66話 悪琉、愛の両親と話す


 俺は今愛のご両親に挨拶をする為に愛の家に向かっている。

 

「ふぅー、緊張するな……」


 愛は大丈夫といっていたけど、やっぱり気合を入れ直して行こう!

 

「てか、愛の家は初めて行くな……」


 愛と言うか、七瀬家以外の沙羅や真理の家にも行った事無いな。

 沙羅はタイミングを見てと言っていたからまだなのだろうが、真理の家には早く行くべきだな。

 今度真理に言ってみるか。


 そんな事を考えていたら愛の家の近くに着いたいた。


「スマホのマップだとここら辺だな」


 お!ここだな。

 ゲームで見た所と全く一緒だしな。


 スマホの時計を見ると、まだ16時30分だった。

 家に尋ねる時間は17時だったが、遅れる訳には……と思い早く来ておいた。

 早すぎてもまずいかも知れないから、一応愛に連絡するか……


『愛、30分早く来ちゃったけど大丈夫か?』

『え?今家の近くに居るの?』

『あぁ、一応な』

『それだったら、インターホンを鳴らしてくれれば大丈夫よ、私も今伝えて来るから』

『分かった、じゃあ行くな』

『えぇ』


 (ピーンポーン)


 俺は愛の家の前まで来たのでインターホンを鳴らした。


「いらっしゃい、悪琉」


 愛は少し恥ずかしそうに迎えてくれた。

 愛の後ろには父親と母親が立っていた。


「お邪魔するね、愛」


 俺は愛に笑顔でそう言った後、真剣な顔で愛の父親と母親に挨拶をした。


「愛のお父様とお母様、愛から話は聞いていると思いますが、私は佐野悪琉と申します……本日は家にご招待頂きありがとうございます、是非よろしくお願いします」


 俺がそう言うと、愛の母親は真剣な顔だったが少し表情が緩んで口を開いた。


「悪琉君、前に言った事覚えている?」


 えっと、愛を大切に思っているって話だよな……

 愛は何の事?って思ってるのか。首を傾げていた。


「はい!勿論覚えているし、今はその時よりもその気持ちが更に大きいです!」

「そう、分かったわ、今日はよろしくね」

「はい!よろしくお願いします」


 そして父親が話した。


「うん、聞いていた通り真面目な子だね……玄関で話すのも申し訳ないし、是非中でゆっくりしていってくれ」

「はい!ありがとうございます」


 そう言って家にあげて貰った。

 愛はいつもより静かでちょっと恥ずかしそうだ。

 恋人を連れて来る事なんて初めてだろうしちょっと気恥ずかしいのかな。


 俺の隣に愛が座って、向かいに父親、その隣が母親という形で席に着いた。


「それじゃあ、私達も自己紹介するわね、私は愛の母親で矢野恵よ、悪琉君の話は良く愛から聞いてるから緊張しなくても大丈夫だから」


 愛が良く俺の話をしているなか……俺はそう思って愛の方を向くと、顔を反らされた。

 横顔から恥ずかしがっているのが分かる……親の前だといつもと違った愛が見れて凄い可愛いな


 俺は視線を戻して口を開いた。


「はい!よろしくお願いします、恵さん!」

「えぇ」

「それじゃ、次は俺だな、俺は愛の父親の矢野啓二だ、よろしくな、悪琉君」

「はい!よろしくお願いします、啓二さん」


 愛のご両親は思ったより歓迎のムードだった。


「悪琉君、結論から言って、私達は悪琉君が愛の恋人になる事は大歓迎よ」

「え?そうなんですか?」


 反対まではされるとは思って居なかったが、大歓迎と言ってくれるのは意外だった。


「そうだ、愛の話を聞いていて、反対する理由がどこにも無かったしな」

「私も勿論同じ意見だから、是非愛をよろしくね」

「は、はい!絶対に幸せにします!!!」


 俺は思ったより簡単に話が上手く進んで気分が舞い上がった。

