page.6 友達の概念

友達というのは互いにそれぞれが友達だと思っていないと成り立たない。

どちらか片方が友達思い込んでいたらそれは本当に友達とは言わないだろう。

だからこそ判断が難しい。

相手は本当に自分のことを友達と思ってくれているのか、もし思っていなかったら、などと考えてしまうのが普通だ。


そうでなくても笑顔で友達だと言って振る舞う人もそう多くは無い。


とはいえ、陽キャはそんなこと考えることすらないのだろうが、陰キャ代表である怜にはハードルを超えるよりも大変なことであるわけで、そう簡単に話を切り出せないわけである。


「へぇ〜薫先輩のお願いでねぇ」


「まともに話せる気がしない……」


「怜って顔堅いから近づき難いよね」


「おい親友に言うことかそれ」


へらへらと笑っている渚にジト目を向ける怜だが、自分でも渚の言ったことには同感している。


元々人と話すことが苦手な怜はいつも無意識のうちに無愛想になってしまうことで、クラスや学年の人たちと馴染めずにいる。


とはいえ当の本人は何も気にしていないわけで渚がいればいいとか思っている。


「でも姫野さんなら話しやすいと思うけどね。ほら、あの人って人嫌いっていうイメージ湧かないし」


「憶測だな。表向きに猫被るなんて誰だってやるだろ」


「そりゃそうね」


表向きで人と接しやすいキャラを作っておけば学校の中で浮くことは少なくなる。そのために一部の人は猫を被ってでも友達を作ることにするのだが、大体の場合空回りして何も出来ずに埋もれていくことが多いのが学校という現実である。


「怜なんて猫を被ってるのか分からないからね」


「それが最善だからな。仕方がない」


「ミステリアスボーイだもんね」


怜は青薔薇学園の中でもかなり有名な生徒の1人で、もちろん学園一の怠惰というのもあるが、それ以前にミステリアスということで有名である。


いつも真顔で、言葉をあまり発さない性格であるため、何を考えているのかわからないと言われている。


「俺ってそんなに表情堅いか?」


「硬いよ? 一切の油断も見せない感じが際立ってる。まぁ、僕たちといるときは軽くだけど笑ったりしてるから、気を許した人だけなんだろうけど」


「……渚とは話してて楽しいからな」


「急にデレんなし。ドキッとするじゃん」


「お前にときめかれても吐き気がするわ」


「二重に酷いね」


怜としては表情は豊かな方だと思っている。

一人でゲームをしていて、物語の感動シーンで少しだけ泣いた事や大笑いしたことだってある。あくまで一人でいるときだが。


人を前にすると表情筋が固くなってしまうのは怜の性格から来るもので、気を許している渚や玲奈はもちろん、薫には普通に笑ったりして話している。


ただ、渚との会話を見ている他のクラスメイトからすると、何が怜の表情を引き出すトリガーになっているのか分からないわけで、ミステリアスボーイなんて呼ばれたりしているわけである。


「それで、怜としては姫野さんは友だちになりたい人なの?」


「わからない。あいつ自体、男子の友人がいるって噂は聞かないし、話しかけているとこを見たっていう噂も聞かない。だからもし話を切り出したとしてもどう返ってくのかわからないから、友だちになりたいとかも思えない」


「お硬いね」


「うるせぇ」


「まぁ、聞いてみるだけでもいいんじゃない? ただ、薫先輩の名前は出さないほうがいいかもだけど」


「それは俺も思ってる。姫野のやつ薫先輩とぎこちないからな」


何があったのか二人の知るとこをではないのだが、ここ最近の二人はどことなく距離が離れているように見えている。


友達になってほしいと薫から頼まれたなどと口を滑らせたらどうなるのかなど怜と渚ならわからないはずがない。


――放課後


「怜はこれから家で最新作のゲームでしょ?」


「そ、予約したやつが届いたからな」


「いいなぁ〜、僕もやりたいけど我慢だね」


「部活がんば」


「ありがと。じゃあね」


一足先に部活に行く渚の背中を見送ってから怜は軽めの背伸びをして荷物をまとめ始めることにしたのだが、そこに一人のクラスメイト――


「夜狼くん」


「……なに?」


「そんな怖い顔しなさんなって。単に話しかけただけなのに」


人がないとはいえ学園のマドンナから話しかけられると普段学校で言葉を交わさない怜は、無意識に警戒してしまう。


「君これから帰り?」


(あ、これ一緒に帰ろうパターンあるな)

「そうだけど」


「ほんと? じゃあ一緒に帰ろ」


予想通り一緒に帰ろうパターンだった。

なんの躊躇いもなく誘ってくるあたり怜は感心してしまう。


「一緒にって……他の生徒に見られたらマズイだろ」


「大丈夫だよ。この前も一緒に帰ったけど何も無かったじゃん?」


前というのはあの告白現場を見た時のことで、それから少し経った頃にゲームショップから一緒に帰ったが、その時は辺りも暗くなり始めていたのもあって人に見つかるなんてことはなかったのだが、今は学校で部活が始まってすぐの時間帯、つまり他クラス及びクラスメイトに見つかる可能性が高い。


「見つかったとしても何も問題ないと思うのだけれど?」


「お前からしたらそうだろうけどな。俺からすると厄介なんだよ」


「なんで?」


「学園三大美姫の一人とか言われてる姫野と一緒に下校してるところを見られでもしたら、とち狂った男子から殺意を向けられかねない」


「あーそういうね」


葵は学園のマドンナ、もちろん男子からの人気も高いのは当然。

誰しもが一度は一緒に帰りたい、付き合いたいと望んでいるのだが、あいにく葵は下心丸出しの男子のことはよく分かっている。


そんな葵から警戒もなく一緒に帰ろうと誘われている。


怜からしたら万が一のことを考えたら丁重にお断りしたいというのが率直な感想なのだが、当の本人である葵はというと――


(こいつ……すげぇ笑顔だ……)


一緒に帰りたいと強く望んでいるような笑顔で見つめてきている。


「バレなきゃいいんでしょ?」


「はい?」


―――――――――――――――――――――

【あとがき】

急ピッチで書いて1話分しか書けない己の実力のなさを呪いたい。

ということでpage.6公開です。

焦らしますよぉ?

友達の概念僕からするとよく分かってないので、怜も同じ感じなんだと思うので、次回かその次位で友達になると思ってください。


というわけで、最近忙しくなってて中々書いてる時間がないので、これからは投稿できる日に投稿しようと思います。

では次回まで、ばぁい

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