78話 斎藤との邂逅
真理と外食に出かけた日の夜に春香からグループLIMEで連絡が来た。
『明日暇な人ーーー!!!』
『どうしたのよ急に』
『実は今日の昼に暇だったからおかーさんと一緒に何かビデオでもレンタルしようかって話になったんだけどね、そこでホラー映画が目に入ってね、いくつか借りて来たの!』
『えっと、もしかしてそれを皆で見ようとかって話かな?春香ちゃん……』
『そう!夏と言ったらホラーだよね!!!』
『えぇ……』
『ふふふ、私は良いですよ、楽しそうですし』
『まぁ、私も別にホラーは苦手じゃないから良いけど……』
沙羅だけはかなり嫌そうだな……ホラー苦手なんかな……
『俺も別に良いけど……沙羅は大丈夫か?』
『んー、皆が一緒なら何とか……大丈夫だよね?』
何で疑問形なんだ……
『よし!それじゃあ決定ね!おかーさんは仕事で来れないから今回は5人だよ』
『それで、何処で見るのかしら?』
『悪琉さんの家が大丈夫なら悪琉さんの家が良いんじゃないでしょうか……』
『俺の家は全然問題無いぞ、スクリーンもあるしな』
『それじゃあ、悪琉の家で集合ね!』
『時間は何時にしますか?』
『折角だし一日中遊びたいから、皆が可能なら9時位がいいな』
『俺は大丈夫』
『私も大丈夫ですよ♪』
『私も大丈夫ね』
『私もです』
そんなやり取りを終えた後俺はご飯を食べて風呂に入って眠りに着いた。
◇
「ふわぁー」
時計を見たら時刻は8時だった。
「思ったより寝ちゃってたな」
俺は顔を洗たりご飯を食べたりしてある程度身支度を整えた後、冷蔵庫を開けた。
「うわ、飲み物切れかけじゃん……」
これじゃあ今日皆が来たら途中で足りなくなるな……
仕方ない……集合時間まで後10分しか無いけど買いに行くか。
合鍵は渡してあるしLIMEで連絡だけしておけば入って待っててくれるだろう……
俺はそう思いLIMEをした後外に出た。
俺が家をでて道路に出た瞬間声を掛けられた。
「おい!そこのお前……止まれよ」
俺が振り向くとそこには俺と同じ位の身長のチャラそうな男……斎藤原斗が居た。
てか、なんか滅茶苦茶驚いてるし……
神谷に何か言われたのか?
でもだったら何で俺を見て驚いてんだよ……
訳分からないな……
見たところ一人っぽいな……だったら少し話してみるか。
「またお前か?今度は何の用だよ……」
俺は明らか不機嫌そうにそう言った。
「はぁー、何でこうなるんだよ……よりにもよって」
「は?何の話だよ」
「一応聞くけど……お前彼女居るのか?」
何だコイツ?やっぱり神谷関連だよな……
「居るからなんだよ」
「はぁー、お前だからはっきりと言うが、俺はお前に女を無理矢理奪われたってやつに頼まれてお前をボコす為に来たんだよ……でも俺はお前とは関わりたく無いんだよ……だから少し話さないか?」
もしかしなくても神谷に頼まれたんだな……
この感じだと俺って事は知らされて無かったのか?
