第2話 入学

ガイアス兄さんとの勝負から1年経ち、いよいよ学園の入学試験の日になった。

この1年で僕はできる限りこの世界について調べてみた。まず、時代は僕がいた時代から約1400年経っているらしい。そして、大魔王(僕)を倒した勇者アーサーは英雄として語り継がれているらしい。あいつが英雄?そんなはずがない。だってあいつは.....。

〜前世の記憶〜

「大魔王サタン、もっとその表情を見せておくれ。その全て壊されて絶望する表情を!!」

「勇者よ、なぜこんなことをするんだ?私たちは人間に何もしていないだろう?」

「ああ、そうだね。君たちは僕たち人間に何もしていないよ。だけどね、僕は人が絶望するときの顔が大好きなんだ!!だから、君たち魔族を殺すんだよ。」

〜現代〜

思い出すだけで気分が悪くなる。

ピンポンパンポーン

「まもなく試験を開始いたします。受験者は受付を済ましてから中へお入りください。」

ピンポンパンポーン

おっと、こんなことしてる場合じゃないな。とにかく僕がわかったことはこれだけだった。次は試験に集中することにしよう。

この学園の試験は実技試験と筆記試験がある。まず筆記試験は魔法学と歴史が出るらしい。魔法学とは、魔法式などを学ぶことで、さまざまな魔法を使えるようにするための学問だ。次に、実技試験は試験管との模擬戦をするらしい。模擬戦のルールは、剣と魔法両方有りの相手が降参または戦闘不能と判断されることで勝ちになるらしい。

「ユーリ頑張ってきてね!」

「うん、母さん。」

「ユーリなら負けることはないと思うけどね。」

「エフタル兄さん、さすがに買い被りすぎだよ。」

「もうすぐ試験が始まるみたいだし行ってくるね。」

気合いを入れないとな。筆記はともかく実技はどうなるかわからないからな。

「ユーリ・カリウスさんですね。中へどうぞ。」

まずは筆記試験からだっけ。

「えっと、教室は。」

「邪魔よ。どいてくれない?」

「あっ、ごめん。」

「ほんといつもダメダメなんだから。」

「それは言い過ぎなんじゃない?」

「あんた誰よ!」

「ただの通りすがりだけど。」

「なら関係ないでしょ。私とこの子の問題なの。入ってこないでくれる?」

「君も受験者だろ?大丈夫かい?もうすぐ試験が始まるよ。」

「ほんとだわ。こんなのにかまってる場合じゃないわね。」

じゃあ僕もそろそろ行くことにするか。

「あ、あの。」

「うん?」

「ありがとうございました。」

「全然いいよ。そうだ!一緒に教室まで行かない?」

「はい!」

〜2時間後〜

ふぅ、トラブルもあったけど無事に筆記試験は終えることができたな。後は、実技試験だけか。

「実技試験は受付でもらった紙に書いてある順番で行うんだよな。ねぇ、君は何番だった?」

「に、2番でした。」

「じゃあ僕の1つ前だね。僕は3番だったんだ。」

「実技試験1番の受験者は会場へ上がってきてください。」

「はい!」

さっきのいじめてた子か。

「では、はじめ!」

「風裂爪(ウィンドネイル)」

シュンッ、シュンッ

「こ、降参です。」

さっきの子すごいな。一撃で試験管を降参させるとは。

「では、2番の方上がってきてください。」

「は、はい。」

「では、はじめ!」

「風爆撃(ウィンドボム)」

バン、パン、バン

「し、守護(シールド)」

「ふ、妖精の炎(フェアリーフレイム)」

ボン、ドガーン

あの子妖精使いだったのか!

「降参です。」

ようやく、僕の番か。

「では、3番の方上がってきてください。」

「はい。」

「では、はじめ!」

一度、今の本気を試してみたかったんだ。修行もしたし、どれくらい力が戻っているのか。

「極爆撃(エクスプロージョン)」

「えっ?」

ドゴゴーン

やっちゃった。

「試験は一旦やめとします。」

はぁ、久しぶりに失敗したな。

あの後、教師たちに事情を聞かれたけど、試験官の人が助けてくれたのと、悪気がなかったこと、結界のおかげで保護者に被害がなかったことで注意だけですませてくれた。

「大丈夫?」

「大丈夫だよ。そういえば自己紹介がまだだったね。僕の名前はユーリ・カリウス。君は?」

「私は、イリヤ・クリスタル」

「よろしく、イリヤ。」

「うん!よろしく!」

「2人とも受かるといいね」

僕はあれのせいで受かる気しないけどな。

〜翌日〜

「ユーリ起きて!!」

「どうしたの母さん?」

「学園から手紙来てるわよ!合格だって!!」

「えっ?」

僕、あんなことしたのに合格できたんだ。

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人間好きの魔王の2度目の人生〜勇者に倒されて起きたら人間になっていた〜 緑野こうら @kourajp

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