第5話未成年誘拐(誘拐じゃないからね?!)
「ここが……先生のお部屋」
俺の部屋に入った少女は、数分前までのあんな癒される笑みが消え去り、ショックを隠しきれないのだろう片手で口元を押え、驚いていた。
フフ、驚いただろう?そう何を隠そう俺の部屋は言ってしまえばナウシカの樹海なのである!
ひとたび足を踏み入れば……王蟲という名のゴミ達に足に巻き付き、転ぼせてくる。
まぁこれを大声で自慢など出来ないがな。
少女は俺の方に目線を向けると「何故こうなった?」と言わんばかりの目線を向けくる。
「……あー、俺掃除とか苦手というか……めんどくさいからさこうなってて」
俺はそう呟くと部屋をずっと見つめる。
え?少女の方は見ないのか?って?
そんなの見なくても分かるよ。
……ドン引きの顔がチラチラと視界の端で見え隠れしているのだから。
「あの……私掃除してもいいですか?」
「え?」
流石にお客様……いやお客様になるのか?
ま、まぁとりあえず、お客様に掃除させるのは……如何なものか。
まぁ楽になるはなるから良いんだけど……嫌ァしかし……
などと俺がウダウダ考えている隙に、少女は俺の部屋に入り、掃除を始めていた。
俺に気配を感じさせずに掃除に入っただと?……さては貴様ニュータイプか?!
などと心の中でツッコミを入れる。
俺もあとをおう形で、部屋の中に入る。
その時俺はふと思い出した。
この部屋には、見られてはならない物を1箇所にまとめた部屋があった。
俺は急いで靴を脱ぎ、音速も超える速さで自室に向かう。
「キャッ!」
その時の光景は、今でも思い出せる……。
扉が開く音と共に少女の悲鳴の声が聞こえ、俺は驚きを隠せず、顔に出ていた。
樹海と化していた我が家の部屋中に資料として買っていた……その……なんというか……女性物の……アレが散乱していたのだ。
嫌マジで趣味じゃないのよ……昔探偵の方で女性の服とか……そのアレとか知らなかったからさ?
俺はゆっくりと床に座り込み、呆然としている少女に目を向ける。
「……せ」
「せ?」
「先生は……ご変態だったんですか?」
今にも消えてしまいそうなか細い声が漏れる。
その今にも泣き出してしまいそうな表情を見た俺は急ぎ訂正をしようと動き出す。
「ち、違うよ?!これは資料!俺女性経験とかないからさ」
何とか訂正をしようとしたが、信じておらず、今にも泣き出しそうになっていた。
まずい!ここで泣かれてみろ近所から子供を部屋の中に入れて自分の変態力をアピールしてる男性がいると認識されてしまう!
それだけは阻止しなければならない!
どんな手を使おうと、黙らせれば良かろうなのだァ!!
「これ本当に資料なんだよ?!ほら、探偵の12話のヒロインが主人公の為慣れないオシャレをしてくる回でさ、詳しく書かれていたろう?」
「し、資料?……確かに……あの回から詳しくなってはいましたが」
「で、でしょぉ?」
俺は慣れない笑顔を作るが、ここんところ寝不足……というか、不眠症だろうか?
眠気が全く来なくなっており、目の下は酷いクマと化していた。
その笑顔を見た少女はやっと納まった涙が、また出ようとしていた。
俺は顔を近くにあった本で隠す。
「あ、そうだった……こんな状態で申し訳ないけど……なんで僕が……」
「狂歌先生と分かったか……ですか?」
俺の言いたい事を先読みだと?!ニュータイプを通り越して貴様……さては未来予知能力者か!
「そ、そう」
「それは……秘密で」
そう呟くと俺は見えないが、音から察するに少女は人差し指を口元まで持って行ったのだろう。
秘密主義とは……不思議系ヒロインの座を奪い取ろうとしているのか。
「そ、そっか……じゃ、質問を変えて……僕の家にいた理由は?」
「あ……しばらく新刊を書かれてなくて……その……先生が倒れたのかと心配になってしまい」
ほうほう……ん?
新刊が止まった+俺が倒れた=俺の家に来る。
……この子……一見清楚かと思わせてちょっと常識がない子?
いや、自分が言える立場では無いが……。
「先生!……あのズバリ新刊が出なくなったのは……なんでですか?」
「……それは……なんで赤の他人に言わなくちゃならねぇんだ?」
「赤の他人なんかじゃありません」
「あ?……赤の他人だろ……赤の他人が俺の調子なんざ分からねぇだろ」
さすがに俺の短すぎる堪忍袋の緒が切れてしまいきつく言ってしまった。。
嗚呼……見ず知らずの人にキチガイ認定されるのか……辛いなぁ。
そう思っていると、頭に変な感触がし出す。
それは産まれてこの方、感じた事のない感覚だった。
こう……髪の毛を撫でられているのだが、何故だろう撫でられる度に、何か安心感が登ってくる感覚があった。
俺は持っていた本をゆっくりと下ろす。
次の瞬間、俺の視界は真っ暗となり、それと同時に額に何か柔らかい感触がし出す。
「先生は……偉いですね……」
少女の声が聞こえる。
俺はどうなっているのか、鏡がある方に顔を向けると、そこには少女が俺の頭が胸部に当たり、抱きしめている光景だった。
「先生の小説は優しいです……どんなものも詳しく書く……とても出来る芸当じゃありません先生の小説は見ていて自分に勇気というか……こう……」
その言葉を聞いた時俺の目頭が熱くなっていくのを感じた。
そうだ……俺はこの言葉を……すごいとかさすがとか……ありふれた言葉じゃなく……こういうのが聞きたかったんだ。
その後俺は数分ぐらい涙を流したあと記憶が無くなっていた。
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