第6話 少女は傭兵になる1
シア達は街の中央へ続く石畳の一本道を、傭兵管理組合の建物へ向けて歩いていた。
シアは背中に布に巻いた刀を背負っている。鞘に納めているものの10歳程度の少女が自分の身長ほどの長さを誇る刀を持っているのは不自然なため、神殿に転がっている死体からローブを剥ぎ取り巻いている。
アリアとアルトの2人は最初に会った時よりもマシな格好になってはいるが、上下の衣服のバランスが悪い。これも死体から剥ぎ取ったものを着ているためだ。
衣服に付いていた返り血は、神殿の裏手にある川で洗ったら、不思議なことにきれいさっぱり落ちてしまった。
目立ちすぎるまではいかないものの、何とも不自然な3人組が街の大通りを歩いている。中にはすれ違いざまに振り向き凝視したり、遠目から不思議そうに眺めていたりする住人もいる。
しかし、シアはそんなことに構いもせずに心躍っていた。人間の国の街がここまで大きく賑やかなことに感動していたのだ。
「ねぇ、さっきの人は私たちから何を聞きたかったの?」
シアは、先程の街の入口での騎士とのやり取りの意味を半分程度しか理解出来ていなかった。
言葉の意味はある程度想像できた。国籍は自分の生まれ育った国のことだろう。人間の国は幾つかあると聞いたことがある。目的はここへ来た目的を単に聞いていたんだろう。
しかし、それらを答えられなかった際に追い出される理由が分からなかった。
「中にはこの街で悪いことをしようとする輩もいるからね。あそこで不自然な反応を見せたり、怪しい物を持っていればこの街の中には入れなければ未然に防ぐことができるでしょ?。」
「検問って言ってね、どの街や国でもやっているわ。魔獣で言うところの縄張りに敵を入れないための事前チェックね。」
なるほど。そういう事か。確かに私も明らかに攻撃意思がある魔獣に対しては話しかけはするがすぐに追い払っていた。
改めて街の様子を見てみる。
男も女も基本的に麻や羊毛でできた地味な色の衣服を着用している。暗めな服が多く、男はチュニックと呼ばれるものが多く、マントやコートを併せて着ている者もいる。
女は上半身と下半身を覆うシンプルなワンピースのような物を着ている人が多く、これが一般的なこの街の服装なのだろうと思う。
しかし、我々3人の格好はどうだろう。姉弟2人はほとんど同じ格好。ズボンは黒く上着は白い。そして羽織っているマントも白い。シアも負けじと白いワンピースだ。
少しだけ周りと違う気がする。
「シア、大丈夫だよ。確かに組み合わせも服装も少し浮いているけど、僕たちは村から急いで逃げてきたんだ。しょうがないよ。」
アルトが私の考えていたことに気付いたのか、私を安心させるために平然と嘘をつきながら笑顔を見せる。門のところでの騎士とのやり取りでもそうだが、アルトは嘘をつくのが得意なようだ。
「私、ボロでそうで心配だわ…。」
アルトが話してる横でアリアが少し肩を落としている。
「大丈夫だよ。姉さんはさっきみたいにシアの後ろで立ってるだけでいいから。」
「それって私に黙ってろってことよね?」
確かにアリアは黙ってた方が良いかもしれない。
3人は気付けば傭兵管理組合の建物の前まで来ていた。
見た目はレンガ造りの3階建だった。正面からしか見ていないが長方形をしている。入口は立派な木製の扉が設けけられており、その上には”傭兵管理組合本部”と掲げられていた。
「本部だけあって立派ねえ。」
アリアが建物を見上げながら呟く。
確かにシアが過ごした神殿よりも大きそうだ。少し悔しい。
「じゃあここで眺めていても仕方ないから、早速中に入ろうか。」
アルトはそう言うと、入口の扉へ歩いて行った。シアとアリアもその後ろに続く。
中へ入ると、外で見た印象より広々とした空間が広がっていた。
入口から入ってすぐには、横長のベンチや丸テーブルが置かれていたり待ち合いスペースの様な空間が広がっていた。そしてその奥、入口の真向かいにはカウンター式の受付がいくつも並んでおり、各カウンターに受付担当であろう女性スタッフがおそろいの衣装を着て座っていた。
受付カウンターの上には看板が天井よりぶら下がっており、【登録申請】や【成果報告】、【依頼紹介】など各分野に別れているようだった。
受付カウンターの両脇には2階へ続く階段が伸びている。
すでに傭兵であろう者たちが各カウンターに並んでいたり、待合スペースで談笑していたり思い思いの時間を過ごしている。
「随分と広いわねえ。」
アリアが建物を前にした時に呟いていたことと同じようなことを言っている。
「そうだね。僕たちはまずは登録申請の受付かな?ボルドーさんが言っていたティアさんがいれば話は早いんだけどね。」
行こうか。そう言ってアルトはまっすぐ受付に行こうとする。すっかり私のポジションが取られてしまった。まあ私は正直何をしたらいいかわからないからありがたいんだけど。
受付から真っすぐに登録申請のカウンターへ向かっていると、私たちに気付いた先輩傭兵さんたちがこちらを見ながらひそひそ話を始めたり、訝しんでいるような目でこちらを見ていたりとなかなかに注目を集めているようjだ。そんなに変?
