79話 神谷傑への清算
★斎藤原斗(side)
「チッ!傑の奴、確認までして信じてやったのに、クソみたいな嘘ついて俺を利用しやがって……」
マジで気分悪い……
いざ会ってみたら相手が佐野とかマジでふざけてる。
あいつに喧嘩を吹っかけて負けてからは、アイツに近づかない様に意識してたのに……
傑には悪いが、佐野に会いに来た理由を話させてもらった。
それでも傑と約束したからもし本当に佐野が幼馴染とやらを無理矢理奪って居たら、負ける覚悟で喧嘩する予定だった。
でもあの女達の目と態度を見れば誰でも分かる。
どう考えても無理矢理とかじゃなくて、本気で佐野に惚れていた……
それも軽い気持ちには見えなかった。
それに傑の奴……俺が話している途中に逃げやがって……
自分にマズい状況になってビビったのか……
そりゃそうだよな、あの幼馴染の女たちがあそこまできっぱりと傑との関係を否定したんだからな……
最悪な気分だ……騙されたて利用された事もイラつくのに、よりにもよって佐野と関わっちまうなんて。
覚えてろよ……絶対にケジメつけさせるからな……
腕の一本くらい潰さないと気が済みそうに無いな……
騙されて利用されそうだったんだ、それでも優しい方だぞ……感謝しろよ……傑。
俺はそう思い、仲間たちに傑を捕まえるように連絡した。
◇
★神谷傑(side)
とうとうこの時が来た。
斎藤が佐野を見て声を掛けに行った。
俺は斎藤に言われた通り物陰に隠れて待っていた。
「おい!そこのお前……止まれよ」
「またお前か?今度は何の用だよ……」
ん?またってどういう意味だ?
斎藤の顔はここからだと見えないからどんな顔をしてるのか分からない。
でも佐野の野郎は明らかに不機嫌そうだ。
いいぞ!もっと不機嫌になってしまえ。
「はぁー、何でこうなるんだよ……よりにもよって」
「は?何の話だよ」
「一応聞くけど……お前彼女居るのか?」
「居るからなんだよ」
あんなにハッキリと……クソ!イライラする。
早くやってくれ斎藤!!!
「はぁー、お前だからはっきりと言うが、俺はお前に女を無理矢理奪われたってやつに頼まれてお前をボコす為に来たんだよ……でも俺はお前とは関わりたく無いんだよ……だから少し話さないか?」
は?何で言っちゃうんだよ……
ていうかそんな奴と話さなくて良いだろ……
まぁ、いい……その代わり思いっきりボコボコにしてくれよ……それでチャラだ。
「勿論俺はお互いの同意で彼女になって貰ったし、無理矢理なんて事は絶対にあり得ない。これを聞いてどうするんだ?信用出来るか?」
「それは……」
んな訳ないだろうが!!!
無理矢理以外にあいつらがお前の近くにいる理由がないだろうが!!!
斎藤もグズグズしないで早くボコボコにしろよ!!!
話す意味無いだろうが!!!
「あああーーー!!!!悪琉!!!」
は?何であいつらが……
よりにもよってこのタイミングで……
くそ!佐野にくっつき過ぎだろ沙羅!!!
それに愛と春香も何で斎藤を前にして佐野を庇うんだよ!!!
「はぁ、何となく分かったよ……」
分かったって何がだ……
「斎藤……マジで意味が分からないぞ……何がしたいんだ?」
「ひとつそこの女子三人に質問して良いか?」
「は?まぁ、それ位なら良いか?」
くそ、ややこしくなって来たな……
だから早くボコせば良かったのに……
斎藤がグズグズしてるから……
ん?ていうかこれまずいんじゃないか?
「三人はコイツと付き合う直前に彼氏はいたか?」
その質問はマズイ!!
「は?いる訳ないでしょ!!!悪琉が初めての彼氏よ!!!」
「私もそうよ……意味分からない事言わないで貰える?不愉快よ」
「私も初めてが悪琉君です!!!」
不愉快って、そこまで言うか……
「じゃあ、一応聞くけど、君たちの幼馴染と付き合ってたとかは無いんだな……」
「そんな訳無いじゃないですか!!!」
「何回でも言うけど私達は皆悪琉が始めてよ、あんた何を言ってるのよ」
「もういいでしょ?私達はこれから用事があるの!どうせ傑に何か言われてきたんでしょ!!!もし私達と付き合ってるみたいな事を言われてたらそれは騙されてるだけだよ!!!」
クソ!もうだめだ、嘘もバレて春香達にも斎藤を使った事がバレた……
何でだ……何で上手く行かない……どうして……
「クソ!クソ!クソ!クソッッッ!」
俺はただただ走って逃げていた。
◇
「やばい、やばい、やばい」
あれから1日が経ったが状況がヤバい!
