57話 沙羅とデート

 今日は沙羅とコラボカフェデートなので俺は早めに待ち合わせ場所に来ていた。


「悪琉くーん」


 沙羅が手を振って小走りで来た。

 見ちゃいけないのについ目が行ってしまう…凄く胸が弾んでいる……

 春香にあんな事を言われた影響もあるだろうが…つい意識しちゃうな。

 いけないいけない、今はちゃんとデートの事を考えないと。


「こんにちは、沙羅!」

「うん!こんにちは、すっごく楽しみにしてたんだよ!」


 笑顔が眩し過ぎる。


「俺もめっちゃ楽しみにしてたぞ!」

「ほんとに!嬉しいな」

「ほんとだぞ!それじゃいこっか」

「うん!」


 今日の沙羅いつもよりハイテンションだな。

 にこにこで本当に楽しみにしてくれてたって伝わるからすげー嬉しいな。


 俺は沙羅と歩いている途中、沙羅の手を握った。

 沙羅はその瞬間ピクって体が跳ねたが直ぐにぎゅって強く握り返してくれた。


 俺と沙羅はその後、電車に乗り込んでコラボカフェまで向かった。


「うわぁー、悪琉君!凄い見て見て!」


 カフェの中に入り席に座ってから沙羅は凄くはしゃいでいた。

 そんな事を思っている俺も少し興奮していた。


「ほんとに凄いな、辺り一面グッズやイラストとかで埋まってるな……」

「うん!非売品の物とかもいっぱいあるよ!」

「とりあえず何か注文しようか、お腹すいたしな」

「うん!そうだね」


 俺達は一緒にメニュー表を見ていた。


「悪琉君、悪琉君!これ見て!これってアニメ版の1話で出て来た宿屋の料理じゃない?」

「おっ、ホントだ!やけに作画が良かったから、夜これ見て凄いお腹空いたの思い出したわ」

「え?悪琉君もなの!私もそうだったんだ」

「やっぱそうだよな!」

「うんうん!悪琉君もなんだね」


 こういう会話ってなんか良いな、前世を含めてもこんなに趣味の話で盛り上がれる人は居なかったからな……

 

「おっ!沙羅これは分かるか?」

「ん?どれどれ」

「これ」

「あ!これってあれじゃん!年下ヒロインで料理が絶望的に下手な子が、主人公の為に料理したんだけど、真っ黒に焦がしっちゃったパンでしょ!」

「そうそう!それで、主人公は焦げたパンを上手いって言って食べたんだよな」「あのシーンでヒロインの子がうれし泣きして抱き着いたのは凄く良かったよね!!」

「あぁ、それにしても、焦げたパンをチョコを使って表現したのか」

「悪琉君!こっちも……」


 俺と沙羅はその後もメニュー表を見て盛り上がりながらも注文した。

 

「わぁー美味しそうだね」

「あぁ、アニメで見て美味しそうって思ってたからな実際に見たら更に美味しそうって思えるな」


 俺達は結局焦げたパン(チョコパン)と野菜と飲み物とアイスを注文した。


「「頂きます」」

「んー!美味しいね悪琉君!」

「あぁ、美味しいな」


 その後駄弁りながら食事を終えた俺はトイレに行きたくなったので席を離れた。


「ふー、ちょっとはしゃぎ過ぎたな」


 俺はトイレで少し冷静になり考えていた。

 

「ま、楽しいし問題ないか。そんな事より早く戻ろう」



「なぁ、お姉さんいいだろ」

「いや、彼氏ときてるので」

「その彼氏に君は勿体ないって、俺達と遊ぼうよ」


 俺がトイレから沙羅の所に戻ると、男2人にナンパされていた。


 ったく、最近はナンパ見ないなって思ってたのに。

 それにしても、あの2人やけにナンパ慣れしてそうだな、見た目もアニメのコラボカフェに来るような見た目じゃなくて派手な見た目だし。

 おおよそ、オタク女子なら簡単に引っかけれるとか思ってんのかな?