確かにこれから傭兵の申請をしに行く3人は若い。周囲にいる傭兵たちは男女合わせて一番若くて20代後半から30代前半くらいだろう。そして皆逞しい。鎧をつけている者もいるが、身軽な胸プレートや籠手のみといった装備を身に着けている者もいる。その両方に共通しているのは皆体格が良い。中には己の筋肉を見せつけ合っている者もいるほどだ。
対する私たち3人はどうだろう。姉弟2人は布で片目を隠しており、この街では異質な真っ白いマントを羽織っている。そしてシアはというとまず見た目が10歳程度で小柄な少女だ。それだけでも異質であるが白いワンピースだけを着ており、背中には布で巻かれた長物を背負っている。
長物の中身を知っているのは3人だけだが、中身を知らなくても背負っている少女を見ればあまりにも不釣り合いだ。
シアが周囲の先輩傭兵さんたちを観察しているうちにカウンターに付いたみたいだ。
私たちを見た登録申請担当の女性スタッフは困惑気味な表情を浮かべている。そりゃこの3人の見た目は子供だ。
アルトはお構いなしに要件を伝える。
「すいません。ここにティアさんって方がいるって聞いたんですが、ボルドーって人から伝言を預かっているので呼んでもらえませんか?」
そう伝えると、受付担当の女性は引き続き困惑気味な顔を浮かべながら、
「あっ、は、はい、少々お待ちください。お呼びしてまいります。」
そう言って、カウンターから離れて奥へと下がっていく。困惑しながらも呼びに行ってくれるみたいだ。
「さすがにここに入ると目立ちすぎるわね。」
アリアも受付の女性や周りの傭兵たちの視線が気になるようだ。
「そうだね。でも門前払いをされてるわけでもないし、変に絡まれてるわけでもないからマシかな。」
アルトもそれに続くき、周囲に気を配っているようだ。
シアは改めて周囲にいる傭兵たちを観察する。
皆背中や腰に自身の武器を装備している。シンプルな長剣や短剣、遠距離系の弓矢や打撃用のハンマーなど様々だ。因みに武器や防具のことは道すがらアリアに教わった。私が襲われたのは弓矢という遠距離用の武器らしい。
各個人で自分の体格や戦闘スタイルに合わせた武器と防具を選ぶことが重要だとか。アリアとアルトは現在武器になるかわからない短剣を身に着けているが、実際は2人とも弓矢しかまともに使ったことがないらしい。
逃走中だったころ(厳密にいえば現在も逃走中だが)はまともに正面から戦ったことがないため必要がなかったらしい。
正直シアの見立てではアリアは近距離の方が向いているように見える。理由は特にないがそうだと思う。ゼロ距離で魔獣と殴り合ってるアリアを想像する。うん、似合いすぎている。
逆にアルトはそのまま弓矢の方がイメージにしっくりくる。おそらくこれまでのアルトの言動や性格から連想しやすいのが弓矢だった。
よし、2人にはこの2つを装備させようと心に決める。
そんなことを考えていたら受付の奥から、呼びに行った人とは別の女性が小走りで走ってきた。
「お待たせしました!私がティアです!ボルドーから伝言をもらったと聞きましたがどういった内容でしょうか?」
彼女が例のティアらしい。
見た目は30歳前半程度だろう。たれ目で赤茶色の髪をボブカットにしており、声色はやわらかく、仕事ができるというよりも仲間から好かれそうな人という印象だ。
先ほどの女性とは違い、シアたち3人を見ても顔色一つ変えないのを見るとただの伝言のお使いを頼まれた子供だと思われているようだ。子供と言ってもアリアとアルトはそれなりに大きいと思うがあくまでシア視点である。
「ボルドーさんから、ティアさんにこれを渡して事情を話せば、僕たち3人を傭兵として登録してくれると聞きました。」
