第8話『不運と踊っちまった』

 原笑が帰った後、俺は外に出た。

 あまり出たくはなかったが、原笑が持ってきた仕事の資料を買い足ししなければならなくなった。

 まぁ1巻だけでなら良かったのだが……受けるなら、完璧に読み込みたい。

 そう思い、今俺は近くの本屋に来ていた。

 言ってしまえば今回頼まれた本はお世辞にも人気が出ているとは言えない。

 色んな本を読み漁った俺にさえ知らなかった本だ。

 数分探しても見つからず、近くにいた店員に聞くことにした。


「あの、すみません「死にたい僕の前に現れた彼女は僕を買う」って本って」


 そう伝えると、店員の接客スマイルが徐々に剥がれ落ち、まるで死んだ魚の目をしたサラリーマンかってぐらいの表情になっていた。

 俺は早速だが……聞いた事を後悔している。


「あ〜……はいこちらですね〜」


 店員が歩き出すと俺はその後について行く。

 少し歩くと、ラノベが置いてある棚に案内される。

 案内した店員はすぐさまどこかへ行ってしまった。


 棚の端に1から6まで出ており、俺はそれを大人買いし、家路へと戻る。

 家に着いた俺は読書には書かせないコーヒーを注ぎ、読み進めることにした。

 内容は、自殺願望がある不死身に不幸体質の男の子屍禍羽しかばねるいがある時、美しい女性神室と出会い、主従関係になる。

 と言ったちょっと暗そうな感じだが、俺はこれを読み終わり1つ思った。


「これは舞台化するの……大丈夫なのか?」


 と、心の中で言おう思てた事がボロっと漏らしてしまう。

 特に舞台化するに当たって、イジメ……この作品ではイジメ描写がよくかけており、読んでて俺も一瞬されてると認識してしまった。

 まぁされた経験もあると思うが……。

 一応どこまでやるかと言うのは貰っている。

 最初の神室の出会いから最初の編主人公達と対峙する死神の選定者編までやるらしい。

 舞台時間は2時間、本は小説なら1から4巻。

 漫画なら単行本1から2ぐらい。

 これを舞台に落とすとなると、小話とかを削らなきゃならないし、それを落とすのに原作者との話が必要だが……俺は覆面でやってる為、原作者と会う事は難しいし、マネージャー……まぁ俺にとっては編集者なんだが……ムズいんだよなぁ……俺の言いたいことを要約して伝えてくれるか。

 まぁそこはいいとして、この作品内容は面白い設定もよく出来てる。

 だが……俺の小説を超えはしない。

 おっと……慎まんとな。


『ドー!どんな時もー!』


 ん?

 舞台化をどうするか頭を悩ましていると、どこからか聞き覚えのある声がし出す。

 時計を見てみると、21時を指しており、俺は思いたる節があった。

 今日は俺の好きなラジオ、ドミソラジオの放送時間だった。

 そうだった……放送始まったら流れるようにしてたんや。

 気分転換に聞くかぁ。


『ミー、みんなのためにー』


 ……ん?

 それは突然だった。

 ソラさんと違う声が……ラジオから聞こえてきた。

 俺は吸おう思ってたタバコを落としてしまった。

 まぁ普通だろ……っと思うだろ……だが、ソラさんはずっと1人でやってたんだ……。

 ここは驚くが……もっと驚くのは……男の声やった。

 そこからは何も聞こえんようになってしまい、呆然としていた。

 しばらく呆然としていたが、我に返ると懐から携帯を取りだしある人物に連絡する。

 3コールして、電話が繋がる。


『はいはーい!先生の一番星!原笑編集者です〜』

「あー……原笑」

『ん?……あらら先生どったの?真剣そうな声して〜』

「俺さ、新作書けるわ」

『え?嘘まじですか?!え?!タイトルは?!』

「……「好きな配信者に男が出来たのでその男を𓏸𓏸します」」

『……は?』


 それと同時に何かが落ちる音が聞こえる。

 あれ?と音が鳴ったであろう部屋の入口を見ると、袋いっぱいに物を入れた袋が床に落ち、その後ろに少女がいた。

 おっと……不運ハードラックダンスっちまったみてぇだ。

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小説書きのおつまみはラジオ 狂歌 @kyouka00

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