第4話 お礼に耳掃除してあげますね

 六月初旬のある日の夜。


 トゥルルトゥルルトゥルル(スマートフォンの着信音)

 カツッ(スマートフォンの画面をタップする音)


 あっもしもし、こんばんは。あなたの江戸沢麻美子です。優一君、今どこにいるの?

 もしね、お家にいたらお願いがあるんだけどいいかな。

 うん、お家にいるのね。

 じゃあ私の部屋に来てほしいんだけど……

 えっどうしたの急に咳き込んじゃって。あのね、私お願いがあるんだけど、こっちに来てくれるかな。

 はー良かった。来てくれるのね。ありがとう。じゃあ待ってるわ。



 数分後。

 ピンポーンピンポーン(チャイムの音が部屋に響く)

 ガチャリ(玄関扉が開く)

 あっこんばんは、優一君。わざわざ来てくれてありがとう。

 さあさあ入って入って、遠慮なんかいらないわよ。私も優一君の部屋に何度も行ってるんだから、君も遠慮なんかしなくていいわ。

 はい、ここが私の部屋よ。

 漫画描いてるからね、資料の本とかいっぱいあるでしょう。

 女の子っぽくなくてごめんなさいね。

 そんなことないって。優一君いつの間にそんなにお世辞が上手くなったのかな。でも嬉しいわ。


 なんか部屋が暗いでしょう。

 そうなのよ。蛍光灯がきれかけているのよね。新しいの買ってきたんだけど私、背が足らなくて。

 それでね、優一君にお願いってのは蛍光灯をつけかけてほしいの。

 もし、やってくれたらお礼に何でもして上げるわね。

 どうしたの、顔真っ赤だよ。

 あー優一君ったらエッチなお願い考えてたでしょう。いやらしいのね。

 うふっ冗談よ。

 それはもっと仲良くなったら考えてあげるわ。麻美子も大人だからね。


 数分後。

 ガチャガチャガチャ(蛍光灯を付け替える音)

パチッパチッ(新しい蛍光灯が光る音)


 はーやっぱり男の子ね、頼りになるわ。すぐに取り替えてくれて本当に助かるわ。ほらっ私って背が低いでしょう。コンビニでお酒買ったらいっつも年齢確認されるのよね。それで、免許証見せたら店員さんにびっくりされるのよね。困っちゃうわ。


 じゃあ部屋も明るくなったし、お礼に優一君の耳掃除をしてあげるわね。ずっと気になってたのよね。

 カサカサ(ラグの上に座る音)

 ほら、私の膝に頭を乗せて。そうそう、まずは私に右の耳の見せてくれるかな。

 あーやっぱりけっこう汚れてるわね。

 うふっこれは掃除のしがいがあるわ。

 じゃあ綿棒を。

 ゴソゴソ(綿棒をケースから取り出す)

 ジョボジョボジョボ(綿棒の先に消毒液をつける)

 こうするとね、適度にしめってとりやすくなるのよね。

 それではまずは外側から失礼します。

 ゴソリゴソリゴソリ……。

 ガサゴソガサゴソガサゴソ………。 

 わあ、すごいとれたわ。

 ほら見てみる。外側だけでもこんなに。

 じゃあお耳の穴も掃除してあげますね。

 動かないでね。

 そうそう、手を私の膝に当てていていいわよ。

 それじゃあ、お耳の穴を掃除しますね。

 ガサゴソガサゴソガサゴソ……。

 ヌルリヌルリヌルリ……。

 ひゃあこれは私史上最大のものがとれたわ。

 どう、私の耳掃除気持ちいい?

 そう気持ちいいのね。優一君が気持ちよくなってくれると私も嬉しいわ。

 それじゃあ左の耳も掃除してあげますね。

 ほら、お顔を私のお腹の方に向けてくれるかな。

 恥ずかしがらなくてもいいのよ。

 その方が耳掃除しやすいんだから。


 そうそう、偉い偉い。

 お顔を私のお腹に向けてね。

 うーんちょっと見づらいかな。

 もっとお腹の方に顔を寄せてくれないかな。

そうそう、優一君のお鼻が私のお腹にくっつくくらい。えーいい匂いがするって。本当に君はお世辞が上手ね。 

 それじゃあ、左の耳も掃除してあげますね。

 綿棒を交換してっと。

 ゴソゴソ(綿棒をケースから取り出す音)

 ジョボジョボ(綿棒の先を消毒液で濡らす)

 さてさて、ではこちらも失礼します。

 ガサッガサッガサッ……

 ニュルリニュルリニュルリ……。

 まあこっちも凄いわね。外側だけでもこんなに。

 麻美子楽しくなってきたわ。

 それじゃあ、お耳の穴も掃除しますね。

 ゴソゴソゴソゴソゴソゴソ……。

 ヌルリヌルリヌルリ………。

 ズポッズポッ……。

 わっこんなに。まさかさっきのよりも大きいのが取れたわ。

 あらっまだかなり奥の方にあるわね。

 うふっ麻美子燃えてきたわ。こんなにやりがいのあるお耳は初めてよ。

 優一君、動いたらあぶないわよ。もっとお顔を私のお腹にくっつけてね。そうそうぴったりとつけてね。

 それではまたまた失礼します。

 ゴニュゴニュゴニュ……。

 ズポッズポッズポッ……。

 はー麻美子感激したわ。こんなに凄いのがとれるとは思ってもなかったわ。

 さてさて、仕上げにお耳をマッサージしてあげるわね。

 

 モミモミモミ……。

 モミモミモミ……。

 モミモミモミ……。


 スースースー(静かな寝息)

 あらあら優一君、気持ち良すぎて寝ちゃったのね。いいわよ、このまま麻美子の膝枕でおやすみなさい。


 はー優一君の寝顔かわいい。

 食べちゃいたいわ。このままずっと私の部屋にいていいのよ。

 もっと優一君との距離を縮めたいわね。

 あっそうだ。たしか来月臨海公園で花火大会があったわ。漫画の取材でって誘ってみようかな。

 はーそれにしても可愛い寝顔ね。

 スースースー(寝息)

 これは完全に寝入っているわね。

 たしか据え膳食わずはっとかって言うしね。

 それではいただきます。

 チュッ♡♡

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