そう言ってアルトは、門でボルドーから貰った仮入場証を早速渡す。すると女性は少し驚きながらも呆れながら口を開く。
「ったく、あのバカは。これがどうゆうことを言っているのかわかってるのかしら。」
そう言いながらティアは3人を別室通すので、そこで詳しい事情を聞くと言ってくれた。
3人が通された部屋は、2階にある簡素な応接間のようだった。
部屋の中心部分には低いテーブルと3人掛けのソファが2つ、テーブルを挟むように置かれている。壁際には最低限の接客ができるようにティーセットや食器棚が置かれている。
部屋の入り口には窓が付いており、日当たりは良い。
「さてと、まずはお茶を出すからそこに座って待ってて。」
3人全員が部屋に入るのを確認するとティアがソファに腰掛けるように促しながらお茶を淹れ始める。
シアは3人掛けソファの真ん中に座りながら部屋を見渡す。特に監視されているわけではないようだ。
2人がシアを挟むように座る。刀は背中に背負ったままだと座れなかったので、胸に抱えるように抱きながら座っている。
「じゃあ、さっそく話を聞かせて頂戴。」
ティアは3人にお茶を配り終えると、自身も向かいのソファに腰掛ける。
カウンターで会った時との印象とは違って、疲れた表情をしている。
「まずはこのような機会を下さりありがとうございます。僕はアルトと言います。」
アルトが予定通り話を勧めてくれるようだ。アリアとシアにも名乗るように目配せしてくる。
「アリアよ。アルトの双子の姉。」
「シアよ。」
アリアは若干不愛想な態度を取るが、ティアは気にした様子もない。私は一応愛想よく可愛らしい笑顔を向けておく。効果はあるかわからない。
「自己紹介が終わったところでまずは教会側から確認したいことがあるわ。」
ティアは疲れた表情のまま続ける。
「傭兵に仕事を頼みたいならお金がかかるわよ。それなりにね。加えて教会側が仲介すると依頼料とは別に仲介手数料が発生するわ。あなた達は今いくら払えるの?」
ん?何を言っているんだ?この人は私たちが依頼しに来たと思っているのかしら?
そこでシアたちは気付く。3人の年齢層や決して綺麗とは言えない格好、おそらくこの人の目には、村が魔獣に襲われたので必死に逃げて以来を出しに来た子供たちにしか見えていないだろう。
「いえ、僕たちは依頼を出しに来たわけではないんです。」
アルトは会話の流れをこちらに持ってこようと軌道修正する。
そのまま質問に馬鹿正直に「無一文です」と答えていたら話も聞かずに帰らされていただろう。
アルトの言葉にティアは一瞬驚いたような表情を浮かべた後、飲んでいたお茶の入ったティーカップをテーブルに置き座り直す。表情は怪訝な表情に戻っている。
「じゃあ何しに来たの?」
「事前にお伝えしていた通り、門兵のボルドーさんにここにいるあなたなら僕たちを助けてくれると言われたんです。」
訝しんでいるティアに対して、ニコニコ笑顔で淡々としゃべるアルト。
やっぱりアルトはこういった交渉事は得意なのだろう。一体どこで学んだんだろう。
「ボルドーがあなた達に何を言ったのかわからないけど、一組合職員にできることなんてたかが知れてるわよ。」
ティアは呆れながら言うものの、アルトは笑顔を絶やさない。
「その組合職員にしかできないことなんです。」
ティアの眉毛がピクリと動く。
「一体何してほしいの?さっきも言ったけど、依頼を出すならそれなりにお金はかかるし、私も一銭も出せないわよ。」
再び釘を刺されるが、3人の目的はそんな簡単なことではない。
「実は…。」
アルトは街の入口でボルドーに話した内容と同じ内容をティアに伝える。ボルドーに対して話していた時よりも演技に拍車がかかっているようにも見える。楽しんでない?