俺は今斎藤達に探されている。
LIMEもめちゃくちゃ来てるし……
マジでヤバい……家は張られてるだろうし。
昨日はネカフェで泊まって何とかなったが、手持ちに余裕が無い……
クソ!誰か頼れる人は……
そうだ!暫くは佐藤か坂口に匿って貰おう!
『坂口ちょっと匿ってくれ!!!!!』
『はぁ?ふざけるなよ?お前自分が何したか分かってんのか?』
『は?何の事だよ!!!』
『もうお前は友達じゃ無いから関わらないでくれ』
『おい、どういうことだよ!!!』
クソ!既読にならない……ブロックされたのか?
意味が分からない!
『佐藤!ちょっと匿ってくれ!!!』
『無理だよ』
『何でだよ……坂口といい何でそんな事を言うんだよ!!!』
『お前さ、1年の学年掲示板で晒されてるぞ』
『は?なにがだよ!』
『見ればいいだろ……自分でさ……』
そう言われ俺は掲示板を確認した。
そこには俺が幼馴染達と勝手に結婚すると言っていたり、性行為をしたとでたらめを言った事。
そんな風に春香、愛、沙羅をあたかも自分の物だと偉そうにしていたと……
それに春香を見捨てた事や不良とつるんで佐野を潰そうとしたことも晒されていた。
その他にも細かい所まで晒されている……
皆からは嫉妬で逆恨みしたとか、情けない男とか、最低でゴミ野郎とか酷い言われようだ……
『一体これは……』
『もう無理だよ……だから言っただろ……考え直した方が良いって……』
『いやでも……』
『でもじゃないよ……俺ももう付き合いきれないから……連絡してこないでくれ』
『ちょっと待てよ!!!』
クソ!佐藤にもブロックされたのか……
誰の仕業だ!!!何のために……
「チッ!やっと見つけたぞ!!!」
背後から鋭い声が聞こえて来た。
振り返ると……そこには斎藤が居た……
「さっ、斎藤……」
「てめぇ、俺は確認したよな?嘘ついて無いよなって?」
「うっ嘘なんてついて無いって!!!」
「じゃあ何であの女たちはお前と付き合ってなかったって言ったんだ?」
「それはあいつらが俺を裏切る様な尻軽女だっただけだ!!!」
「じゃあ、無理矢理って話は何なんだよ」
「だからそれも……」
「尻軽女だからってか?」
斎藤は俺が言おうとした事に対して口を挟んで来た。
「そっ、そうだ!!!!!」
俺がそう言った瞬間に腹を殴られた。
「ぐっっ!!!」
「俺は分かるんだよ……そんな軽い気持ちで男を選ぶような女はあんなに真っ直ぐな表情は出来ねーんだよ!!!」
「な……にが……」
くそ!何を言ってんだよ!!
そんなの何で分かるんだよ!
どうせ適当だろ?普通わかんねーだろ……
「あの女達を最初に見た時に大体分かったんだよ、どうせ幼馴染が他の男を好きになって嫉妬したんだろう」
「何故……それを」
「そんなの別に珍しい話じゃねーんだよ!それにお前のせいで佐野に目を付けられたじゃねーか!!!」
「ど、どういう意味だ……」
「お前は知らなくて良いよ、どうせもう関わる事も無いしな……まぁ、俺を騙して利用しようとした事のケジメを付けないとな」
は?何の話だよ……
「ケジメ……」
「あぁ、腕一本折らせて貰うぞ……」
は?ふざけるなよ!
ただ佐野を潰して貰おうとしただけだろ……結果的に何も無かったが別に斎藤は被害受けてないだろ!!
「ふざけるな!」
「あ?」
「ひぃ……」
斎藤は今までにない位冷たく鋭い目で睨んできた。
俺は体全体から冷や汗をかいた。
「おまえさぁ、自分の立場分かってんの?俺が喧嘩して相手をボコしてる所を見てただろ?」
「そ……それは……」
「その上で俺を騙して利用したんだろ?それなりの覚悟あんだよな?俺は善人じゃねーんだぞ?」
「……」
ヤバい。
声が出ない。
斎藤はマジでやる。
「俺は何回も言ってたよな?裏切り者は嫌いだって。これは立派な裏切りだぞ」
「っ……」
「もう話せそうに無いな、漏らしてるし……だせーよお前……自分の惚れた女も手に置けてないし、その上自分は陰に隠れて他人に任せるとか……」
そう言われ自分の下半身を見たら生暖かく濡れていた。
「それじゃあ、歯を食いしばれよ」
そう言って斎藤は拳を振り上げた。
「やっ、やめろぉぉぉーーーー!!!」
「あーあ、抵抗するから必要以上に殴っちまったな……まぁ、どうでもいいや」
「く……あ……」
何で俺がこんな目に……
俺は薄れ行く意識の中そう言って何処かに行く斎藤を見ながら意識を失った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます