバーになったんだよ」

「…マジで?」

「うん。だから今日も出てこられたし、クリスマスのデートも出かけられたんだよ」


あー…、前の感覚で、普通に巡を呼ぶ癖とかついてたのか…。

普通だったらダメだったのか…。


「巡のお母さん、あの写真にドン引き?」

「うん。あの験を見て全部知ったお母さんは、私には頑張ったねって、験が無事でよかったねって言ってくれたよ」


俺はそのまま2人であの写真を見返して、「ありがとう巡」、「元気になってくれてありがとう験」と言い合いながら過ごして、夕飯がまだだった事を思い出してラーメン屋に入って2人でラーメンを食べる。



その時にひとつ気になった事を聞いた。


「巡、もうゲームは終わったんだよね?」

「んー…、わかんないの。今朝も夢枕に女神様が来てくれて、『チョコレートをねだられたら打ち明けていいわよ。もう秘密は終わり。彼氏の気持ちをもらいなさい。幸せになるのよ』って言ってくれたけど、終わる気配とかなさそうなんだよね」


「何?じゃあ泡になる可能性は残ってるの?」

「んー…、それは困ったなぁ。ずっと験と居たいんだけどなぁ」


おいおいおいおい、巡は嫌な順応してるぞ?


「必死になってくれ巡!」

「あはは。平気だよ。女神様は優しい人だもん」


だもんじゃない!

慌てているとテーブルに乗せた俺と巡のスマホは突然画面が光る。


なんだ?


画面を見ると巡の方にはカミサマアプリに通知マークがついて、俺の方にはカミサマアプリがインストールされていく。


おい待て。


「お、なんか指令がきた」と言った巡は数秒後、「わ」と言う。


「巡?」

「験の方、画面見てみてよ」


俺は言われるままアプリを起動すると、アプリには指令はなく、記録しかない。


「あれ?指令がない」

「うん。私の方に指令が来てたよ。読むね。『コレで赤城巡とのゲームは最後にしてやる。高城験は宮城光と白城蛍に断りを入れる時、記録を見せて全てを話せ。そうしたら赤城巡を泡にはしない』だって」


「何ィィッ!?」

「あはは。信じてもらえるかな?」

「そうだよなぁ。巡の事ばかり考えていて、断る事とか考えてなかったけど、宮城と白城さんを断らないといけないじゃん。明日早速白城さんだよ」


肩を落とす俺にシミジミと「モテ期は辛いねぇ」と言って笑う巡。

俺は「楽しそうに言うなっての…」と呆れながらラーメン屋を後にした。



俺たちは夜も遅いわけで素直に駅に向かう。


「験、今度はプール行こうね」

「遊園地も行こう」

「大学どうする?」

「巡と同じところに行けるように頑張る

「嬉しいよ験」

「俺の方が巡よりも嬉しいよ。俺が助かったのは巡のおかげだしさ」


そんな会話をしながら歩いて、一個だけ気になり「ねぇ、巡はヤキモチ妬かなかったの?宮城とか白城さんとか」と聞く。


実際、俺が逆の立場なら心配だったはずだ。

そう思うと巡には本当に嫌な思いをさせていたかもしれない。そう思って聞くと、巡は「全然」と笑い飛ばした。


「だって験は戻ってきてからずっと付き合ってる時の目で私を見てたもん。逆にルールがあるから告白からどうやって逃げようかとか、そっちの方に心配してたから宮城さん達には随分助けてもらったよぉ」


そんな事を言ってくれる。

その笑顔を見ていると照れてしまう。

照れ隠しのように「まあ、俺は巡一筋だからね」と言うと、「またそんなこと言ってるとカミサマから追加指令きちゃうから程々にしてよね」と返されて、「マジか」と呟いてしまった。

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