81話 何も知らない悪琉

 神谷が暴走してから2週間が経って登校日となった。


 真理の方からあの後神谷がどうなったのかを俺達に説明して貰ったが、春香達は俺がそうなった可能性もあったんだから当然でしょ?って感じだった。


 俺が登校すると教室が騒がしかった。


 春香達がクラスメイトに囲まれていた。

 話を聞くと皆に心配されていたらしい、特に女子からは滅茶苦茶同情されているらしい。

 まぁ、あんな事を勝手に言われてると知ったらそうなるわな……

 

 真理もイライラしてて春香達に何も言わずに晒しちゃった事について凄く謝ってたしな。

 春香達は全然気にしてなかったけど……

 

「おはよう、三人共」

「「「おはよう悪琉(君)」」」


 俺達が挨拶をしあうとクラスメイトの女子が聞いて来た。


「あのー、良く佐野君と一緒にいるの見るけど……四人はどんな関係なの?」


 付き合ってるって言って良いのかな?

 やっぱり隠した方が良いのか?


「俺達は別に……」

「私は悪琉の彼女だよ」


 俺が話していた所を春香に遮られてそう宣言された。


「え?そうなの!!!いや、でも確かに春香ちゃんはイチャイチャしてたし……」


 クラスメイトがざわつき始めたけど、春香は明らかに学校でもイチャイチャしてきたし薄々分かっていたのだろうか……

 思ったより反応が薄い……


「私も悪琉と付き合ってるわよ」

「わ、私もです!!!」


「え?えぇぇー???」


 そりゃそうなるよな……流石に愛と沙羅までとは誰も思って無かったよな。


 クラスメイトの男子は一気に嫉妬の目が多くなったし、女子からは面白がられてるなコレ……

 

「そうだ!!この際だから皆に悪琉の事を教えるね!悪琉の悪い噂を皆聞いてると思うけど、悪琉はカッコよくて優しい人だから、噂なんて信じないでね!!!」


 春香がクラスメイトの前でそう叫んだ。

 愛と沙羅は後ろで頷いてる。


「いや、まぁ、最初は警戒してたけど、同じクラスに居て悪い人には見えなかったしね……」

「確かに……高校に入ってからは変な噂を聞く事も無かったしな……」

「てかあくまで噂だしね……」

「大体三人が惚れるなら悪い人の訳も……」


 クラスメイト達が次々とそう言いだした。

 そう言えば転生したばっかりの時みたいな軽蔑な視線を全く感じなくなってるな……


 その後主に女子達から俺達の馴れ初めとかを聞かれて大変だった。


 そんな感じで盛り上がってると神谷が腕にギブスを付けて入って来た。


 その瞬間一気に静まり返って皆が神谷を見た。

 その目を俺は知っている。

 だって俺が転生した時に皆に向けられていた目だ……いやそれよりも酷いかもしれない……


 神谷は皆の視線を感じておどおどしていたが、何も言わずに席に着いた。

 てか、凄い精神力だよな……そこだけは凄いよほんと……


 次の日になると、神谷は昨日より暗い表情になっていた。

 そして何でだ?ってブツブツ呟いていた。

 それと皆に付き合ってる事を公表したからか、春香だけじゃなくて愛と沙羅も学校で甘えてくるようになった。


 そしてまた次の日、今日も神谷は暗かった……それに何かに怯えてるようだった。

 昨日まで神谷の事を相手にしていなかったクラスメイトもぼそぼそと神谷の悪口を言い始めた。

 春香達は何故か更にイチャイチャしてくるようになった。


 それは日に日に強くなって行って、登校日から四日後の金曜日には神谷は酷い表情をしていた。

 ブツブツ何かを言っていて周りに怯えてる。

 とてもじゃないが正気じゃ無かった……どうしてあの感じで登校するのか?


 そして月曜日、神谷は学校に来なかった。

 

「なぁ、春香?愛?沙羅?一体神谷に何があったんだ?」

「その事なら悪琉は知らなくて大丈夫だよ!」

「そうだよ気にしないでね」

「そうね……どこまでも馬鹿なアレが悪いだけだからね」


 三人は何があったのか分かるようだった。


「えっと、聞いちゃダメか?」

「んー別に駄目じゃ無いけど、悪琉からしたら気分悪いだけだよ?」

「そう、悪琉が真理ちゃんに情けをかける様に言ってあげたのにそれを更に……」

「私達は悪琉君にこの話が行かない様にコントロールしてたので……」


 良く分からんが、三人が俺の為に俺の耳に入らない様にしてくれたって事だよな?

 まぁ、別に神谷の事はどうでもいいから聞かなくてもいいか……


「良く分からんが、ありがとな、俺の為に動いてくれたんだろ?」

「ううん、私達も我慢の限界だったからね」

「そうね……流石に私もイライラが止まらなかったわ」

「あそこまで酷いともう同情の余地がないしね……」


 そう言えばクラスメイトに付き合ってる宣言したのもそれの為なのかな?


「皆に付き合ってるって公表したのはその為か?」

「え?それは違うよ?」

「そうね、あれは私達が悪琉の物って事を皆に教える為」

「これ以上面倒事が増える前にそうした方が良いと思ったから三人で皆に伝えるって話し合ったの」


 三人とも結構考えてくれてたんだな……」


「相談もしないでごめんなさいね」

「いやいや、それは全然良いよ、俺も皆に宣言してくれた時嬉しかったしな」

「あっ、でもね私達が悪琉と見せつける様にイチャイチャしたのは関係してるよ!」

「あー確かにちょっとイチャイチャしに来すぎだなって思ってたよ……愛と沙羅なんて照れてる癖にやって来たしな」

「あ、当たり前よ……皆の前であんな事するなんて恥ずかしいに決まってるわ……」

「そうだよ……春香ちゃんが異常なだけだよ」

「私達がイチャイチャしててもクラスメイトの皆から変な目で見られなかったでしょ?」


 そう言われたらそうだな……男子の嫉妬の目は合ったが……

 考えてみたら普通あんなイチャイチャを見せつけられたら皆鬱陶しいと思うはずだけどそんな感じはしなかったな……

 女子に至っては途中からニヤニヤしだして、美男美女カップル美し過ぎ!とか目の保養過ぎるとか意味分からない事を言ってる人も少なく無かったしな……


「確かにそうだな……」

「あれって実は皆に協力して貰ってたんだよね」

「まぁ、もういいんじゃない?春香?これ以上その話はしなくても」

「そうだね、悪琉君が気になっちゃうだけだしね」

「それもそうだね」

「まぁ、俺は聞く気は無いから大丈夫だぞ?」

「いいのいいの、ほらそれより授業が始まるよ!」

「あっ、そうだな、じゃあ教室に戻るか」


 そうして俺達は教室に戻った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る