 愛が話してくれていたからなんだな。

 俺はどんな話をしていたのか気になるが、今は気にしない事にした。


「愛だけじゃ無くて、拓海からの信用もあったしな、悪琉君なら信用出来るよ、初対面だけど今話してみただけでも悪琉君が、信用出来る人だなって感じるしな」

「拓海さんからも話を聞いていたんですね」


 そういえば拓海さんは今まで一回も愛との関係を俺に聞いて来た事無かったけど……俺と愛が付き合ってって知ってるよな……

 てか、今まで意識して来なかったけど、愛と結婚したら、面倒見の良い先輩から、義兄さんになるのか……

 何て言うか……ちょっと気まずいな……


「でも一番の決め手は、愛が悪琉君の事を話す時の顔が凄く幸せそうだからだけどな」

「ちょっと、ずっと黙って聞いてたけど、それは言っちゃいけないやつよ!!!」


 啓二さんの発言に、恥ずかしさが限界になったのか顔を真っ赤にして啓二さんに向かって言った。


「ははは、すまんすまん」

「もー、流石に恥ずかしいから少し落ち着かせて来るわ」


 愛はそう言って早歩きで部屋を出て行った。


「いやーでも本当にありがとう、悪琉君、愛があんなに表情豊かになったのは悪琉君のおかげだよ」

「いえ、俺は別に何も……」

「そんな事ないわよ、愛が高校に入ってからどんどん変わって行ったのは生まれてからずっと一緒にいた私達からしたら一目瞭然だからね」

「そうですか……だったら良かったです」

「だから愛を幸せにしてあげてね」

「はい!勿論です!!!」


 そんな会話をしていたら愛が帰って来た。


「ふぅー、じゃあ、お父さんとお母さんも悪琉の事を歓迎するって事でいいのね?」

「そうね」

「あぁ、勿論そのつもりだ」

「そっか……ありがとう……」


 愛は照れくさそうに俯いてそう言った。


「いやー、それしても愛が恋人を家に連れて来る日が来るとはなぁー」

「お父さん、恥ずかしくなるような事言わないでよ」

「だってまさか愛の恋人が傑君じゃない事もびっくりなのに、こんなイケメンだとは思わなかったしな」


 傑……その名前を聞いただけで愛は明らかに動揺していた。

 頬がぴくぴくしているし気まずそうな表情になった。

 啓二さんはガハハハッと笑っていて愛の顔を見ていないから気付いていないが恵さんは愛の顔を見て何かを感じたのか啓二さんに言った。


「ちょっと、今他の男性の名前を出すのは少し無粋でしょ?」

「そ、そうだよお父さん……」

「そうか?それは済まなかった」

「いえ、俺は大丈夫ですよ」


 俺達はその後一緒に夕食を食べた。



 夕食の片付が終わった後愛がもじもじして聞いてきた。


「……ねぇ、悪琉……」

「どうした?」

「……今日悪琉の家に行って泊まっても良い?」

「あぁ、勿論……」

 

 それを聞いて緊張した表情をしていた愛は安心した表情に変わった。


「そっか……なら私はお父さんとお母さんにそう言ってくるわね」

「分かったよ」


 今日挨拶を済ませたばかりだけど大丈夫かな……


 暫くして愛が帰って来た。


「よし……それじゃあ今から悪琉の家に行きましょう……」

「えっと、ご両親は何て……」

「その……私が連れて来た時点で何となく分かっていたみたいよ……」

「てことは大丈夫って事か?」

「えぇ、お父さんとお母さんは悪琉が本気で私の事が好きなんだって判断したって……」


 そっか……伝わってたら良かった……

 ご両親の許しを得たんだったらもう何も迷う必要無いな。


「よし!じゃあ、俺の家行こうか」

「……そうね」


 愛は頬を赤く染めて小さく頷いた。

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