よりにもよって斎藤原斗を利用しようとするとはな……後が怖く無いのかあいつは……
いや……俺が抵抗する間も無く負けるって思ってるのかもな……
まぁ、実際の所は分からないけど。
もし問題がありそうなら真理から貰ったボタンを押さないとだな。
斎藤原斗が馬鹿じゃない事を祈ろうか……
「勿論俺はお互いの同意で彼女になって貰ったし、無理矢理なんて事は絶対にあり得ない。これを聞いてどうするんだ?信用出来るか?」
「それは……」
斎藤が俺の質問に答えようとした時、横から遮るように大きな声が聞こえた。
「あああーーー!!!!悪琉!!!」
横を向くと少し離れた所に春香、愛、沙羅が居た。
そして駆け足で三人は近づいて来た。
「悪琉君大丈夫?何もされてない?」
沙羅が俺にくっつきそう言って、春香と愛が俺の前に出て、斎藤の事を睨んだ。
しまったな……これは流石にボタンを押さないとな……三人が居たら話は別だ……
そう思い俺がボタンを押した時。
「はぁ、何となく分かったよ……」
斎藤原斗は何故か呆れたようにそう言った。
悪意は感じないが……
何を考えているのかマジで分からん……
「斎藤……マジで意味が分からないぞ……何がしたいんだ?」
俺はとりあえずそう言いながら愛と春香と沙羅を俺の後ろに寄せた。
「ひとつそこの女子三人に質問して良いか?」
「は?まぁ、それ位なら良いか?」
俺がそう聞きながら三人の方を見たら三人はゆっくりと頷いた。
「三人はコイツと付き合う直前に彼氏はいたか?」
「は?いる訳ないでしょ!!!悪琉が初めての彼氏よ!!!」
「私もそうよ……意味分からない事言わないで貰える?不愉快よ」
「私も初めてが悪琉君です!!!」
三人がそう言うと斎藤は更に深くため息をついた。
「じゃあ、一応聞くけど、君たちの幼馴染と付き合ってたとかは無いんだな……」
「そんな訳無いじゃないですか!!!」
「何回でも言うけど私達は皆悪琉が始めてよ、あんた何を言ってるのよ」
「もういいでしょ?私達はこれから用事があるの!どうせ傑に何か言われてきたんでしょ!!!もし私達と付き合ってるみたいな事を言われてたらそれは騙されてるだけだよ!!!」
それを聞いた斎藤は何処か違う所をを見てからこちらに視線を戻した時、一気に目つきが鋭くなっていた。
三人はそれを見てびっくりしていた。
「あぁ、すまん……ちょっと、騙されてたみたいでイライラしてたわ……今日来たのは忘れてくれ、俺は二度とお前らとは関わらないからさ……」
斎藤は明らかに切れている様な声でそう言って歩いて行った。
「あれ……大丈夫か?」
「騙されたって明らかに傑の事よね……」
「何を言われたのか分からないけど多分そうだね……」
「はい……」
これ、俺達が何もしなくても神谷は痛い目に合うんじゃ……
あの様子だと腕の一本は折られるんじゃないか……
あんなのでも一応幼馴染だし、三人的には大丈夫なのか?
「なぁ、三人とも……」
「大丈夫よ……悪琉」
「そうだよ、今回傑は痛い目に合うべきだよ」
「そうです、もしかしたら悪琉君が大変な目に合っていたかも知れないんです……傑君が同じ目に合っても自業自得ですよ」
三人がそう言った時だった、真理の家の車が来た。
車から降りて来た真理は凄く笑顔だけど何処か怖く感じた。
「えっと、どうしたんだ真理」
「さっきの一部始終を聞かせて頂きましたが悪琉さんから詳しい話を聞きたいです、いいですよね?」
「どうやって聞いたんだ?」
「それだったら私が真理ちゃんと電話してたんだよね……それでそのまま切らないで悪琉の所に行ったからだね」
「それより、私も悪琉君から初めから全部聞きたいです……」
「そうね……」
「それじゃ、とりあえず中に……」
「いえ、いいです、敷地内に入れば誰にも邪魔にならないだろうし、今話して下さい!」
真理がこんなに怒ってる姿を見るのは初めてだな……
「えっと、じゃあ話すよ……」
そうして俺は斎藤と会ってからの事を話した。
「てことはやっぱり傑に言われて悪琉の事を襲いに来たのね……」
「最低ね!!!マジで何なの!!!!」
「……」
まぁ、斎藤が馬鹿じゃ無かっただけマシだっただろう……
「ふふふ、すいません、私はちょっと用事が出来たのでここで失礼しますね」
用事って……何をすることやら……
「えっと、ほどほどにな?」
「はい……悪琉さんをボコボコにする為に来たんですよ?……まぁでもほどほどに罰を与えてきますね……」
そう言って真理は車に乗って何処かに行った。
「えっと、どうする?」
「はぁ、正直気分悪いし、ホラーの気分じゃないわね……」
「私も……」
「そうだね……今日は皆解散しようか……真理ちゃんが動いてくれてるのに私達だけ遊ぶのも申し訳ないし」
それもそうだな……
「それにしても真理は何をしようとしてるんだろうな……」
「分からないわ……でも真理ちゃんが何をしようと私は止めないわ。今回は流石にやり過ぎね……悪琉じゃ無かったら絶対に大変な事になってただろうしね」
「然るべき罰は受けるべきだよね」
「そうだね、傑の両親に申し訳ないとか思っている場合じゃ無いねこれは」
そうして俺達は微妙な空気のまま解散した。
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