56話 沙羅とデートの約束を

 真理と4人が俺の家に来てから1週間が経過して明日から夏休みだ。

 この1週間は凄く平和だった。

 神谷が何かをしてくると思っていたのだが意外にも何もしてこなかった……


 春香達が言うには、前までは沙羅が俺と付き合って無かったから行動に移せたけど、俺と付き合って手を出す勇気が出なくなったんじゃない?と言っていた。

 神谷は何処か虚ろな目をしていたり、イライラした顔になったりと俺にはどうにかしたいけど、方法が無い、そんな感じに見えた。

 そんな神谷を見て不気味に思えて俺は心配になり、無理矢理迫って来たりあくどい手段で何かしてくる可能性すらあると思えた。

 一応春香達にも俺の意見を伝えたのだが、神谷にそんな犯罪を犯す度胸は無いと思うよと軽く流された。


 でも俺は本気で言っていて真剣な顔でそう言ったので、春香達はそんな俺の顔を見て私達もしっかり警戒すると約束してくれた。

 夏休みはずっと一緒に居れる訳じゃないから、個々で意識的にそう思ってくれるなら少し安心出来る。


「おっと、そろそろ約束の時間だ」


 俺は今日、沙羅と一緒にゲームをする約束をしている。

 と言っても定期的に一緒にゲームで遊んでいるので特別って訳でも無いんだけどな。


 今日は話しながらゆっくりと出来るゲームが良いとの事だったので久しぶりににメインクラフトと言う家を建てたり、敵を倒したり、農業したりと気楽に出来るゲームをする事になった。



「はは、悪琉君、凄い豆腐ハウスだ!」

「うるせ、建築は苦手なんだよ」

「冗談だよ、拗ねないでね」


 沙羅は学校とかで対面した時には揶揄ったりして来ないのに、ゲームでは良く揶揄ってくるんだよな…まぁ、ギャップがあって可愛くて好きだから良いんだけど。


「拗ねて無いって、それよりそんなに言うなら沙羅はさぞ素晴らしい建築なんだろうな?」


 俺はそんな訳ないと思いながらもそう言った。


「ふふ、見て驚かないでよ?」

「あぁ、勿論」

「こっち来て!」


 そう言って沙羅の後を付いて行ったら驚きの光景だった。


「え?これさっきの時間で作ったのか?」

「そうだよ!」

「え?この立派でかっこいい大きな家をか?」

「だからそうだって!」


 マジか、動画サイトにあげても評価されるような滅茶苦茶かっこいい家を沙羅が作っただと……


「沙羅天才じゃん!」

「へへへ、建築に関しては得意なんだ、建築だけはね……」


 うん、確かに沙羅はPSが高いとは言えない、洞窟に1人で潜ると必ずと言っていいほど死に戻りしてくるから、沙羅が洞窟に行く時は毎回一緒に来てと言われるので付いて行ってる。

