64話 神宮寺真理が動く

★神宮寺真理(side)


 話し合いが終わった後、私は考えていた。


「正直困りましたね……」


 はっきり言ってしまえば、皆の悩みの種の彼を権力を使って排除……って言い方は少し大袈裟だけど、遠くに引っ越させるのは簡単だ。

 でも皆は彼の親が心配らしい……まぁ、今の彼はどうしようも無いけど、彼の両親が良い人って言うのは私も分かってはいる。

 まぁ、私も権力を使ってそんな横暴なやり方はしたくありませんが……

 そんな事もあって今私が出来る事が余り無い……


 三人が言っていた不良の斎藤原斗って言う人も初めて聞く名前だ……

 悪琉さんに喧嘩を売って返り討ちに在った間抜けだから大した人じゃないとは思うけど……

 今は明らかに不確定要素が多すぎる……


「よし!悪琉さんと愛ちゃんが関係を進めている間に私は少しでも情報を集めましょう!」


 今一番知る必要があるのは、神谷って人がどんな動きをしているか。

 そして、斎藤原斗がどんな人でどんな事をして、悪琉さん達に被害を加える可能性があるのかって事だ。


 明日私は春香ちゃん達がその人達を見たって場所に行って自分で調査しよう!

 頼めば良いんだけど、今回はどうしても私自身で調査して判断したい。

 話を直接聞いて新たな疑問も生まれて来るだろうし、何回も調査するより私が自分でした方が早い。

 その後にその裏付けをする為に頼むのが最短だろう。

 それに、斎藤原斗の家庭についても調べて欲しいから、今はそっちをお願いしたいしね。


 勿論危険が無いように、邪魔にならない程度の距離に超優秀なボディーガードを待機させるから、何か問題が起きるって事もないしね。

 不良と言っても学生だ……流石に何年何十年もプロのボディーガードをやっている人達に手も足も出るはずがない。


 私はその事を皆に伝えた。

 皆びっくりする位心配してくれていたけど、プロのボディーガードが何人もいるから絶対に大丈夫と言ったら安心してくれた。

 それに、悪琉さんと愛ちゃんもこれで安心して明日を迎えれるでしょう。



 私はあの不良たちが良く居ると言われている付近に来た。

 今頃悪琉さんと愛さんは楽しく出来ているでしょうか?

 

「とりあえず私は聞き込みでもしましょうか」


 ていう事で私はここらに住んでいる人達に斎藤原斗の話を聞きいた。


 その結果として、確かに評価は良くありませんでした。

 女性をしょっちゅう連れ回してるし、見る度に人が変わってるとの事だった。

 でも不思議と、女性関係のトラブルみたいな物はほとんど聞かなかった。

 

 たまたま過去に斎藤原斗と体の関係があると言っていたギャルの女性に話を聞く事になった。

 最初は言うのを渋っていたのですが、情報料を渡すと言ったらあっさり教えてくれました。


 彼女曰く斎藤原斗は女性に対しては決して暴力を振るわないし、仲間たちも同じらしい……

 無理に迫ったり、脅したりはしないで断られたら違う人を探すと言っていた……

 そして、お互いに割り切って関係を持てる人しか捕まえないらしい……

 たまに、割り切った関係だったのに女性の気が変わって惚れられる……みたいな事があったりはするらしい。


 ギャルの子も好きな人が出来たからって言ったら、何を言われる訳でも無く関係を切れて、今はその好きな人と付き合ってるらしい……

 

 女性関係の結論としては、女癖は良く無いが、批判されるような事はしていないって事だ。


 次は暴力やカツアゲ関係だけど……それは本当らしい。

 

 斎藤原斗はどうやら相手の強さは関係なく、気に食わない人に喧嘩を売って、斎藤原斗が勝った人にはカツアゲをしているらしい……

 売られた喧嘩は絶対に買って、その人達からは多めにカツアゲをする、そんな感じだ。

 と言っても、斎藤原斗が負けたのは悪琉さんだけと言う話も聞きました。


 悪琉さんをどう思っているのかは流石に分かる人は居なかった。


 そして、仲間には優しい。


 どこまでが本当の情報で信用出来るかは、改めて確認する必要があるけど何人も同じような事を言っていたので割と信用出来そうだ。

 一応、私が得た情報を更に信用を持てるように、後日に確認を取って貰おう……


 今日得た情報だと……春香ちゃん、愛ちゃん、沙羅ちゃんに手を出す可能性は限りなく低い。

 まぁ、それは斎藤原斗の話であって神谷って人はどうか分からない……



 私は調査を終えて家に帰ろうとしていた時、後ろから話しかけられた。


「ねぇ、君……暇だったら遊びませんか?」


 私はナンパかぁ、と思い振り返ったら……まさかの神谷だった。

 私は思わず右の唇が引き攣った。

 この人はナンパまでする様になったのか?