私も負けじと2人に申し訳なさそうな顔をして同情を誘うように援護をする。
アリアは相変わらずそっぽを向いて話に参加しようとはしない。
ティアは話を聞きながら顎に指をあてながら色々と考えているようだ。
「ボルドーさんには、行く当てがないのならこの街で傭兵になれば身分証も発行できて一石二鳥だと提案を下さったんです。あなたに頼めば僕たちを傭兵として登録してくれると。」
アルトの説明を聞き終えたティアは「はぁ…」とため息を吐きながら、お茶を一口飲み3人の方へ向き直る。
「あなた達の事情は分かったわ。」
そう言うとティアは改めて座り直し、姿勢を整える。
「申し訳ないけど協力は難しいわ。何せあなた達はまだ成人もしていない。若すぎるわ。」
ティアは若干申し訳なさそうな表情をしながら告げる。
断られてしまった。アルトを横目でチラリとみると未だに表情を崩していない。
「傭兵には年齢制限は設けられていないはずです。それに僕たちはこれでも山や森の中を駆け抜けてきました。元居た村でも狩で生活をしていました。それでもだめでしょうか?」
アルトが伝えるも、ティアは依然意見を変えないようだ。
「それでもよ。傭兵に登録したら、対応をした担当者の名前も一緒に記録されるの。仮にあなた達をここで登録したとして、間違って魔獣にでも殺されたら私は未来ある子供たちを死地に追いやった担当者として、少なからずの責任を負わされるわ。」
ティアは傭兵協会の内部事情を話す。
「いくらあなた達が狩が得意だからと言っても、それは一般的に食用として認知されている魔獣がほとんどだと思うわ。」
ここで初めてアルトの表情が変わる。焦っている表情ではない。むしろなにか思いついたかのような、何か暗いものを感じさせる微笑みだった。
「では提案として聞いてください。これから認めてもらうために魔獣を何匹か狩ってきます。その成果に応じて認めてもらえますか?」
なるほど。向こうが納得する成果をこちらが提出すれば認めてくれるだろうという考えか。
それを聞いたティアは虚を突かれたのか一瞬目を丸くする。
先ほどからこの人はあまり感情や考えを表情には出さない人なのだろう。見た目とは違い強い人なのだろう。
「確かに成果によっては認めることもできると思うけど。しかしそんな甘いとは思わないことね。」
ティアはソファから立ち上がると、「少し待ってて貰える?」と言い部屋を出ていく。何か取りに行ったのだろうか。
部屋に取り残された3人。アリアがようやく口を開く。
「私たちを値踏みするような目。虫唾が走るわね。」
アリアはここに来るまでに感じていたであろう、傭兵たちからの視線にうんざりしていたようだ。今にも噛み殺しに行きそうな眼をしている。やはり彼女は近接タイプだ。
「姉さん、もう少し我慢してくれ。認めてもらえさえすれば何も問題ないよ。」
アルトがアリアを窘める。
シアはそんなやり取りを見ながら微笑む。2人と過ごしていれば退屈はしなさそうだ。
しばらくすると、ティアが何かの資料を持って帰ってきた。
「待たせたわね。これが協会が買い取ることのできる魔獣のリストよ。」
ティアは紙に書かれた数枚のリストをテーブルの上に置く。
「買取ということは、魔獣の死骸を持ち帰れば良いのでしょうか?」
「違うわ。指定の討伐証明を持ち帰ってもらうわ。リストに各魔獣の持ち帰ってきてほしい部位も書いてあるわ。」
ティアはアルトの質問に、リストを指さしながら説明していく。
シアもリストを眺める。リストに載っている魔獣は全部で3匹。どれもシアは見たことがない魔獣だった。
リストを眺めながらアルトが再び質問する。
「魔獣たちの部位を買い取るのって何か理由があるんですか?」
それを聞くとティアは先ほどと同様に目を丸くする。そんなことも知らんのかと言いたげだ。
