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一階のフロアには、婦人服、婦人雑貨、そして化粧品売り場が並ぶ。幼い頃は、こういったスペースには関心がなかったため、気付いていなかったが、どこも素敵な商品だらけだ。歩きながら、いろんなところへ視線を向けてしまう。
エスカレーターの手前にアクセサリー売り場があった。一人の女性が店員さんに頼んで、ハートのネックレスを試着している。女性の首元で金色のハートが、照明の光を受けてきらりと光った。
その瞬間、わたしは思わず見とれてしまった。立ち止まり、少し離れた場所から、試着の様子を眺める。
ネックレスは女性にぴったりだった。このまま広告になれそうだと思うぐらい。大人の女性、そんな雰囲気が発せられている。
(あんな風にネックレスが似合う大人になりたいな)
鏡を見ながら確かめている女性。「とてもよくお似合いですよ」と言う店員さんの言葉も受け、購入を決めた。
「そんなんはさすがに買えへんよ」
祖母の声で我に返った。思わず苦笑いを浮かべる。「いや、あんな綺麗な人になりたいなって、思っただけやで」
「あんたは、十分べっぴんさんよ」
「あ、ありがとう」
祖母からの思いがけない言葉に少し赤くなってしまった。
わたしたちはエスカレーターに乗った。ステップに並んで立ちながら、何のお店に入ろうかと、話題を弾ませた。
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