第6話 二人の先輩

 「新入生入ってくるかな?」

 「テニス部は入ってくるだろ。人気じゃん」

 「どんな子くるかなー?バスケ部のたくさん人来るといいね」

 「だね」


 俺、三木良太は短く返事した。

 別にどうでもいい。

 俺が部活を続けてるのは自分のためではないし。


 「ねえ、良太?大丈夫?」


 横を歩く唯が俺を見上げる。

 上目遣い、多分無意識だけどかわいいな。


 「うん。ありがと。もうすこし頑張るよ」

 「ぜっっったい無理しないでね?私もあきもみんなも心配してるから……。えっとそのうまく言えないけど、頼ってほしいな……」

 

 もじもじとしている唯は小動物みたいになる。まあ、いつも小動物みたいなんだけど。


 「うん。大丈夫。唯は部活どう?」

 「私は大丈夫!楽しい~」

 「そっか、よかった」

 「じゃあ、良太部活頑張ってね!また、明日」

 「うん、唯もがんばれ」


 唯は自分の部室に入り俺も自分の部室まで行って歩いていくと何やら騒がしい。

 部室からだいぶ声が漏れているのがわかる。

 

 ガラガラ


 俺は部室のドアをあけて騒いでいる部員にきく、


 「お疲れ。そんな騒いでどうしたの?」

 「おお、三木お疲れ~。聞いたか、1年生の女子でマネージャー志望の子がいるらしいぞ」

 

 なんだそんなことか。

 べつに今も女子のマネージャーは居るしそんなに騒ぐこともないだろうに。


 「おいおい、なんだそんなことかみたいな顔をするなよ三木」

 「いや、だって今もいるじゃん女子マネは。別にそんなにさわぐことか?」

 「おいおい、1年生の女子マネだぞ?後輩だぞ?しかもな、聞いて驚け。めっちゃかわいいらしいぞ」


 ほんとに男子高校生はサルしかいないのか。

 かわいい女子マネはうれしいけどべつに俺はバスケをするだけだし。


 「まあ、よかったな。とりあえず着替えて部活行くぞ」

 「他人ごとみたいに言うなよぉ。わかったよへいへい」


 サルどもを置いて先に着替えた俺はひと足先に体育館へ入る。


 「おつかれさまでーす」


 俺は先に来ていた3年の先輩方に軽く挨拶をしてだれもいないところでシューズを履く。

 最近かったばかりだからかすこし履くのにてこずっていると同級生のサルどももきた。


 「よーし全員揃ったな。集合」


 監督が集合をかけるとすぐに監督の前に部員が集合する。


 「今日は部活体験が数名とマネージャー希望が一人いる。二年生が中心となって教えるように。では、体験の子たち自己紹介よろしく」


 監督から案内があり1年生たちが自己紹介をはじめていく。

 まあ、高校から未経験でバスケしようって人はほとんどいないのでスムーズに自己紹介が流れる。


 「以上が体験の子だ。次にマネージャー志望の子お願いね」


 そう監督が言うと、女の子が一歩前に出る。


 「はじめまして、1年生でマネージャー希望の西野朱里です。よろしくおねがいします、先輩」


 にしの……にしの……

 どこかで聞いたことある名前だと思い俺は脳内検索エンジンにかける。

 は!?

 まさか、え……?

 二年前部活で行った中学でたまたま出会ったあの女の子!?

 俺は驚いて西野朱里と名乗った女の子をもう一度見る。

 たしかに面影はあるようなないような……。

 と、そんななこと思っているとその女の子は一歩前にでて思春期男子なら一発で落ちそうな顔で言った。


 「よろしくおねがいします。せんぱい」


 あ、おれこいつ嫌いかも


 

 ――――――――――――


 「じゃあ、私もそろそろいくわね。また明日」

 「僕も今日は用事あるから帰らなきゃなんだ。ばいばいあきくん」

 「そっか。部活がんばれ、紗耶香。気をつけてな、太一」


 俺、南波あきはバイバイと手を振りながらいつめんたちが教室を出ていくのを見送る。


 「どうしよっかなぁ」


 正直帰宅してもよかったけど今日はなぜか学校に居たい気分だった。

 でもべつにしたいこともない。

 勉強しよっかなぁでもあんまり教室ではしたくないんだよなぁ。

 んーとりあえず図書室いくかぁ。

 試験期間でもない限りと図書室ほぼだれもいないし集中できるかも。

 荷物をもって教室でて、渡り廊下に出る。

 

 「うっ」


 4月の夕日ってこんなにきつかったっけ。

 べつに暑いわけじゃないがただ、まぶしい。

 などと思いながら本館に入ると今度は、


 「くらっ」


 うちの学校の本館は日中は節電とか言って電気を切っている。

 暗くなったら通りかかった人がつけるのだが、今日はまだついていない。

 まあ、夕日がさしこんでるから薄暗いだけでみえるからいっか。

 まあ、帰りにはついてるだろうと思いつつ歩いていると図書室に着いた。


 ガラガラ


 俺は図書室のドアをあけ上履きを脱いで靴棚にいれる。

 ん?だれかいるらしい。1つだけ靴がある。

 まさか……

 俺はすこし急ぎ足で定位置に向かう。

 図書室の一番奥の棚と柱の間。

 

 「やっぱりいやがった」


 俺の予想は的中した。

 あの美少女がまた俺の定位置に座ってやがる。


 「あ、こんにちは。変態先輩」

 「変態じゃねーよ。ここ俺の定位置って前言ったよな?」

 「私の方が先に来たので私のここはものですよ?」


 ちっ

 それ言われたらなにも言い返せない。

 ってかそういえばこいつの名前前聞き忘れたっけ。


 「なあ、君の名前なんて言うの?」


 俺がそういうと美少女後輩は元から大きい目をさらに一瞬見開いた後、はぁと大きくため息をついて、


 「ちょっと髪型とか変えてるとはいえそんなに気がつかないものですかね?」


 といいながらポニーテールをほどいて長い髪の毛で顔を隠す。

 そうしてポケットからすこし大きめの眼鏡をかけると、


 「これでもわかりませんか?先輩」


 まさか……こいつ……


 「新見風香!?」



 

 





 


 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る