花火

ヤマシタ アキヒロ

第1話

  花火



火の玉が

夏の夜空に

蛇のように

昇っていく


一瞬の

静寂のあと

覚醒した

夢の虹彩


音もなく

光の束が

八方に

触手をのばす


照らされた

君の顔

その目にも

小さな花火


いとおしく

思う間もなく

爆音に

肩をすくめる


八月の

熱帯夜

幾千の

光の陰で


さりげなく

君の手に

触れていた

遠い夏の日


       (了)

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花火 ヤマシタ アキヒロ @09063499480

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