50話 悪琉の居ない学校で

★相沢沙羅(side)


「悪琉大丈夫かな?」

「そうね、ちょっと心配ね」

「そうだね」


 悪琉君が体調不良になって少し心配だけど大丈夫かな?

 でも今は心配しても何も出来ないし、香織さんに任せて私達は勉強に集中しないとだね。


 1限が終わり私が1人でトイレに向かっていた時、傑君に話しかけられた。

 私はピクっとなったが警戒しながら返事をした。


「なぁ、沙羅」

「どうしたの?傑君」

「久しぶりに放課後2人で遊びに行かないか?」

「え?遊びに」

「そうそう、ほら中学生の頃は良く放課後遊んでたじゃんか」

「それはそうだけど……」


 どうしよう、今日は悪琉君のお見舞いに行きたいし、そもそも今の傑君と2人は心配だし……


「えっと、今日はもう先約があって難しいな……」

「先約って何があるんだ?」

「えー、ほら、春香ちゃんたちと遊ぶ約束してるから」

「それなら俺も行っていいか」


 良く無いよ傑君。

 春香ちゃんと愛ちゃんは絶対に良いなんて言わないよ……


「ちょっと難しいかも、ごめんね私トイレに行きたいから、またね」


 私はそう言って無理矢理会話を終わらせて、振り返る事もしないでトイレに急いだ。

 

「はぁー、まさか2人で遊ぼうって言って来るなんて……」


 傑君の目少し怖かったな…笑顔だったのに何故かそう感じた。

 それにしても急にどうしたんだろ。


 3限が終わり次の授業が移動教室だったのだが忘れ物をして、急いで教室に戻っている時だった。


「なぁ、沙羅」


 再び傑君が話しかけて来た。

 愛ちゃんか春香ちゃんがいる時は話しかけて来ないのに…もしかして私が1人の所を狙ってる?


