第8話 ストーカーじゃないです!

 「新見風香!?」


 俺、南波あきの声が図書室中に響き渡る。


 「先輩、図書室ではお静かに?」


 新見、いや風香はしーっとくちの前で人差し指を立てる。


 「えーっと、風香でいいよな?風香、え、風香?」


 中学の時とはあまりにも違う、すこし言葉が悪いが陰キャな過去は全く感じない。すげー美少女。


 「新見風香ですよ、南波先輩」

 「い、いやぁおまえ、なんか変わりすぎというか・・・」

 「えー?そんな変わりました~?」


 くっそかわいいな、この小悪魔め。


 「うっそですよー。さすがに変わってるの自分でわかりますよ?」

 「お、おう。でもその見た目なら1年生の間で話題になるんじゃないのか?」


 というか2年生の俺らにも噂ぐらいは来るはずだ。

 超絶美少女の新入生がいるって。

 でもそんな話は聞いたことがない。


 「あーいつもは中学のときと同じスタイルにしてるんですよ。紙とこの伊達メガネで顔を隠して」

 「それ伊達メガネだったの?知らなかったんだが」

 「言ってないですもん。昔と変わらず接してくれるんですね?」

 「当たり前だ。風香は俺の後輩だ。」

 「ふふっ。変わってないですね?」

 「まあな」


 再開を喜んだところで風香がふぅと大きく深呼吸をして神妙な顔になる。


 「先輩、1つお聞きしていいですか?」

 「あぁ答えられることなら」


 十中八九あれだろうが……


 「先輩、どうしていなくなったんですか」

 

 俺は目線を下げる。

 正直答えてもいい。

 でも、少し怖い。

 風香の前から姿を消したのが自分勝ってな理由だから。

 風香はなにも関係がない。本当に自分のエゴでしかなかった。

 ただ、あの時はそれしか選べなかった。


 「ごめん」


 俺は短く答えた。


 「教えてださらないですか?」

 「ごめん」

 「そうですか……。私探しましたよ?2学期になっても先輩どこにもいないんですもん」

 「ごめん」

 「謝らないでください。何かしら事情があったのは理解してます。私は、先輩の後輩なんで」

 「ありがとう」

 「ただ、寂しかったです」

 「ごめん」

 「そこはごめんじゃないですよ?」

 「え?」

 「もうどこにもいかないって言うんですよ?」

 「俺彼氏じゃないし」

 「せんぱい??」


 風香は口を膨らませてぷくーと怒る。


 「ごめん。もうどこにも行かない」

 「上出来です。よく言えましたね」


 そういうと風香は数歩前にでて背伸びをして、


 「よしよし」


 俺の頭をなでた。


 「おい、頭なでんな?」

 「じっとしていてください」

 「いや、俺先輩なんだが」

 「後輩の特権です」

 「意味わからん……」


 後輩の特権とやらで5分ほどよしよしされた後満足したのか風香は図書室の席に移動した。

 席に座った風香はすこしまじめな顔をして、

 

 「先輩」

 「ん?」

 「先輩って頭いいですよね?」

 「人並だ」

 「この学校の一番上のクラスで人並はもはや嫌味ですよ」

 「よくしってんな、俺のクラス」

 「まぁ。あのおばちゃんが言ってました」


 風香が図書室の入り口にいるおばちゃんを指さす。

 俺のプライバシー守ってくれよ……


 「で、なんだ?」

 「私に勉強教えてくれてもいいですよ?」

 「あん?」

 「あれ、聞こえませんでした?私に勉強教えてくれてもいいですよ?」

 「聞こえたうえで聞き返したんだよ。まず上から目線やめろ」

 「えぇー?こんな美少女に教えるなんてご褒美でしょ?」

 「はいはいかってにいってろ。勉強わからないのか?お前別に勉強苦手じゃないだろ」

 「はい。苦手ではないんですけど得意ってわけでも……」

 「ふーん。いいけど俺、古典とかできねーよ。現代文も模試の点数はいいけど感覚派だから教えるのは無理」

 「しってるんで大丈夫ですよ。理系科目、数学化学物理いけますよね?」

 「なんで知っているんだよ……。あぁそこらへんはできるほうだ」

 「謙遜しなくてもいいですよ?かなり得意ですよね?」

 「なんでしってんの?」

 「調べましたから♡」

 「こっわ、いやこっわ。ストーカーじゃん」

 「ストーカーじゃないです!」

 「いや、普通に犯罪だからね!?」


 そんなこんなで俺と風香は週1、この図書室で勉強を教えることになった。

 まあ、暇つぶしにもなるしいっか。


 


 

 



 



 

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