Page.2 告白現場を彼は見てしまった……

放課後、葵が告白されている現場を目撃してしまった怜はというと、葵と帰宅する羽目になっていた。


「なぁ、誰にも言うつもり無いから一緒に帰らなくてもよくないか?」


「だーめ。神崎さんに監視しておくことって言われたし」


「それを目撃された側がやってどうすんだよ。普通は神崎がやることだろ」


「それはそうだけどさ……神崎さんは部活で忙しいわけだし、当の本人である私が見てれば神崎さんが見てるのとはさほど大差ないでしょ?」


「俺としては見逃してもらいたいんだがな」


ことは下校する15分ほど前に遡る。


『あたしこれから部活があるから君の監視は、この姫野葵さんにお願いするね」


『は? なんで姫野に監視されなきゃいけないんだよ!?」


『万が一ってことがあるでしょ? それに、あたしと君は今日始めて関わったわけだし、信頼を持つにはまだ早いかな〜って、だからこそ当の本人でもある姫野さんとあたしの二人で監視をして、信頼に足る人物だと判断したら見逃してやろう」


『監視されるのは俺であって、巻き込まれたのも俺なんだからお前が威張るな」


とかいう会話の後に、致し方なく葵と帰宅することになったのだ。


まだ葵と下校するだけなら問題はないのだが、それでも怜は警戒せざる負えないことがある。


「もし同じマンションに入っていくところを他のやつに見られたらどうするんだよ……」


そう、怜がどうしても警戒して、隠したいのは葵が隣人であるということだ。


それに限ってはバレなければなんの支障もない。

だが、それより支障をきたすのが、怜と葵が同じマンションに住んでいるということを知られた時だ。


姫野葵は学園のマドンナ的存在で、少しでもお近付きになりたいという男子は少なくない。


マドンナが自分の家の隣に住んでいるなんてシチュエーションなんて漫画だけの話だと思っている男子からすれば、喉から手が出るほどに憧れなことだ。


そんなシチュエーションを得ている男子がいると知られればどうなることかなんて考えなくてもわかる事だ。


「でもお互いに同じマンションで暮らしていたって分かったのが入学するよりちょっと前でしょ? それまでバレてないんだから大丈夫だって」


「そういう問題じゃないんだよなぁ……」


現時点でバレていなければよしというのは屁理屈にしかならない。

万が一のことを考えればこういった状態になるのは怜としては避けたいことだ。


「今日は致し方ないから無視するけどな、明日からは俺に関わってくるなよ?」


「なんで?」


「なんでって、あのなぁ……俺と姫野、1回も話したこと無かったろ」


「昨日話した」


「あれは話したうちにはいらない」


「えぇーボクとしてはあれも話したうちに入ってるんだけど」


怜としては昨日の1件は偶然のもので、あれだけで何かしらの関係ができたとは思っていない。


公園で話したというよりお互いに押し問答していただけのように思っているため、会話のうちに入るかと聞かれればあやふやな部分が多い。


マンションの中に入っても葵は怜に付いてきていた。


怜としては早く離れて欲しかったのだが、そうこうしているうちに自宅に着いてしまった。


「ボクは君のことは信用してるよ? 誰かに言いふらしたり噂を広めたりするような趣味はなさそうだし」


「そんな趣味を持ってるヤツいたらシンプルに性格終わってるだろ」


「言うねぇ〜まぁ、そういう人はどこにでもいるものだよ」


「そうだろうな」


「ま、例えボクが君を信用していようと監視は続けさせてもらうよ」


「それ自分で言うか?」


普通は自分で相手のことを信用していることを例えとはしないはずだ。


「じゃ、ボクはこれで」


やることを終えたかのように足早に自分の家に入っていく葵にジト目を向けつつ、入るの待ってから大きくため息をついて家に入った。


今日分かったことがある。


学年成績トップの姫野葵は天然でもあるということだ。

もしかしたらそれも演技なのかもしれないというのは邪推だと思うが、なくなさそうで怖くなっている。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「というわけで今日は生徒会の初会議よ〜」


「なんで俺まで参加してんだよ」


「だって一応は怜くんも生徒会の一員だし〜」


「俺は入る気はないって言ったろ」


「え〜なんでよ〜一緒にやろうよぉ……」


今、怜の目の前で肩を竦めているのは怜の実の姉である波夜瀬玲奈だ。

学園の中では怜と玲奈の関係は幼馴染という設定で通している。


そのため、学園の中で2人の本当の関係を知っている人は数少ない。


そのうちの一人は渚である。


「とはいえ、中学校の時は生徒会副会長を勤めてたくせに」


「それは言わないお約束だろ」


「そうでしたね」


怜の通っていた中学校で怜は生徒会副会長を務めていた経歴がある。


渚もその生徒会にはいたため、怜が務めていたことを知っているわけだ。


ただ、怜とは違う学校に通っていた葵からすれば驚きを隠せないのも無理は無い。


「え、夜狼くんって生徒会役員だったの?」


「まぁな。俺ともう1人、生徒会長の女子がいたんだけどな、そいつから頼まれて渋々やってたんだよ」


「意外……」


「まぁ、無理もないよね。普段の怜って怠惰そのものだし」


「うるせぇ」


「事実だし」


「ふふっ、確かに」


「……」


自分でも自堕落な状態なのは把握しているが、こうして面と向かって言われると何も言い返せなくなってしまうのは事実で、それを軽く笑われるのもいたし方ないとも思ってしまう。


「てか早く議題を教えろよ」


「あ、話ずらした」


「ずらしたね」


「逃げた」


「うぐっ……」


美男美女からの手中放火はいくら怜でも気が滅入ってしまう。


―――――――――――――――――――――

【あとがき】

はいpage.2終了。


やっと玲奈出せた。最高。

絶好調。

あ、次回から毎週水曜日と日曜日に投稿に変更します。


最新話が早く書き終わり次第日曜日に投稿、遅れるようだったら水曜日に投稿できるようにします。

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