 おっと、そんな事より早く助けないと。


「お待たせ、沙羅!」

「あ!悪琉君まってたよ!!」

 

 俺が出来るだけ笑顔でそう言うと、困った顔をしていた沙羅がぱあっと笑顔になって抱き着いて来た。

 俺を見た2人は顔を青くして冷や汗をかいていた。


「それで、俺の女ナンパして俺に彼女は勿体ないって?」

「あ、いや、そ、それは」


 俺が少し圧を掛けただけで凄く狼狽えた。 


「ん?それは、なんだ?」

「ひっ、ひぃ、何でもないです!!」


 睨んで低い声で迫ったら直ぐに逃げて行った。

 情けないやつらだな。


「悪琉君、ありがとうございます」


 沙羅は意外にも余り怖がっている感じじゃなかった。


「あぁ、当たり前だよ!沙羅は俺の彼女なんだし何があっても守るのは当然だよ」

「うん!頼りにしてるよ」


 俺がそう言うと沙羅は嬉しそうにそう返して来た。


「それにしても、沙羅は怖くなかったのか?」

「うん、悪琉君が来てくれるって分かっていたし……それに私も悪琉君と出会ってから強くなりましたから」


 確かに、初めて会った時と今ではまるで違うな、凄く前向きになってるし、なんかこう……自分に自信を持ててる感じがするな。


「そっか、でも強くなっても何かあったら直ぐ頼ってくれよ」

「うん!分かってるよ」

「それじゃ、そろそろお店でよっか」

「うん!」


 俺と沙羅はさっきの男達の事で迷惑をかけたお店に謝罪をしてから外にでた。


「沙羅この後はどうする?特に何も決めて無かったけど?」

「んーじゃあ、ゲームセンターに行こうよ」

「おっ、いいね!行こっか」


 そう言って俺は沙羅の手を握って歩き出した。



「悪琉君!一緒にこれやろ!」

「おっ、いいぞ!でも俺これ、自信あるぞ?」

「私だって結構自信あるんだよ!」

「じゃ、やるか!」


 そう言って俺達はゲームセンターについて直ぐにマリモカートをする事にした。


「あっ、沙羅やりやがったな!」

「へへ、悪琉君、守りが甘いよー」

「赤甲羅でもくらえ!」

「ちゃんとバナナの皮をストックしてるもんねー」

「あー、くそ、強いな沙羅、負けたよ」

「だから言ったでしょ、自信あるって」


 沙羅は自信げにそう言った。

 正直勝てると思っていたから悔しいが、沙羅が凄く楽しそうだったのでその気持ちは直ぐに飛んで行った。


「悪琉君!次あれやろ!」

「あぁ、いいぞ!」


 それから俺達はいくつかのゲームをして遊んだ。


 俺と沙羅が歩いていたら、沙羅がクレーンゲームの鯨のぬいぐるみを見ていた。


「沙羅、これ欲しいのか?」

「え、あ、うん!可愛いなって思って」

「そっか、じゃあ取ってプレゼントするよ」

「え?いいの?」

「勿論」


 俺はクレーンゲームが得意だったので2回で取る事が出来た。


「凄い!悪琉君!凄いよ!」


 沙羅は目をキラキラさせながらそう言った。


「はい、これあげるよ」

「ありがとう、悪琉君!大切にするね♪」


 沙羅はぬいぐるみを両手でぎゅっと胸に抱きしめてそう言った。


「なぁ、沙羅、もう良い時間だしそろそろ外出ないか」

「あー、そうだね、もうこんな時間なんだね」

「そうだな、時間過ぎるの早かったな」


 そう言って俺達は外に出た。


「沙羅、夕飯はどうする?何か食べて帰るか?」

「うん、そうだね、お母さんにはそう言ってあるから何か食べよっか」

「なにが食べたいとかあるか?」

「んー、じゃあ、良く春香ちゃんと愛ちゃんと一緒に行ってるファミレスがあるんだけど、そこに行こうよ」

「うん!いいね、行こう」


 俺と沙羅は、楽しく話しながらファミレスで食事をした。

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