第4話路地裏の美少女
一通りの
俺は名古屋駅に向かう道中に大須商店街にて、今流行りの10円パンを買いに、電車に乗って向かっていた。
たかが10円パンの為にって思ってるそこのあなた、明日アビスに連れていかれるでしょ〜。
10円パンは……俺の疲れきった心を癒す癒しなんですよ。
しかも中にチーズが入っていたり、店舗に寄ってはカスタードとか入っているからいつも迷いまくってしまう。
と、10円パンの素晴らしさに浸っていると、向かい側に座っていた女子2人の会話が偶然聞こえてきた。
「ねぇねぇ、最新刊のある探見たァ〜?」
「……見てないかな」
「えぇ〜見なよ!あれ面白いんだ〜」
1人の女子はある探、ある探偵の虚構事件簿っと言う俺の小説の話をしていた。
もう1人の少女はその友達だろうか、ずっと話を聞いていた。
俺はその会話を聞かないようにしていたのだが、勝手に耳に入ってくる。
彼女の感想を聞く度俺の胸がいつもより苦しくなり、息が止まりそうになっていた。
例えるなら、息を止め続けているかのように。
やめろ……やめてくれ。
俺は心の中で叫び、実際の俺の体は自身の耳を塞いだ。
目を閉じ、自分に言い聞かせるように大丈夫大丈夫だと言いまくる。
そうしていると、アナウンスから目的地の場所の駅名が聞こえてきた。
俺は急いでドアまで行くと、扉が開き、出ていく。
そのまま改札を出てトイレへと駆け込み、吐いた。
「オロロロロ!!!」
我慢してきたものが全てトイレの中への消えていく。
吐いたことで息苦しさが止まり、心無しか気持ちが楽になった。
「……」
俺はトイレと睨めっこしている時、ふと自身に問いかける。
いつからだ?……人の期待に沿わないとって……。
いつから……人の期待に怖くなった。
最近の俺は、ダメだな……外に出るとこうなる。
俺のファンの感想を聞く事でさっきの状態になっちまう。
街中で聞くのは、凄いだの、展開が巻をまして凄くなるだの、面白いだの。
いいんだ……ファンは悪くない。
俺が悪いんだ……期待に応えようとする俺の……。
誰でもいい……俺を救ってくれよ。
自分の
これじゃ執筆間に合わなくなっちまうな。
そう思った俺はトイレから出ると、大須には寄らず徒歩数分の家に戻る事にした。
少し歩いて、自身のマンションが見え始めた時だった。
偶然と、裏路地を見つめる。
裏路地を見つめればスランプを乗り越えるネタがあるかなっとふざけた事を考え、見つめる。
俺は、目を見開いた。
そこには底が見えない闇の中に、一筋の光が突き刺していた。
そしてその光の中に制服に身を包んでおり、床に座り込んだ美少女と言ってもいい顔立ちをした女性がいた。
可愛さで言うなら多分原笑と破儽嵜より可愛い。
「……ん?」
俺の視線に気づいたのか、少女のつぶらな瞳でこちらを見つめてくる。
その時何か俺に突き刺さる。
俺は少女の目と合ったのだが……目が離せなかった。
これはなんだ?なんだこの気分は。
動揺していると少女がゆっくりと立ち上がり、こちらに近づく。
「あの」
少女は俺の袖を親指と中指の先で掴み優しく引っ張ってくる。
その仕草で俺は一瞬固まってしまった。
「?……あ、あの?」
「あ!、な、なんだ?」
再度の俺を呼ぶ声が聞こえ、固まっていた俺の体は動くようになる。
「あなた……狂歌先生……ですか?」
「え?」
狂歌先生と聞こえた時、俺の脳内は思考を停止した。
何故この子は、俺が狂歌だと知っている?
みんなには言ってなかったが、俺は覆面作家として活動している為、分かるはずが無いのだ。
俺は当たりを見渡し、人がいない事を確認する。
「……嬢ちゃん家上がってお話しようか」
「え?良いんですか?……じゃあ上がります」
少女の表情が一瞬驚いた顔になり、笑顔になる。
うん……可愛い。
そして俺と少女は俺の仕事場兼自宅へと向かっていく。
……いや、これ……危なくないか?!
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