page.3 第一回生徒会会議!
「本題に入るけど、一年生が入学してから約3カ月がたって、そろそろ学園祭の時期になるわけで」
「確か青薔薇学園の学園祭は10月でしたよね?」
「うん。だからこの時期からそれぞれのクラスでの出し物の決定と、準備に取り掛かるの。そして生徒会はそれに合わせて打ち合わせを何回もしなくちゃいけないのよ」
青薔薇学園の学園祭は10月の上旬から3日に分けて行われる。
1日目の前夜祭は生徒のみでの参加となり、一般参加は2日目と3日目となる。
そして、学園祭の出し物を決めるために生徒会からその年の学園祭の準備期間に向けての資料の製作に取り掛かるのだが、一つ問題がある。
「圧倒的な人手不足だな」
「そうなのよね~」
そう、今の生徒会には人手が足りないのだ。
現生徒会に所属しているのは玲奈、葵、渚、楓、そしてもう一人は姫野薫という人物だ。
現生徒会は5人で回っているのだが、学園祭という一大イベントには圧倒的に人手不足というわけだ。
「生徒会正副会長二人に、会計一人、書記が一人、広報が一人、せめてもあと二人は欲しいところだな」
「怜が入ってくれればありがたいんだけど、立場上無理だし、かといってほかの生徒が加入してくれるかと言えば難しいよね」
「今更なんですけど、今の生徒会に人が入ってこない理由って何かあるんですか?」
「簡単に言えば仕事量の多さとスペックの落差かな」
「スペック?」
「うん。現生徒会には僕を含めてほぼ最高スペックの玲奈先輩、そして薫先輩、あとは姫野さんがいて、あとは楓さんいる。生徒会の仕事のほとんどがこの5人で回っているわけで、優れた人じゃないと追いついていけないんだ」
現生徒会の会長である玲奈は学園のほぼすべての仕事を担っている。もちろん生徒が手を出せる仕事のみだが、その仕事量は一般的に会社で働く社員と同レベル、もしくはそれ以上の量だ。
それをいとも簡単にさばいている玲奈は学園では最高スペックの持ち主であり、誰一人として真似は出来ない。
そのため玲奈に憧れて加入した生徒は玲奈とのスペックの違いを強く思い知らされて抜けて行ってしまう。
尋常じゃない仕事量に心が折れてしまうのだ。
「だから今の生徒会には優秀とされる人が入ってきてほしいんだけどね。この学園にいる生徒の中で玲奈先輩に追いつける人がいないから、誰も入ることを拒んでいるんだよ」
「確かに、玲奈先輩っていかにも仕事の出来る超ハイスペック上司って感じですもんね」
「あら、ありがとう~」
「だからこそだ。今の人で不足を解消するための対策を取る必要がある」
怜が加入すれば免れることが出来るのだが、怜にはどうしても加入できない理由がある。
誰にも知られてはいけない理由が。
だからこそ生徒会の加入を拒んでいるのだ。
「まぁ、手っ取り早いのは一時的に学園祭の実行委員を作る事だろうけどね」
「やっぱそれしかないよなぁ……」
「そうだね。学園祭の後には解散すればいいだけだし」
「じゃあ、その方針で進めますか?」
「そうだね。あとは薫ちゃんにお願いして人を集めて貰えばいいから、私たちは次の事を決めましょうか」
「はい」
とりあえず人で不足の問題は解決できる可能性が出てきたため、玲奈たちは次の議題に話を進めた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「今日はこのあたりにして解散しましょうか」
「ですね。時間も時間なので」
生徒会室の時計を見ると時刻は18時を過ぎていて、下校時刻だった。
青薔薇学園では原則7時前には下校することとなっている為、それ以上を過ぎると一部の活動が一定期間禁止となってしまう。
生徒会でもそれが適応されてしまうわけで、緊急の用事でない限りは時間厳守となっている。
第一回目の生徒会会議はこれにて幕を閉じて、それぞれ帰宅することにした。
「ボク、普通に驚きなんだけど」
「何がだよ」
「君が中学時代に生徒会副会長だったなんて」
「……」
「多分同学年の人に広めたら信じてくれる人1割もいないだろうね」
