第3話お前はもう死んでいる

 さっきの電話から1時間、朝の9時ゆらゆらと満員電車の中に突っ込まれ、更には編集長悪魔からの叱責があり、俺の腹はエレベスト級の激痛が走っていた。

 いかん、早く落ち着けなれれば!

 俺は懐からタバコを取り出すと、一服する。

 アァ嫌だなぁ……なーんであーなっちまったんかなぁ……憂鬱。

 そんな事を考えていると、アナウンスが聞こえてくる。


「次は名古屋駅〜名古屋駅〜」


 お、ここだここ。

 ホームに着くと同時に人混みに紛れながら電車を降りると、改札を出て、あるビルに向かう。

 駅から数分ぐらい歩いて、目的のビルに着く。

 10階ぐらいの高さがあり、見上げると『角集会かどしゅうかい』と、どっかの会社からパクったかのような会社名が我が物顔のごとく張り出されていた。

 流石にこれは。。。怒られるだろっと思いながら俺は、ビルの最上階、編集の人達がいる場所へと向かう。

 エレベーターに乗り込むと10階のボタンを押し、動き出す。

 10階まで着くのに時間あるし、携帯を見ようとスマホを取り出そうとする。

 そこで俺は違和感を覚えた。

 いや違和感ではなく、不気味な事が起きていた。

 スマホがひとりでに響き回っているのだ。

 俺はゴクリと唾を飲み込むと、恐る恐る携帯を起動し、画面を見る。

 そこには編集長と原笑の大量メッセージが休むこと無く、追加されていく。

 当然だが俺は恐ろしくなり、スマホの電源を切ると同時にエレベーターの扉が開く。


「狂我弥ァァァァァ!!」


 俺の名前をまるで親の仇に言うかのような怒声が聞こえると同時に俺の腹に鋭く鈍い痛みが伝わってくると、エレベーターの扉に激突する。

 どうやら腹に蹴りを入れられたようだ。

 こんなことしてくる奴に俺は覚えがあった。


「ぐはぁ!」


 よろよろと立ち上がり、蹴りを入れてきた奴に睨みつける。

 そこには、腰まである三つ編み髪を自身の前に持って来ており、服装は黒スーツにスカートを履いた女が仁王立ちで立っていた。

 そしてオマケには、その女の後ろには北斗七星が見え始めていた。

 俺は今からモヒカンとなりこいつにしばかれるのかァ……嫌だなぁ

 この姿はしばらく見たくなかったぜ。


「狂我弥テメェ、編集長に向かってうるせぇだぁ?!舐めてんのか!」


 そう、みんなも薄々気づいていただろう。

 え?気づいてない?……ふっ凡人が。

 この方が俺の編集長 破儽嵜はれさき瑠璃子である。

 彼女は最年長でこの会社の編集長に任命されたらしい……のだが、この通り暴力性があり。


「暴力性があるのはお前にだけだよ」


 おい!心の中に話しかけてくるな!


「その暴力をやめろ!俺が死ぬだろ!」

「はぁ……何言ってるのよ、私のはね……飴と鞭なのよ」

「何言ってんだ絶壁」

「あ?」


 絶壁と言った瞬間、破儽嵜は俺の顔面を片手で鷲掴みにすると力を込め始める。

 痛いめっちゃ痛い!!例えるなら小学生の頃の痛々しい大人ぶった子供のよう!!


「訂正しろや!!」

「すすすすすすんません!!」

「つうかよぉ!テメェ何スランプになってんだァあぁん?!はよさっさと新刊書けや!KA○○○○WAのリ○ロみたいな面白設定だったり、よう○のような学園裏主人公みたいな主人公だったり!!転○○みたいな無双系書けや!!」


 この人何有名作品の名前言ってんの?!これ流石に怒られるだろ!

 つうかほとんど売れ筋の小説やろ!

 俺は顔の激痛を忘れて反論に出る。


「嫌だね!!大体転○○みたいな努力のドの字もない俺つえぇぇぇぇぇ系とか嫌いなんだよ!」


 オーバー○ー○しかり、魔王○○だったり、ああいう何も努力せず、元々の自身の力を別の世界に持ってきたりとかあんなん。。。何がおもろいんじゃ!あんなの所詮陰キャの好きな設定を煮つめたもんやろ!。


「残念でした〜転○○は努力系です〜」


 口を尖らせて、俺の言葉の反論してくる。

 この口の形ムカつくわぁ!


「違いますぅ〜!転○○は努力系と見せかけて、スキルの暴力ですぅ〜イテテテテ!!!」


 編集長は更に力を倍増し、頭がかち割るのかってぐらいの力を込め始めてくる。

 流石に俺も痛みを忘れることが出来ず、暴れまくる。


「マジ勘弁して!もう反論しません!編集長はとても魅力的であります!」

「……気に入った最後に殺してやろう」


 顔面鷲掴みの刑から逃れた俺はすかさず距離をとる。


「全くタダでさえ色んな会社からスパイされて、イライラしてんのに」

「でもでも〜最近KA○○○○WA、サーバーダウンされて、個人情報をーー」

「それ以上は行けない!!」


 フラフラっと原笑が入ってくると危なすぎるメタい発言を繰り出す。

 だが、流石にそれはメタ発言すぎるし、その会社から訴えられる可能性がある。

 まぁ、怒られるのはこれ書いてる狂歌中の人だから、別にいっかぁ……俺もメタ発言すぎるか。

 解放された俺ら3人は話すため、打ち合わせ部屋へと向かう。

 席に着き、原笑が持ってきたコーヒーを飲む。


「所で……どうなの?スランプは」


 しばらく沈黙が続いていた空間にて、編集長が開口一番に聞いてきた。


「……治らないね」

「ん〜……それは困った……」


 そう呟くと編集長は珍しく真剣な表情へと変わった。

 いつもはヘラヘラしていた為、俺はその姿に見取られていた。


「これじゃ君の読者ファン達最高の金ズルがどこかに行ってしまいかねない」


 あれ〜おかしいなぁ、何か2重聞こえたような。


「編集者の原ちゃんはどうしたらいいと思う?」

「ん〜……力だよ!!弔」


 原笑に意見を求めると、原笑は立ち上がり、ヒロ○○に出てくるどこぞのみんなは1人の為って人のポーズをし出す。

 誰だ弔って!というかこれ以上は怒られちまう!


「いいですか?!小説に必要なのは、友情、努力、勝利なんじゃありません!」


 おい……まて、それは。


「ジャン○のそんな三大要素なぞ今は流行らない!今流行るのは!!裏切り!不真面目!圧倒的力!!」


 おぉ良いね〜という編集長の口から出ていい言葉じゃない事を吐いている所を聴きながら俺はこう思った。

 ……怒られてしまえ。

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