74話 神谷家
★神谷 燈子(side)
香織さん達との話し合いが終わった後、私と学さんで話していた。
「一体どうして……」
「少し甘やかしすぎたか……」
私も甘やかしすぎたって言われれば正直否定できない……
昔は優しい子だったけど少しやんちゃな所があった。
それで悪い事をしても私達は余り怒らなかった。
「そうですね……」
「皆と話して見張るって事になったが……本当にそれでいいのか……」
「確かに……愛ちゃん達にこれ以上負担をかけるのは忍びないですね……」
愛ちゃん達は私達に謝っていたが、正直何で?って思った。
話を聞く限り別に愛ちゃん達は全然悪くなかった……
確かに傑以外に恋人が出来るとは思ってもみなかった。
春香ちゃんと沙羅ちゃんに関しては明らかに傑の事が好きなんだと思っていたから……
でもだからと言って付き合っていた訳では無い……だから他の男性と付き合っても浮気とかじゃないんだから別に悪くない……
幼馴染だからといってその関係性がいつまでも続くはずがない……
それも男子と女子となれば尚更だ……
「ねぇ、学さん……」
「なんだ……」
「愛ちゃん達の話だと傑がああなった原因って愛ちゃん達なんですよね……」
「そう言ってたな……」
「だったら尚更愛ちゃん達に頼る訳には行きませんよね……」
「……確かにそうだな……余計こじれる可能性もあるし……何より三人の負担が凄そうだな……」
やっぱりそうですよね……
話し合いの時は混乱していて頭が全く働いていなかった……
今思い返せば愛ちゃん達が私達に気を遣っていたのは明らかだ……
親としては悲しいけど……愛ちゃん達は傑とは関わりたくなさそうだった……
でも傑がした事は女性からしたら本当に許せない行為だ……その為、親だとしても傑を擁護出来ない。
「やっぱり傑と話し合いましょう……」
「そう出来れば良いが……傑が話す気無いからな……」
「それでも話し合わないと……これ以上こじれる事になりそうで……」
と言ったものの、話し合う事でこじれる可能性もある……
でも何もしない訳には行かない……
甘やかしすぎた事がいけなかったなら今からでも直さないと……
「ここ最近傑はお小遣いをやけに貰いたがっているじゃないですか?」
「そうだな……」
「私達は何だかんだあの子のに甘かったから口ではあげないと言っていても結局あげていましたよね……」
「あぁ、あげないと怒鳴ってくるって事もあったが結局あげてたな……」
「何に使っているかは分かりませんが、あの感じだとどうしてもお金が必要っぽいので話し合わないならお小遣いを無くしましょう」
「確かに……それなら行けそうだが……更に怒りそうじゃないか?」
その可能性はありますけど……でもそんな理由で止める訳には……
「ですが……話し合いの席に着かなければ何も変わりません……」
「そう……だな……うん……そうしようか」
「うん……それでは今日の夜でいいですか?」
「あぁ……」
◇
★神谷傑(side)
「なかなかいい感じじゃないか」
俺はいつも通り斎藤達とゲームセンターで遊んだ帰りに考えていた。
演技を始めると決めてから一週間が経ったが思った以上に調子が良い。
落ち込んでいる様子を見せたら直ぐに心配してくれて、斎藤は何があったか聞いて来た。
俺はそこで彼女がちょっとね……って感じで匂わせておいた。
それが効いたのか最近は彼女と何があったのか聞いて来るようになったが俺はあえて教えていない。
斎藤はどうやら、浮気や不倫みたいな事が大っ嫌いらいし……
斎藤の過去に何があったのかは知らんが何故かその事に敏感だった。
「もう少し溜めて信ぴょう性をより高めてから助けを求めれば佐野の野郎をぶっ潰せる」
俺はそんな事を思い思わず笑っていた。
◇
いつも通り家に帰って来て、二階に上がろうとしたら両親が二人で階段を塞いだ。
なんなんだよ……めんどくさい。
「なんだよ……」
「傑……今日はしっかりと話し合うぞ……」
「は?」
急になんなんだよ……てか話し合う事なんて無いって……
「あなたが不良と一緒に居るって事はご近所さんにまで伝わってるのよ……」
「別にいいでしょ……不良とか関係なくない?」
「関係あるわ……だってその人達はカツアゲの常習犯らしいじゃない……」
「俺はやってないし別にいいでしょ」
「そういう問題じゃないぞ!そういう人と一緒に居るって事自体が問題なんだ!」
ッチ!これじゃ埒が明かないな……ていうか話すのめんどくさいし良いか……
「どうでも良いからどいて」
俺はそう言って二人の間を無理矢理こじ開けて階段を上り始めた。
「話し合わないならお小遣いはもう無しよ……」
「は?」
くそ!それは困る……
斎藤とは毎日の様にゲームセンターに行ってる……
お金が無いと一緒にゲーム出来ないし……それに今はもっと仲良くしておかないと、佐野の野郎をボコボコ出来ない……
「ッチ!分かったよ……」
◇
「で……なんだよ」
「傑がそうなった原因は聞かないよ……でもな、今何をどう思っているんだ……」
何をどう思ってるって?
そんなの佐野の野郎を後悔させて三人を取り戻したいだけだが……
斎藤達に関しては基本居心地は悪く無いが、カツアゲだったり頭の悪そうな女が近づいて来る所は好きじゃない……
だから佐野の野郎をボコして貰って三人を取り戻せる事になったら斎藤とは少しづつ会う回数を減らしていずれは縁を切るつもりだ……
斎藤達と一緒にいるせいで佐藤や坂口とは全然遊ばなくなったしな……
「特に何も考えてないけど……まぁ、多分夏休みが終われば、少し落ち着こうと思ってるよ」
そうだ……夏休み前に計画を実行するから、その後は別に何とでもなる……
佐野の野郎を潰せれば何でもいい
「一体……何を考えているんだ……それは素直に安心して良いのか……」
「傑……お母さんたちに正直に話してよ……」
正直に?話したら佐野の野郎を潰すのに協力してくれるのか?
はぁ、本当に面倒くさいな……ストレスが溜まる……
今すぐ怒鳴ってこの場を去りたいが、今お金を貰えなくなるのはまずい……
「本当に大丈夫だって……今は少し遊んでみてるだけだし……」
「本当ね……絶対にお母さん達の信頼を裏切らないって約束できる?」
「え?あ、うん……もういいでしょ……それじゃ部屋戻るから」
それ以上その話はしたくなかったので急いでその場を去った。
(佐野の野郎さえいなくなれば全て元通りに戻るから)
俺はそう小さく呟いた。
◇
★神谷 燈子(side)
傑が部屋から去って行った後二人で話していた。
「どう思いました?」
「嘘もありつつ本音もありつつって感じだったかな……」
「そうですね……でも何も考えていないって言うのは絶対にうそよね……」
「あぁ、何か隠してる感じだったな……」
「変に問い詰めて問題を起こされても困りますしね……」
「そうだな……」
はぁ……結局私達では何も出来ないのかな……
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