「悪かったな信用性ゼロな人間で」
「そこまでは言ってない」
普段の怜の生活態度を見て怜が生徒会副会長を務めていたという事実を信じる人はほぼいないだろう。それ以前に怜が生徒会に所属していたこと自体考えられない筈だ。
「そういえば、会議が始まる前に言ってた生徒会長の女の子って?」
「あーそれは……」
「渚、それは話すな」
「あ、ごめん。そうだったね……」
「え、なに、どういうこと?」
「ごめんね姫野さん。その人の事は話さないって怜との約束なんだ」
「そう、なんだ……」
葵は怜の方を見るが、怜は顔を逸らすかのように前を向いて歩いている。
「わかった。無理には聞かないよ」
「ごめんね」
「とは言っても……やっぱり夜狼くんが生徒会副会長を務めてたのは信用できないな」
「悪かったな」
「あはは」
「ふふ」
夕焼けが差し込む道を3人で並んで帰る。
渚と怜はまだしもこの二人の間にまた一人加わることなった。
「……疲れた」
家に着くや否や、怜はリビングのソファーに倒れ込んだ。
「……中学の時のことはあいつには知られたくないんだよな」
怜にとっての中学時代は黒歴史になりかねないものでもあった。
それはもう、悲惨な過去として扱われるようなもので、思い出したくもないことである。
そして、何より他の誰にも知られたくない事でもあるのだ。
渚には黙ってもらっているが、葵に中学時代に生徒会副会長を務めていたということがバレてしまった以上、いつまで隠し通せるのかは定かではない。
「隠し通さなきゃな……」
立ち上がり風呂に入ろうと風呂場に向かった。
中学時代に何があったのか知っているのは渚と玲奈――そして姫野薫だけである。
――生徒会室
「ごめん玲奈。会議参加できなくて」
「いや大丈夫だよ~部活お疲れ様」
「うん」
生徒会室に遅れてやってきたのは姫野薫で、玲奈の同級生であり、親友だ。
薫は苗字を見て貰ったら分かる通り、同じ姫野で、2年生であることから、姫野葵の姉である。
葵と違って薫は黒いとのショートヘアに赤色のグラデーションを施していて、身長は葵より少し高いくらいである。
薫はバレー部に所属していて、そこのエースとして活躍している。
「どうだった? 初会議は」
「結構いい話し合いが出来たわよ~? 怜くんもたくさん意見出してくれたし」
「夜狼さんが……彼、優秀だもんね」
「そうね~さすが私の弟!」
薫もまた、玲奈と怜が姉弟であるということを知っている数少ない人物の一人だ。
「学園祭に向けての準備、整いそう?」
「もちろん。間に合わせるわ」
「ならよかった。私も当日までには会議に参加できるようにするね」
「あら? 別にいいのよ? 部活動優先してもらっても。こっちは怜くんや渚くんがいるもの」
「ありがとう玲奈。でも、私も一応は生徒会の役員だし、それに生徒会副会長って役職もあるから。参加しないってわけにはいかないんだよ」
「薫ちゃんはまじめね~そんな薫ちゃんには私からのハグをプレゼント! えいっ!」
「ちょっ! もう、玲奈ったら……」
「んふふ~」
二人だけの生徒会室でいちゃしているが、下校時刻があと5分まで迫っていることに二人は気づいていない。そして、見回りの係を任されていた玲奈たちの担任の女性の先生が生徒会室の近くまで来ていて、そのあと、呆れられて軽めの説教を受けることも玲奈たちは知らない。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【あとがき】
焦ったぁぁぁぁつ!
あ、こんにちはまたはこんばんは、八雲玲夜です。
page.3、読んでいただきありがとうございます。
これを書いている時に通知が来て、ラブコメ部門週間ランキングがなんと203位になっていました。有難い限りです。
最初の投稿から早3日でこのランキング帯に入れたことはものすごくうれしいです。ありがとうございます。
これからよろしくお願いします。
八雲玲夜でした。
――バイバーイ
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