 皆の話しだと、一週間前までは不良と関わって無かったんでしょ?

 てか、春香ちゃんと愛ちゃんと沙羅ちゃんの事が好きなんじゃ……


 ん?もしかしてもう諦めた?

 いや、分からない、てか私が考えた所で分かる訳がない……だって私はこの人の事……いや、悪琉さん以外の男にマジで興味ないし。


 この人は話を聞いていたからか、他の男性より更に嫌悪感を感じる……


 てか、何で少し顔赤くして照れてるの?ナンバして照れる位ならしなければいいのに……


「はい?何でですか?」


 私は明らかに不機嫌そうにそう言った。

 そんな私を見てボディーガードの人達が動きそうになったが、私がハンドサインを出して停止させた。


「いや、凄く可愛いなって思ったからさ……はは」


 ナンパする位なのに何でちょっと自信なさそうなんだろう?


「そういうのは、興味ないんで大丈夫です」

「えー、俺斎藤原斗の友達だけどさ、一緒に来たら遊べるよ?」


 は?人の名前使ってナンパって……ダサすぎるでしょ……

 それって脅しのつもり?

 斎藤原斗なんて一ミリも怖く無いっていうか、どうにでも出来るんだけど……

 てか何その顔……そんな下心丸出しでニヤついて……

 私は元々悪琉さん以外の男子に嫌悪感を抱く体質だけど、今この瞬間は今までにない位に寒気がしていた。


「そうですか。私はそんな人に興味無いので失礼しますね」


 私はそう言って立ち去った。

 後ろであいつがまだ何かを言っているようだったけど、何一つ耳に入って来なかった。

 そんな事より吐き気が凄くて早く帰りたかった。



 私は家に帰った後、斎藤原斗の家庭事情について調べて貰った事を聞いた。


 まず、彼の家は両親との仲が特別悪い訳では無い。

 しかし、両親はお互いに他の異性と遊びまくっているそうだ……

 それもお互いが公認している……

 

 この世界では女性が結婚しているのに他の男性と関係を持つのは、かなり重い罪なのだ。

 父親にしてもその遊んでいる相手と結婚すれば?と思うかも知れないが……その相手達も夫がいるらしい……

 色々と滅茶苦茶過ぎる……


 こんな環境で育った斎藤原斗が不良になるのも何もおかしくない……

 少し同情はするけど、だからと言って助けるとかはしない。

 それに今の悪琉さんに手を出すようなら容赦はしないし、簡単に家族を潰せる情報がある……

 まぁ、斎藤原斗が自分の家族が潰されると聞いてもダメージがゼロの可能性もあるが、その時は遠くに行って貰ってこの辺りには二度と近づけない様にしようか。


 出来れば斎藤原斗の家族には関与したくない思いもある……彼の両親の情報をばらまいたら、一体何個の家庭が壊れるのか……想像に難しくない……


 まぁ、今日の結果をまとめると……


 斎藤原斗は悪琉さんに対して何かをする可能性はあれど、春香ちゃん達に何かをする可能性は限りなく低い。

 斎藤原斗はお偉いさんとかに繋がりがある訳でも無いので、対処するのはかなり簡単。

 ナンパ君は気持ち悪いって事。

 初めて会って分かったけど、不良の仲間入りして強くなったと思っているのかも知れないが、私と話している時に明らかに小者感が凄かった。

 しかし、ナンパ君の事は今は春香ちゃん達に任せるしかないから放置するしかない。


「今日の成果としては十分ですね」


 これ位の情報があれば皆も少しは安心できるかな……

 今日は悪琉さん達の事を考えて共有するのは止めよう。


 私はため息をついて呟いた。


「悪琉さんと愛ちゃんは上手く行ったのでしょうか……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る