「どうしたの傑君」


 私は少し震えてそう答えた。


「今日が無理なのは分かったけど、それなら明日明後日はどうだ」


 どうだって言われても困るよ。

 とりあえず適当な言い訳をして立ち去らないと。


「えっと、傑君?もう授業始まるからまた後でね」

「いや、大丈夫だよまだ少し時間あるし」

「私は今から教室まで戻らないとだからそうじゃないの、ごめんね」


 私がそう言って傑君の隣を通って行ったら、「チッ」と舌打ちの音が聞こえた気がした。



 4限が終わり春香ちゃんと愛ちゃんとお昼ご飯を食べていた。


「それで、2人共傑は何か動きはあった?」

「ううん、私の方は何もないかな」

「えっと、私の方はあったよ」

「「え?」」

「ちょっと沙羅、大丈夫?何かされてない?」

「大丈夫だよ愛ちゃん…何かされた訳じゃ無いよ」

「それで何があったの沙羅ち」

「えっと……」


 私は傑君に1人になった時に話しかけた事を話した。


「そっか、やっぱり沙羅ちにちょっかいかけて来たね」

「そうね、それよりちゃんと断れた?沙羅」

「うん、少し焦ったけど、行くとは言わなかったよ」

「そう、ならとりあえず良かったわ」

「それよりもこれからどうする?」

「うーんどうしよっかな、まぁ、学校なら傑も下手な事出来ないだろうし、沙羅が断ればとりあえず問題無いと思うけど」

「そうだね、でも放課後は一緒に行こうね」

「それは勿論よ」



 授業が全部終わって帰る時間になった。


「春香、沙羅行くわよ」

「はーい」

「あ、2人共玄関で待ってて、先生に言われてプリント届けに行かないとだから。

「大丈夫?」

「うん、渡すだけだし直ぐに終わるから」

「そう、じゃあ玄関で待ってるわね」


 そう言って私はプリントを先生に渡した。


「失礼しました」


 よし、早く2人のいる場所に行こ。

 それにしても、傑君が昔と違い過ぎて嫌だな……

 昔は優しくてカッコよかったのに……


 私がそう思っている時だった。


「おい、沙羅」


 また傑君が話しかけて来た。

 しかも今回は少し怒り気味で怖い。


「え、えっと、どうしたの?私行かないと……」

「少し位いいだろ?」


 口調が怖い、どうしよう……


「でも、春香ちゃんと愛ちゃんが待ってるし……」

「何でだよ?少し話すだけだろ?」

「そ、そう、なら少しだけね…それでどうしたの?」

「だから明日明後日遊べるかって話だよ」

「えっと、因みに何をするの?」

「そうだな、久しぶりに沙羅の家遊び行きたいな」


 久しぶりにって、前に来たの小学生の頃だよ?

 私達はもう高校生だよ?しかも2人っきりって……


「流石に高校生で2人っきりはまずいんじゃ……」

「何がだ?特に問題があるとは思えないんだけど」

「でも、私達は付き合ってる訳じゃ無いんだよ?」

「そうだけど?」


 本当に分からないの?

 それとも分かってない振り?

 駄目だ最近の傑君は何考えているのか全然分からない……

 

「そっか、でもごめんね…やっぱり家は流石に無理だよ…それじゃあ私はもう行くね」


 私がそう言って立ち去ろうとした時、左腕を掴まれた。


「いたっ、何で?」

「何で?まだ話し終わってないだろ?」


 凄い真顔だ…目が怖い。


「もう行かないとだからっ」

「明日か明後日遊ぶ約束してくれたら離すって」

「そんなのっ……」


 私が怖くて泣きそうになっていた時だった。


「「ちょっと何してるのよ」」


 愛ちゃんと春香ちゃんが来てくれた。


「な、何って、少し話してただけだよ、な、なぁ沙羅?」

「そんな訳ないでしょ!沙羅ち涙目じゃない」

「早く離しなさいよ!!」


 愛ちゃんが傑君の腕を叩いて払ってくれて、春香ちゃんは私を抱きしめてくれた。


「いっっ、何すんだよ愛!」

「うるさいわよ!」

「愛ちゃんもう行こ、沙羅ちもここにはいたくないだろし」

「はぁ、そうね」


 そう言って私達はその場を離れた。

 その際傑君は何も言わないのが少し不気味だった。


 私達は学校の玄関を出て話していた。


「ごめんね、2人共……」

「謝るのは私達の方よ……」

「そうだよ沙羅ち…私達が沙羅ちを1人にしたせいだから……」

「でもそれは私が大丈夫って言ったからで……」


 少し無言が続いた後


「あっそうだ、良い事思いついた、ちょっと愛ちゃんこっち来て」


 そう言って2人は何やらコソコソ話し始めた。


★春香(side)


「それでいい事って何なのよ」

「えっと、沙羅ち思った以上に落ち込んでるじゃん」

「そうね……」

「だからさ、悪琉に慰めて貰おうよ」

「悪琉に?」

「うん!悪琉と沙羅ちが更に仲良くなれて、沙羅ちも元気になる。一石二鳥じゃん!」

「まぁ、そうね…それでどうするの?」

「とりあえず今日の事を話して、悪琉と沙羅ちを2人っきりにするだけだよ」

「んーでも悪琉は体調が悪いんじゃ……」


 そうだった…私は悪琉の家に遊びに行く感覚になってた。


「ねぇ、春香?何その忘れてたって顔は」

「え、いや、そんな事ないけどね?」

「はぁ、まぁ良いわ、沙羅の事は心配だし悪琉の体調次第ね」

「そうだね」


 私達は沙羅ちの所に帰った。


「2人共終わったの?」

「うん!そうだ悪琉に飲み物とか買って行こうよ!」

「そうね、香織さんが買って行ったと思うけど無くなってる可能性もあるものね」

「一応欲しい物あるか悪琉に連絡するね!」

「そうだね……」


 やっぱり沙羅ち…元気が無いな…… 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る