65話 神谷傑の愚かな思考

★神谷傑(side)


 俺は最近は斎藤原斗達のグループで一緒に居る事が多くなった。

 そのせいか、両親が凄くうるさい。

 余りにもごちゃごちゃ言って来るので帰るのも嫌になって外を出歩く事が多くなった。


 家に居るのが億劫になったので、もうすぐで暗くなって来る頃だが、今日もまた散歩をする事にした。

 金髪にしてから、周りの人からちょっと見られるようになった。

 やっぱり不良っぽい見た目が人気なのか?

 だから愛たちも……


 俺は斎藤に女を何人か紹介されたが、斎藤のグループに近づく女は例外なく、ビッチで数え切れないほどの男性と関係がある奴ばっかりだ。

 それに見た目が悪い訳では無いが、俺には三人の幼馴染がいてそれと比べたら全然だめだ。

 確かに興味はあるが、沢山の男性に抱かれている女性を抱くのは、普通に気持ち悪くなる……勿論春香は例外だが……

 ていうか、幼馴染達が可愛すぎて、いつの間にか他の女性に興味が湧かなくなっていた。


 それもあり、三人は絶対に取り戻さないと……

 斎藤を利用して取り戻そうとか思っていたが、斎藤は女性に対しては意外と優しかった。

 だから三人を手に入れたいと言っても協力してくれない気がする……

 

 俺はとにかく三人が欲しい。

 仮に春香だけじゃなくて、沙羅や愛もあいつに処女を捧げていたとしても、この際許そう……

 本当は想像するだけでも吐きそうになるが、今はそう思わないとやってられない。

 そういう想像をして、もう既に何回何十回も吐いているし……


 それに佐野の野郎の絶望した顔が見たい……

 俺から全てを奪っておいて平気な顔をしているクソ野郎だ。


 俺はどうやって三人を取り返して、佐野の野郎の絶望した顔が見られるのかを考えながら歩いていたら、目の前を人が通った。


 俺は目を奪われた……そこに居たのは見たことない人で、幼馴染達にも負けていない……

 俺はここの中で理解した。


 これが一目惚れっていうやつか……


 今までの俺だったら見ているだけで終わっただろう……

 しかし、今の俺は前とは違う。

 その瞬間だけ俺は先程まで考えていた幼馴染達の事を忘れて、前を通り過ぎて行った美しすぎる女性に声をかけたいた。


「ねぇ、君……暇だったら遊びませんか?」


 俺は斎藤達みたいに声を掛けようとしたら緊張して後半、敬語になってしまった。

 女性がこちらを見た……近くで見るとびっくりするほど可愛い……

 そんな時女性は明らかに機嫌悪そうに口を開いた。


「はい?何でですか?」


 可愛いはずの女性の目は凄く冷たく、圧があって少しびっくした。

 俺はどうしようか迷ったがとりあえず頭に浮かんだ言葉を言った。


「いや、凄く可愛いなって思ったからさ……はは」


 俺がそう言うと女性は怪訝そうな表情になった後に言った。


「そういうのは、興味ないんで大丈夫です」


 そう言われ、離れようとしていたので、俺は斎藤の名前をだした。

 この名前を知らない人はこの辺りにはいないだろう……

 そう思っていたのだが、予想とは違う返答が帰って来た。


「そうですか。私はそんな人に興味無いので失礼しますね」


 女性はそれだけ言ったその場から去って行った。

 俺は数秒間だけフリーズした後、去り行く女性を見て何かを言っていた気がするが、余り覚えていない。



 俺は家に帰って来て考えていた。


 あの女性は一目見ただけで、春香や愛、沙羅と同じ……いやそれ以上に心を奪われた……

 今頃あの男と仲良くやって俺を裏切るような奴らより良いに決まってる……

 

 でも今まで見たこともない人って事はこの辺に住んでいないって事だろう……

 いくら思っていても会うことすら難しいと思うし……名前位聞いておけば良かったな……

 また会う事があればその時は運命だと思ってアタックしよう……


「傑……」


 ドアの前から母親の声が聞こえた。

 そう言えば親が余りにもしつこいから今日話し合うっていったんだったな……


 俺は階段を降りてリビングに向かった。


「傑……何かあったのか?」


 父親が口を開いた。


「何にもないけど?別に髪を染めただけじゃん……校則で禁止もされて無い訳だしさ」

「それはそうだが……何て言うか……最近明らかに様子がおかしいぞ」

「そうよ……悩み事があるなら私達に話して頂戴……力になってあげるから……」


 俺はそれを聞いてイラっとした。

 悩み事を聞く?力になる?

 話した所で二人に何が出来るんだ?

 春香と愛と沙羅を取り返せるのか?

 無理だろ……

 俺はそう考えたら、無性にイライラした。


「大丈夫だって言ってんだろ!!!大体あんたらじゃ何も出来ないんだよ!!!」


 俺はそう怒鳴って部屋に戻った。


「はぁー!イライラする……」


 俺は両親と話して斎藤に出会ってからちょっと落ち着いていた心が暴れ出した。


「大体全部あいつが悪いんだ……佐野の野郎さえいなければ……」


 佐野に対してのどす黒い気持ちがどんどん沸いて来た……


 そうだ……そうすればよかったんだ……


「ははははは!!!」


 斎藤を使って春香達に何かをするのが無理でも、佐野をどうにかしてもらえばいいじゃないか……

 斎藤は不良でもかなりの仲間想いな奴だ……佐野に恋人を奪われたとでも言えば絶対に手を貸してくれるはずだ……


 そうだ、絶対に協力して貰う為にも、少しづつ元気をなくす演技をして信憑性を高めよう……

 そして、夏休みが終わる少し前位に、協力してもらおう……斎藤は体の関係は持っても、やけに男女関係には慎重だ……


 佐野さえどうにか出来れば、愛たちも自ずと戻って来るんじゃないか?


 俺は絶対に行ける!何でこんな簡単な事を思いつかなたったのか、そう思ってワクワクが止まらなかった。


 これでくそ野郎の苦しむ顔がみれる……

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