61話 夏祭り(下)

★神宮寺真理(side)


 私は春香ちゃんと沙羅ちゃんがこちらを見ていたのに気付いて何をしているんだろうと思い聞きに行く事にした。

 悪琉さんも何か知っていそうでしたしね。


「えっと。春香ちゃんと沙羅ちゃんは何をしているんですか?」


 私は二人に近づきそう言った。


「えっと、そのー……」

「春香ちゃん……バレちゃったらしょうがないよ……真理ちゃんには話そう」

「そうだね……」

 

 何の話しだろう?


「実はね……」


 私は沙羅ちゃんから二人が離れていた理由を聞いた。

 なるほど、そう言う事か……

 それだったら私も協力するのに……


「私も協力しますよ、愛ちゃんの為に」

「いいの?だって真理ちゃんも」

「大丈夫ですよ、第一私はそういった事をするにしても3人の後って決めていましたし」


 これは本当だ、両親は婚約者だったらそういった行為をしても問題無いといっている。

 勿論避妊は前提ですけどね。

 私は最後に仲間になったんだから三人の後って事を決めていました。

 香織さんは大人だから例外ですね。


「そっか、ならお願いしても良い?愛ちゃんの為に」

「勿論ですよ」

「ありがとう、真理ちゃん!それじゃあ、こうしようよ!」


 沙羅ちゃんは私達に提案した、これから愛ちゃんと悪琉さんが二人っきりになっても違和感が少ない方法を。


「えっと、つまり祭りを楽しみ過ぎて食べ過ぎて動けない私を二人が介護してるって設定にして後から私が限界になって先に帰ったって言うの?」

「そうだよ!」

「えー、それは無理があるんじゃ……」

「いや、春香ちゃん……私が愛ちゃんの立場なら信じるよ……だって小学生の頃と中学生の頃にも1回ずつ同じ事をして私達が家まで送っていったじゃん……」

「ははは、確かにそんな事もあったかも……もー、分かったよ仕方ないなー」

「ありがとうー春香ちゃん!」

「それじゃあ、それで行きましょうか」



 真理を待っていたら真理から連絡が来た。


『春香ちゃんと沙羅ちゃんから計画は聞いたよ♪私は良いから愛ちゃんだけに集中してね♪私達は食べ過ぎて動けない春香ちゃんを介護してるって事にしておいてね♪』


 なんだこれ、食べ過ぎて動けないって……春香ならあり得そうだな……


「なぁ、愛」

「どうしたの」

「今真理から連絡が来たんだけどさ、どうやら春香が食べ過ぎて動けないらしいから沙羅と真理で介護してるから二人で遊んでだって」

「またなのね……春香ったら……」

「まぁ、春香らしいけどな……」

「私達だけ遊んでいてもいいのかしら」

「んー、でも来なくて良いって言われてるしな……」

「来なくてって言われてるのね……」

「うん、楽しんで欲しいからって真理が」

「そう……分かったわ」


 愛は何か思う事があるのか、少し考えてからそう言った。


「まぁ、そういう事だから行こうか」

「そうね」


 それから俺と愛は祭りを二人っきりで楽しんで花火が打ち上がる時間になった。


「綺麗だな、花火」

「えぇ、そうね……」

「愛は毎年花火を見てるのか?」

「そうね、一応毎年見てるわね」

「そっか、これからは俺達と6人でみに行きたいな」

「そうね、来年は香織さんも連れてきましょう、まぁ、今年はほとんど三人だったけど……」

「ははは、皆大丈夫かな」

「大丈夫よ、きっと」

「そうだな……なぁ愛」

「なに?」


 俺は花火を見ている愛の横顔を見ながら言った。


「今日はずっと一緒に過ごさないか?」


 俺がそう言ったら愛はぱっとこちらに振り向いて目を大きく開けていた。

 その後頬が火照って言った。


「えっと、誘ってくれてありがとう、でもごめんね……今日は駄目なの……」

「え?」


 俺はその返事を聞いて、凄くびっくりした。

 愛はまだそこまで俺の事が好きじゃないのかと思って、少し険しい顔になっていたかも知れない。


「あっ、違うの!嫌なんじゃなくてね、私の両親が付き合う事は許すけど、そういった事をするならその前に絶対に両親に合わせるって約束しているの……」

「なるほど……それで」


 俺はそれを聞いて安心と心配の気持ちが迫ってきた。

 果たして愛のご両親に認めて貰えるのか……


「それでね!三日後の日曜日はお父さんもお母さんも休みだからさ……良かったら家に来て会わない?」

「うん、絶対に行くよ……」

「ありがとう、緊張しなくて大丈夫だからね……お母さんには一回会ってるしね」


 厳密に言えば体育祭も合わせて2回だがまぁ、あの時は話してないし1回みたいなものか。


「それでも心配ではあるけどな……認めて貰えなかったらと考えるとな……」

「大丈夫だって……」

「そっか、愛がそう言うなら大丈夫なのかな」

「えぇ」


 俺達は花火を見て暫く無言が続いた。


「ねぇ、悪琉?」

「なんだ?」

「春香達が居ないのってさ……わざとよね?」

「えっ」

「どうせ春香達の事だから私に気を遣ったんでしょ」


 えっと、滅茶苦茶ばれてるじゃん……

 これは騙せそうに無いな……


「えっと、良く分かったな……」

「まぁ、春香が食べ過ぎて動けないまでは信じたけど、私達に来なくて良いは違和感しかないわよ」

「そうなのか」

「そうなのよ、大体そんな事になっているなら尚更私達も行った方が良いに決まってるじゃない……それに悪琉が行かない訳無いし……」


 まぁ、確かにそうなんだけどな……春香が本当に動けなくなっているなら俺は絶対に愛と向かっていただろう……


「でも、皆には感謝しないとね……そのおかげで一歩踏み出せたんだから……」

「そうだな……遅くなってごめんな……」

「もう……いいわよ……そんな事……ねぇ、悪琉……」

「どうした?」


 俺は改めて愛のほうを見た。


 その瞬間唇が温かくなった。


「今日はここまでね……続きはまた3日後ね……」

「うん!楽しみにしてるよ」


 俺がそう言うと、愛は恥ずかしくなったのか顔を赤くした。

 愛はその後一息付いて言った。


「ねぇ、どうせその辺で春香達は見ているんでしょ」

「まぁ、今更隠せないしそうだな……いるよ」

「そう……なら最後は皆でいようよ」

「うん、そうだな」


 俺はと愛は春香達の方に向かった。


「全く変な気を回しちゃって……」

「あはは……」

「ありがとうね、春香も沙羅も真理ちゃんも……」

「大丈夫だって……それに良い感じだったしね」

「ふふふ、そうですね、凄く素敵でしたよ♪」

「ねー、遠くから見ててドキドキしたよ!」

「もぅ……」


 皆に言われた愛は照れていた。


 俺達はその後5人で花火を見て楽しんだ。

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