 しかし、それでも有り余る位には建築センスは抜群だと思う。


「いや、凄いよ、建築は俺には出来ないからすげー尊敬するよ!」

「へへ、ありがとう悪琉君」


 俺達はその後も駄弁りながらゲームを続けていた。


「そうだ悪琉君!昨日のあれ見た?」

「あぁ、勿論見たぞ!主人公がお姫様を救出するシーンとか滅茶苦茶かっこよかったよ」


 俺達が話しているのは今ネットで週一回配信されているアニメの話だ。

 そのアニメは今凄く人気でかっこいい男キャラ、可愛いヒロインや、出て来るペットキャラ達の愛らしさが話題になっていて、コラボカフェまで出来ている。


「うんうん!あの普段照れ屋の姫様が勇気を出して、主人公に真っ赤な顔で自分からキスするシーンとか最高にキュンキュンしたよ!」


 口が裂けてもあのシーンを見て、部屋でキスした時の沙羅みたいな表情だなって思った事は言えない。


「俺はそのシーンを少し離れた所で見て少し悲しそうに微笑んでいた主人公の幼馴染を見て少し胸が痛くなったよ」

「あっ!それは私も分かる!何であの世界は一夫多妻じゃ無いんだろ?良く分からないだよね」

「んー?それは俺も分からないな」

「そうだ悪琉君!コラボカフェがあるの知ってる?」

「あぁ、勿論。なんなら沙羅が好きなサブヒロインのスフィア王女がピックアップされてたな」

「そうなんだよ!だからさ、行ってみたいんだよね」

「まぁーそんな遠くもないしな」

「ほら、悪琉君の好きなポーちゃんもピックアップされてるじゃん!ね?」


 ポーちゃんとは主人公の相棒の妖精で、主人公を影からサポートしている縁の下の力持ちキャラで小さくて可愛い妖精だ。

 俺もコラボカフェの事は少し気になっていたし、何より沙羅と滅茶苦茶一緒に行きたい。


「確かにそうだったな、じゃあ一緒に行くか?」

「うん!行こ!」

「丁度明日から夏休みだし……なんなら明日行くか?」

「私は全然大丈夫だよ」

「それじゃあ、明日12時に駅前集合で大丈夫か?」

「大丈夫だよ!」



 俺は沙羅との通話が終わったのでゆっくりしていた。


 それにしても沙羅と2人でどこかに行くの初めてだな。

 てか、愛ともデートした事ねーじゃねーか!!

 何してんだ俺。

 色々あったとは言え、付き合って2週間以上経ってるんだぞ!!!

 夏休み中に絶対愛と2人でどっか行こう。


 皆で遊ぶのも良いけど1対1の時間も必要だよな。

 

 (ピコン)


 ん?誰からだ?


 LIMEの通知が来たのでスマホを確認したら春香からだった。


『悪琉!!』

『どうした?』

『沙羅ちとデート行くんだってね!』


 沙羅が話したのか、情報が早いな。


『そうだぞ』

『沙羅ち凄い喜んでたよ!!!』

『そうなのか、嬉しいな。俺も楽しみだし』

『うんうん!それとね、沙羅ちは奥手だから悪琉が頑張るんだよ』

『あぁ、しっかりとリードして楽しいデートにするよ』

『いや、そうじゃ無くてね?えっとね、私から言う事じゃないかも知れないんだけどね、沙羅ちとか愛ちゃんはね、自分からはまだ言えないみたいだけど悪琉が誘ってくれるのを待ってるんだよ』

『えっと、待ってるって……』

『言わなくても分かるでしょ?2人共私と悪琉みたいな関係になりたがってるんだよ』


 ん?これはそういう意味であってるのか?

 愛と沙羅が待ってるって…2人は初めて彼氏が出来たんだし俺はてっきりまだ早いんじゃないかと……


『悪琉今、あの子たちはまだ早いとか思ったでしょ?』

『えっと……』

『やっぱりそうなんだね!悪琉、あの子たちはもう高校生なんだよ?高校生なんて付き合って直ぐに経験するなんて事も別に珍しくないんだよ?』


 そういうものなのか?

 もう少し時間が必要だと思ってたけど……


『こんな事聞くのも情けないんだけど……2人はそう言った事に興味あるって事で合ってるか?』

『イエス!その通りです!別に明日直ぐに!とは言わないけど私的には明日でも沙羅は喜んでくれると思うよ……とだけ言っておきます』

『なるほど……』

『本当は私から言う気は無かったんだけど、2人が悪琉と付き合ってからずっと悩んでたから言う事にしちゃった』


 正直な所、本当に大丈夫なのか少し心配だ。

 沙羅に関してはまだ1週間だし、キスは付き合ってから何回かしているけど、少しずつ慣れて来てるとはいえ、顔真っ赤なんだよな……

 その先に進んでも大丈夫なのか?

 いや、でも春香が言うなら大丈夫なのか……


『沙羅ちも愛ちゃんも付き合ってからまだ短いかも知れないけど悪琉の事が付き合う結構前から好きだったんだよ』

『うん……』

『実は私、悪琉と初めてエッチした次の日に愛ちゃんと沙羅ちには隠し事をしたくなくてその事を話したんだけどさ』

『そうなのか……』

『勝手にごめんね』

『いや、それは全然問題ないよ、言われて困るような事じゃないしな』

『ありがとう。それでね、ハッキリと言えるけどその時から2人は悪琉とそういう事をするのを意識してたんだよ』


 それって、1か月以上前だよな……そんな前から……

 いや、うじうじ悩んでても仕方ないか……

 俺もそういう関係になりたいと思っているし、頑張るか!


『分かった、明日誘ってみるよ……』

『うんうん!でももしそんな事は無いと思うけど沙羅ちが恥ずかしがって渋ったら、後日良い感じにフォローするから何とかやり過ごしてね』

『あぁ、分かった』

『それじゃ、楽しんでね!』

『そうだな、ありがとう春香』


 2人が前からそんな事を思っていたなんて……

 俺はもっと積極的に行かないと駄目だな。

 なんだかんだ気を使っちゃって、受け身になっちゃう事も最近はあったしな……


 うん!がんばろ!

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