60話 夏祭り(上)

 夏休みが始まって5日目、明日は夏祭りが有り皆で行く事になった。


 6人のグループLIMEのチャットで話していたのだが、香織さんは来ないらしい……

 理由は皆が高校生の内は高校生だけで楽しんで欲しい……との事だった。

 勿論俺も4人も一緒に行こうと言ったのだが、香織さんは渋っていた。


 皆がもっと詳しい気持ちを聞いたのだが、香織さんは俺が高校生という事を凄く気にしているらしい……

 そんなに気にしなくてもと俺は思うけど、大人からしたら違うのだろう……

 俺がそんな事を思っていたら意外にも沙羅が、「別に一線を越えないのであれば良いと思いますよ?デートやキス位だったら何も問題は無いと思いますけど?」と言った。

 その言葉に他の3人も賛同した。


 その後も話し合って、俺とデートをちゃんとする事、それに夏祭りは許すけど、これから企画している海には絶対一緒に行くと約束して終わった。

 


★相沢沙羅(side)


グループLIMEで話した後、私と春香ちゃんは個人チャットで話していた


『沙羅ち、沙羅ち』

『どうしたの春香ちゃん』

『この夏祭りは愛ちゃんと真理ちゃんに悪琉といっぱい一緒にいれる様にしてあげない?』

『いいね!それ』


 私は悪琉君と肌を重ねた事を皆に報告したのだが、真理ちゃんと香織さんは凄く祝福してくれていた。

 しかし愛ちゃんはおめでとうとは言ってくれてはいたのだが、少し寂しそうだった。

 

『私達は影からサポートする感じでね』

『うん!分かったよ』

『まぁ、流石に5人も居るからお泊りって流れにはならないと思うけどね』

『んーまぁ、確かにね……特に愛ちゃんは明日すぐは絶対に無理だよね……両親の事もあるし……』

『まっ、でもその日が近づくと思えばやる意味はあるでしょ』

『そうだね!でもサポートって何をするの?』

『んー、分かんない!とりあえず私達は夏祭りに行って適当に理由を付けて2人で離れる』

『うん』

『そこからは、その時考える!』


 はは、春香ちゃんらしいな。

 でも5人より3人のほうが話しやすいだろうし悪くは無いかな。


『でもさ、悪琉君は心配すると思うしさ、悪琉君には話しておかない?』

『んーまぁそっか……うん、悪琉には話そっか』

『うん!それが良いと思う』

『それじゃあ、悪琉には私の方から話しておくね』

『分かった!よろしくね春香ちゃん!』




 夏祭りの話し合いが終わって暫くしたら春香から連絡が来た。


『悪琉ー!!!』

『どうした春香?』

『沙羅ちと話したんだけどさ、夏祭りは愛ちゃんと真理ちゃんの相手を集中して欲しいの!』

『愛と真理だけか?』

『うん!私と沙羅ちはさ、もうエッチまでしたじゃん』

『そ、そうだな』

『それでさ、愛ちゃんが少し寂しそうだったんだよ』


 愛が寂しそうか……

 まぁ、愛の方が沙羅より先に付き合ってたもんな……

 タイミング的に沙羅が先になっただけなんだけど……


『なるほど……春香と沙羅はどうするんだ?』

『私達は陰から見守ってるよ!』

『そっか、悪いな……折角の祭りなのに』

『いいんだよ!私達がそれを望んでるんだから』

『分かった、俺もしっかり頑張るよ』

『うん!』


 春香と沙羅は俺が明日愛を誘って欲しいと思ってるんだな。

 うん、頑張ろう!



 夏祭り当日になり俺が集合場所に行くと、浴衣姿の4人が居た。

 当たり前だが4人とも凄く可愛い。


「おまたせ、皆凄く可愛いよ」

「ありがと、悪琉」

「ありがとう!悪琉君!」

「あ、ありがとう」

「ありがとうございます悪琉さん♪」

「よし!それじゃあ行こうか」

「う、うんそうだね、えっとでも、私と沙羅ちはちょっと少しだけ話があるから離れて良い?」

「そういえばそうだったね」


 凄い棒読みだぞ春香……愛と真理が凄い怪しんでるって……

 沙羅もフォローしたつもりなのかも知れないが、同じく棒読みだ……


「どうしたのよ2人もちょっと変よ?」

「確かに……私もそう思います」

「二人は何かしたい事があるって事か?」

「そ、そう!ちょっと二人で行ってみたい所があってね……あはは」

「そうなんだよね、春香ちゃん」

「まぁ、良く分からないけど分かったわ、でも何かあったら直ぐに連絡しなさいよ?」

「「うん!」」


 愛はやれやれって感じで了承したが、真理は未だに怪訝そうだ。


 そんな感じで俺と愛と真理だけになった。


「それにしても人が多いな」

「まぁ、祭りだしね」

「私は余りこういったイベントに参加した事が無いので新鮮で楽しいですよ」

「今思えば俺も小学生振りだな」

「そうなんですね」

「まぁ、余計な事は考えずに今は楽しもうか」


 俺はそう言って2人の手を握って歩きだした。

 軽く辺りを確認したら春香と沙羅が少し離れてる場所でこちらを見守っていて目があったら手でグッドを送って来た。


「愛、真理、まずは金魚掬いでもやろうぜ!」

「いいわよ」

「私もやりたいです!」

「よし!じゃあ俺からやるぞ!」


 そう言って気合を入れてやったが1匹しか取れなかった。


「いやー難しいな、やっぱり」

「次は私がやっても良いですか?」

「勿論いいぞ」

「大丈夫よ」

「それじゃあ行きますね」


 真理は5匹取ったら紙が破れた。


「上手過ぎないか真理……」

「ふふっ、意外と出来ちゃいました♪」

「びっくりしたわね」

「それじゃあ、最後は愛ちゃんの番ですね」

「そうね」


 愛は金魚を3匹取って、紙が破れた。


「愛も上手いんだな」

「真理ちゃんに比べたら全然よ」

「そんな事ないですよ、愛ちゃんも上手ですよ」

「俺は1匹だしなー、二人とも凄いって、まぁ次行こうか」


 俺達は取った金魚を全部返して他の所に向かった。


「悪琉さん、愛ちゃん、私アレがやってみたいです」

「的あてか……いいね、やろっか」

「いいわね」

「今度は私からやってみますね」


 真理は熊のぬいぐるみに向かって何発か撃ったが取れなかった。


「残念です、取れませんでした……」

「ドンマイよ、真理ちゃん……次は私がやるわね」


 愛はそう言って猫のぬいぐるみに狙いを定めて撃ったが同じく取れなかった。


「難しいわね……」

「難しいですね愛ちゃん……」

「よし!じゃあ、俺に任せろ!二人とも!」


 そう言って俺はまず熊のぬいぐるみに狙いを定めて撃つとそれを獲得する事が出来た。

 残った弾で猫のぬいぐるみに狙いを定めると同じく獲得する事が出来た。


「これは真理で、こっちが愛だな」

「ありがとうございます!悪琉さん♪凄く嬉しいです」

「私も嬉しいわよ……ありがとう」

「いいっていいって」


 俺は二人が喜んでくれて良かったと思った。

 ちなみにその時、春香と沙羅は遠くで拍手をしていた。


 俺が春香と沙羅の方を見ていたら真理に気付かれた。

 真理は二人の方を見てから首を傾げて、「ちょっとお手洗いに行って来ます」って言って二人の方に行った。

 俺はしまったと思い、心の中で春香と沙羅に謝罪した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る