第5話 部活の前とその前と
☆ 2018年 4月 (南波あき 高2)
「なーなんで俺らもこなきゃいけないの」
「まあ気持ちはわかるよ、あきくん」
俺、南波あきはいつめんの太一に愚痴をこぼしていた。
「いやだってさ、部活紹介って高1とあと部活紹介する人たちだけでなりたつやろ。俺ら帰宅部必要あります?」
「んーでも高2から入る人とかもいるんじゃない?」
「ああなるほど」
納得。
たしかに文化部なら全然ありえる。
でも!!めんどくさいし俺は入らないから帰らせてよ~
「ねえ、やっぱテニス部とかバスケ部って陽キャ多いよね。敵だ」
「たしかに多そうだよね。でも良太君はバスケ部だし唯ちゃんはテニス部だよ?二人とも優しいじゃん」
「違うのだよ太一君。確かに二人とも優しい。ただ、唯はスーパー陽キャだろ?良太は陽キャって感じじゃないけどクールでモテるし。イケメンだし背高いしもう実質陽キャだよ!おかしいだろ世界!天は二物を与えないだろか1物与えた後、追加注文してトッピングまでしちゃってるよ」
こぶしを握り締めて力説すると太一は苦笑いをしながら、
「まあ、否定はできないよね。でも二人とも僕は、良太君たちが仲良くしてくれるのうれしいな」
すこし照れながらうれしそうに、でもどこかさみしそうにいった。
テニス部やバスケ部など運動部の紹介が終わった後は文化部の紹介がある。
やはりなぜか運動部のほうがキラキラしているようにも見えるし、1年生の女子の歓声も聞こえなくなった。
なーんか悔しいなぁ。
俺、帰宅部だけど。文化部応援しようかな。
などと思いながら文化部の発表を聞きながらしていっていると、
「最後は吹奏楽部です」
司会の生徒会委員がそういうと扉から20人いや、もうすこし多い?ぐらいの生徒か楽器とともに入場してきた。
挨拶なしでセットされた椅子に座ると、指揮者がこんどは入場してきた。
聴衆の前まで指揮者がくると俺らの方に一礼し、指揮者台に上る。
「おいおいなんだよ……」
急な音圧が俺いや、俺たちを襲った。
去年はやっアニメのOPを演奏し始めたのだが、挨拶や曲紹介無しに始めやがった。
うちの吹奏楽部はなかなかガチって噂だが本当らしい。
目を瞑れば高校生かわからないクオリティだ。
と、感心しつつ俺は演奏者を見渡して、
「あ、いた」
というと、横の太一が、
「紗耶香さん?どこ?」
誰とかいってないのに紗耶香ってわかるんだな。まあ、わかるか。
「ほら、あそこ。クラリネット?のところ」
「あ、いた!」
「かっこいいですね、紗耶香さん」
「あ、あぁ」
演奏している姿はかっこいい、ただ俺にはなぜか辛そうに感じた。
――――――――――――
めんどくさ。
なんで俺らが後片付けしなきゃなんだよ。
自分たちが使った椅子ぐらい自分で片付けろよ。
心の中で愚痴をいいつつ、三木良太は両手に椅子を片付けていた。
高1や帰宅部の高2の生徒、あと吹奏楽部たちが使った椅子をなんで俺らバスケ部と野球部で片付けなんだよ。
ってかせめて教師たち自分の椅子ぐらい自分で片付けろ。大人だろ。
はぁ
もはや念仏と言って唱えられそうなぐらいの愚痴を抑えつつ椅子を片付けていると10分後にやっと終わった。
「野球部とバスケ部のみんなありがとー。教室帰っていいよー」
教師が満足そうな笑顔で俺たちにそういったので俺は一番に体育館を出た。
「お、おかえり良太」
俺が教室に入ったのにあきがすぐ気づいた。
こいつは本当にこういうことにすぐ気がつく。
「良太おかえり!」
「おかえり」
「おかえりなさい」
あきに続いて、唯、紗耶香、太一も俺に気づいておかえりと言ってくれる。
さっきの愚痴をすこし忘れて口角があがるのを抑えながら、
「ただいま」
というと、
「なんか嬉しそうだな」
とあきが気づく。
どんだけこいつは察しがいいのか。
「なんのことだか。ってかなんで君たちが使った椅子を僕らが片付けなければならないのか」
「あ、ありがとね。良太君」
すこし申し訳なさそうに太一が言う。
「まあ、いいよ。ってか紗耶香かっこよかったな」
俺は本心を伝えた。
本当にかっこよかった。
かっこよくてきれいで美しい。
制服を着ていなかったら同じ高校生と思えないほどに大人びて見えた。
「だよね!紗耶香かっこよかったよね!!」
「あつい!唯わかったから抱き着かないで」
すこし照れながら紗耶香は唯を引きはがそうとする。
「ほんとに紗耶香さんかっこよかったよ!」
「太一横で目キラキラさせてみてたよな」
「だってよかったじゃん!しかも僕の好きなアニメのOPだったし!」
「練習したかいがあったかな」
やっぱりすこし照れくさそうに紗耶香が笑うのをみて俺もなぜかうれしくなった。
「はい、終礼終わり。気をつけてかえれよー」
いつものダルそうな担任の終礼が終わり俺は荷物をもって唯のもとに行く。
「唯、いくよ」
「うん!ちょっと待ってね」
俺と唯は運動部で部室棟に行く必要があるのでほぼ毎日いっしょに部室棟まで行く。
「準備できたよ! あき、太一ばいばーい。紗耶香も部活頑張ってね」
「うん、ありがと。唯も良太もがんばってね」
耳に髪をかけながら手を振る紗耶香にすこし心臓をはやくさせながら、
「ありがと。じゃあね。紗耶香もがんばれ」
そういって俺は唯と教室をあとにした。
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