82話 春香達の怒り

★七瀬春香(side)


 私達は学校が始まる前日に電話で話していた。


『皆明日からどうする?』

『そうね、真理ちゃんは傑がまだ何かしてくるかもって言ってたしね……』

『そうだね、やっぱり私達と悪琉君の関係を皆に教えるのが一番いいんじゃない?』

『そうだよね、私もそれが良いと思う……ていうかそうしたい』

『春香に関してはそれを言う前から悪琉とイチャイチャしてたんだから流石に皆感づいてる人も少なくないと思うわよ……でも私は賛成』

『まぁ、これ以上ややこしくなる前に皆に教えるほうがいいのは間違いないよね』

『そうね、間違いないわね』

『それでこれが重要なんだけど……悪琉には話す?』

『んー真理ちゃんは悪琉が慈悲をあげてるって言ってたからとりあえず様子見かな?』

『そうだね、何も無ければそれでいいしね……悪琉君には気持ちの悪い話だろうしね……』

『まぁ、そうだね、ていうかもし何かあるなら今度こそ私達で終わらせよ……』

『そうだね……もうこれ以上はしんどいしね』

『えぇ』



 次の日、私達は一緒に登校した。


 案の定今回の事件について皆から話しかけられた。


 心配してくれてるのは分かるけど凄く大変だった。

 私達があたふたしていると悪琉が来た。


「おはよう、三人共」

「「「おはよう悪琉(君)」」」


 私達は笑顔で挨拶を返した。

 そんな私達を見てクラスメイトの女の子が聞いて来た。


「あのー、良く佐野君と一緒にいるの見るけど……四人はどんな関係なの?」

「俺達は別に……」


 悪琉が何かを言おうとしてたけど私達は目を見合わせて皆で頷いた後、口を挟んだ。


「私は悪琉の彼女だよ」

「え?そうなの!!!確かに春香ちゃんはイチャイチャしてたし……」

 

 私がそう言うと……そこまで驚かれなかった。 

 いやまぁ、知ってたけど……もう少し驚いてくれても……

 なんかこう……まぁ、いいか……


「私も悪琉と付き合ってるわよ」

「わ、私もです!!!」


「え?えぇぇー???」


 二人がそう宣言すると……滅茶苦茶騒がれた。

 男子も女子も大慌てだ……

 まぁ、そうなるよね。


 ていうかこの際だから悪琉の事を皆に伝えよう……

 今がベストタイミングだよね……


「そうだ!!この際だから皆に悪琉の事を教えるね!悪琉の悪い噂を皆聞いてると思うけど、悪琉はカッコよくて優しい人だから、噂なんて信じないでね!!!」


 私は本気でそう叫んだ。

 そうしたらクラスメイトの反応が思っていたのと全然違う反応だった。


「いや、まぁ、最初は警戒してたけど、同じクラスに居て悪い人には見えなかったしね……」

「確かに……高校に入ってからは変な噂も増える事無かったしな……」

「てかあくまで噂だしね……」

「大体三人が惚れるなら悪い人の訳も……」


 悪琉が悪い人じゃないって皆も薄々気付いていたのか……

 まぁ、悪琉の日々の行動のおかげだね……

 うん、良かった。


 その後私達の関係を沢山聞かれて大変だったが、それ以上に楽しかった。


 そんな盛り上がってる空間に傑が来た。


 先程とは取って代わってもの凄く重い空気になった。

 傑はおどおどしつつも席に着いた。

 このまま何も無ければいいけど……何であんなに余裕そうなのか……


 そう思って居たら私と沙羅と愛は放課後にクラスメイトの女子達に呼び出された。


「三人共ごめんね……ちょっと話しておかないといけない事があって……」

「どうしたの?」

「実はね、神谷君がクラスメイトに言いふらしてるの……」

「それって何を?」

「えっとね……実は……」


 そうして私達は女の子達の話を聞いた。

 それは余りにも酷い話だった。

 せっかく悪琉が慈悲を与えてくれたって言うのに……


 彼女達の話はこんな感じだった。


 掲示板の件は傑が悪琉に嵌められただけだ。

 私達の事で嘘をついたのも悪琉に脅されていた。

 そうしないと私達の安全は保障しないって言われたて仕方なく従った。

 悪琉は初めから私達の事を狙っていて今回の件まで全部悪琉が仕込んだことだって……


 余りにも滅茶苦茶だ……破綻し過ぎている……何でそんな事も気付けないのか……

 

 その他にもちょこちょこ言っていたらしいがそれはどうでも良かった。

 私達は既に堪忍袋の緒が切れていたからだ。

 

 私達は女の子達にお礼を言いそれは全部でたらめだと言ったら、彼女たちも誰一人として信じている人はいなかったのでそこは安心した。


 女の子達との話し合いが終わり私達は三人で話す事にした。


「マジでどうしようもないね……」

「本当にあんな事で皆が信じてくれると思ったのかな……」

「自分の状況をまるで理解出来ていないわね……ていうか何処まで悪琉を馬鹿にすれば気が済むのかしら」


 今までに見た事ないくらい愛ちゃんがイライラしている。

 沙羅ちも表情には出ていないが声がからり怒っているようだった。

 当たり前だよね……私も同じだし……


「本当だよね……折角悪琉君の優しさを仇で返す形だもんね……」

「取り敢えず男子は分からないけど女子達は信じないだろうから、さっき教えてくれた女子達に協力して貰おうよ」

「協力って……具体的にどうするの?」

「そうだね、まず傑の話を信じない様に男子に言って貰う事、それと今回の件が悪琉に伝わらない様にしてもらう事だね」

「良いわね……やるなら徹底的にやりましょう」

「私もそれで良いと思う」

「それでね、これは提案なんだけど……愛ちゃんと沙羅ちも私みたいに教室で悪琉とイチャイチャしない?」

「「え?」」


 二人は素っ頓狂な声を出して目を丸くした。

 まぁ、そうなるよね。

 でもこれは絶対に必要なことだから……


「これは傑に見せつける為だよ、もう一ミリも私達と悪琉の間に入る余地が無いってね。いい加減現実を見て貰わないと……二人も悪琉の事が大好きなんだから出来るよね?」

「そっ、そうね……」

「で、出来るよ勿論だよ」

「そっか、なら良かった……ならこの事も含めて女子に伝えるね」

「「うん(えぇ)」」


 はぁ、これ以上傑に時間を使いたく無いな……

 そんな時間があるなら悪琉といっぱい遊びたいよ……

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