「魔獣たちは人間よりも高い魔力を保有しているの。私たち協会のリストに載っている魔獣たちは特に魔力が多いのよ。」
ここで初めて聞くワードが飛び出してきた。魔力?何それ。
説明を聞きながら左右の2人を見る。私とは違い驚いた様子はない。知らないのは私だけか。
「魔獣たちは体の一部の部位が魔力の保管庫のようになっているの。その部位を使って魔道具を作ったりするのよ。質の良いものだと武器や防具にすることもあるわ。」
ほう。ということは死体をを持ち帰ってくれば解体から始めなければならないのか。協会としては現地で出来るだけ仕事を減らしてくれた方がありがたいのだろう。
「なるほど。ではこのリストに載っている魔獣たちの指定部位を持ち帰れれば私たちは傭兵になることができる。そういう解釈でよろしいでしょうか?」
アルトがティアに顔を移して確認を取る。ティアも合わせて視線を向ける。
「そういう事です。ただし条件があります。」
「条件?」
ティアは再び姿勢を正し、3人へと向き直る。
「このリストに載っている魔獣を全て討伐してきてください。持ち帰った部位も状態次第では認められません。」
目元に力を入れながらティアが告げてくる。
引き返すなら今の内だと言わんばかりの表情だ。
「この魔獣たちの情報はくれないのかしら?」
ここにきて初めて口を開いたアリアが不満気味に聞く。
「魔獣の生息地域は提供します。しかし、現地で情報を集めるのも傭兵として必要な能力です。」
サラっと言い放つティアにアリアは更に不満そうにする。
「今ここで情報をくれた方が効率良いと思わない?それに私たちが死ぬ可能性が下がるでしょ?」
アリアも負けじと言い返す。
「これは協会からの傭兵承認試験と思ってください。あくまで自己責任の参加なので無理だと思うならあきらめてください。」
ティアは不満そうなアリアに対して平然と返答する。
「姉さん落ち着いて。わかりました。その試験、受けさせてもらいます。」
アルトはアリアを窘めながら受験する意思を伝える。
ティアは溜息をつきながら再び確認を取る。
「ほんとに傭兵になりたいのね?あのバカに何を言われたのか知らないけど狩なんかより危険な仕事よ?」
「構いません。それに僕たちに残された道はこれしかないと思います。」
ティアはここで初めて私たちに同情の表情を見せる。そして私を見つめる。
「わかったわ。あなた達に仮認可証を配ります。それを持っていればこの街への入退場は自由です。しかしその認可証の期限は1週間。それまでにリストの物を持ち帰ってください。」
観念したのか、ティアは仕方ないといった具合に今回の試験の説明を始める。
幸いなことにリストに載っている魔獣たちの生息域は被っている事だろう。移動の手間が省けてラッキーだ。問題点と言えば3人とも見たことない魔獣だということだ。
3人は説明を聞き終えると、さっそく出発と言わんばかりに応接室を出ようとする。それをティアが呼び止める。
「念のため言っておくわ。これは決してあなた達を殺すための試験じゃないわ。無理だと思ったり、不測の事態になったらすぐに帰ってきなさい。」
こちらを見つめるティアの表情は厳しい半面、何かやさしさが滲み出るようだった。
「わかってます。僕たちが死んでもティアさんのせいではありません。これは僕たちが選んだ道です。」
そう言うとシアたち3人は、アルトを先頭に応接室を退出していく。
シアはワクワクしていた。2人の狩の腕も見れるし、魔獣と戦うこと自体初めてのシアは楽しみで仕方なかった。
『あぁ、また血を浴びれるわ。』
私の中の私は今にも表に出て着そうな勢いだった。
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