49話 お見舞い(香織)

「コホッコホッ」


 朝起きたら体が気だるく頭が痛かった。

 体温を測ったら38度の熱があった。


「まじかー」


 今は色々と忙しいのによりによって風邪をひいちゃうとはな……

 皆に真理の事を話したかったんだけどな。

 まぁ、LIMEで夜にでも連絡すれば良いか……

 今日は学校に連絡して休むか……


 

「後春香達にも連絡しとかないとな」


 俺は学校に連絡を入れた後そう思いLIMEした。


『すまん、風邪ひいて学校休む』

『珍しいわね、大丈夫なの?』

『えーー、大丈夫?』

『熱はどの位あったんですか?』

『38度だからそこまで高く無いから心配要らないぞ』


 次の返信は1分後位に来た。


『ねぇ、悪琉…今春香と沙羅と一緒に学校にいるんだけど春香がサボってお見舞いに行こうとしてるわよ』


 ハハ、春香の気持ちは嬉しいけど流石にそれは良く無いな。


『春香、ホント大丈夫だからちゃんと学校頑張れよ』

『えーー、悪琉の家行きたいのにー』

『悪琉君、無理しないでよ?』

『あぁ、大丈夫だよ』

『あっ、そうだ!』

『どうしたんだ?春香』

『ちょっと待ってて』


 ん?待つって何をだ?

 2分位経った後連絡が来た。


『悪琉!私達は行けないから代わりにおかーさんに連絡したよ!』

『香織さんに?仕事は大丈夫なのか?』

『おかーさんは今日の仕事は午後からだから丁度良いと思って連絡したんだよ』


 随分タイミング良いけど正直凄く助かるな。

 買い物行くのもしんどいし……


『そっか、助かるよ』

『うん!私達も学校終わったらお見舞いに行くからお大事にね』

『悪琉君、私達はもう少しで授業始まるから悪琉君はしっかり休んでね』

『あんまり無理しないでよね?』

『あぁ、ありがとう、学校頑張れ』


「ふぅー香織さんが来るまで寝転んでるか……」


 そう言えばまだ、春香以外に家の鍵を渡して無かったな。

 沙羅は付き合って無いから渡すのもおかしいか……

 でも香織さんと愛には渡して問題ないよな。



 1時間後(ピンポーン)とチャイムが鳴った。


 俺は重い体で玄関に向かってお迎えした。


「わざわざありがとうございます。香織さん」

「大丈夫なの?悪琉君?」

「少し怠いだけなので大丈夫ですよ、元々体は強いので少し寝てれば治りますよ!」

「だといいけど…それよりも早く寝転んで」

「そうですね。とりあえず俺の部屋まで行きましょうか」

「そうね」


 そうして俺は香織さんに心配されながら部屋に向かった。

 俺は部屋に着いたら直ぐに寝転んだ。


「悪琉君、飲み物やゼリーとか買って来たから必要だったら食べて良いからね」

「はい、助かります」

「それで朝ご飯は食べてないわよね?」

「食べてないですね」

「何か作ろうと思ってるから何か食べたい物あるかしら?」

「そうですね、ならお粥でお願いします」

「分かったわ、少し待っててね」

「はい」


 俺は香織さんが買って来たドリンクを飲んだりして待っていた。

 それから時間が経って香織さんがお粥を持って来た。


「悪琉君出来たわよ」


 香織さんにそう言われて俺は体を起こした。

 

「ありがとうございます。いただきますね」

「どうぞ」


 俺は香織さんが作ったお粥を口に運んだ。


「美味しいです」

「ふふ、良かったわ」

「そういえば悪琉君、大分汗かいてるわね、タオル持って来るわね」

「はい、洗面所に置いてあるのでお願いします」

「分かったわ」


 俺がお粥を食べ終わった後、汗をかいた俺の為に香織さんはタオルを取りに行った。

 それにしても体調を崩して誰かに看病されるのは小学生低学年ぶりだな……

 親が家に帰って来れなくなってからは、連絡だけしたらお父さんが知り合いに頼んで、飲み物とかゼリーとかを買って来てもらって玄関に置いていくだけだったからな。

 酷い親と思うかも知れないけど、親も必死に仕事を頑張っていたんだよな。

 ちょっと複雑な気分だな……


「それにしても香織さんといると安心感が凄いな」


 香織さんといると何故か凄い落ち着くんだよな。

 そんな事を考えていたら香織さんが帰って来た。


「悪琉君、持って来たわよ」

「ありがとうございます」

「ふふ、拭いてあげましょうか?」


 香織さんはにっこりしてそう言って来たが恐らく揶揄っているのだろう。

 なら返答は一つしかないよな。


「はい!お願いします」


 俺が笑顔でそう言うと香織さんは少し目を見開いた後笑顔になった。


「ふふふ、ならそうしましょうか」


 うん、やっぱり大人だからこの位じゃ対して動揺しないよな。

 

「なら上半身だけお願いします」


 俺はそう言って上の服だけ脱いだ。


「……服の上からでも何となく分かっていたけど凄く鍛えられてるわね…びっくりしたわよ」

「そうですか?まぁ、毎日筋トレはしてますからね」

「ふふ、じゃあ拭くわね」

「はい、お願いします」


 そうして香織さんは背中から拭き始めた。


「汗結構かいてるわね……」

「匂ってたらすいません……」

「ふふふ、大丈夫よ、寧ろ……」

「寧ろ?」

「あ、いや、なんでもないわよ」


 え?なんだ?凄い気になるんだけど……


「じゃあ。前も拭くわね」

「はい」


 そう言って香織さんは俺の前に来た。

 香織さんはそのまま拭き始めたんだけど…ちょっと顔赤く無いか?


「えっと、香織さん?」

「どうしたの?悪琉君」

「ちょっと顔赤いけど大丈夫ですか?」

「え?赤くなってるの?」

「はい」


 珍しく香織さんは動揺している。


「ほんとに大丈夫ですか?」

「え、う、うん、大丈夫よ」

「体調悪いんですか?」

「ううん、体調は良いわよ」

「そうですか、なら良いですけど……」


 少し様子がおかしいけど確かに体調が悪いって感じじゃ無いな。


「よし!拭き終わったから片付けるわね」

「あ、はい、ありがとうございます」


 そうして香織さんは少し急ぎ目に部屋から出て行った。


★香織(side)


「はぁー、危なかったわ」


 私は元々男らしい筋肉が好きなので悪琉君の体を近くで見てちょっと興奮しちゃっていたな……

 正直に言って超タイプな体だったし……

 その上汗の匂いが鼻を刺激して更に興奮を加速させられちゃった……


「はぁ、悪琉君は体調が悪いって言うのにだらしないわね」


 まさか顔に出ちゃっているとは思っていなかった。

 指摘されて取り乱してしまった。


「変に思われてなければいいけど……」


 流石に高校生が相手だから気を付けないとね……

 

「よし!これからは同じことが無いように気を付けましょう。それにしても思ったより体調悪く無さそうでよかったわね」


 私はそう思いながらタオルを片付けて、気持ちを落ち着かせてから悪琉君の所に向かった。





 しばらくして香織さんが部屋に帰ってきた。


「悪琉君体調はどう?」

「おかげでかなり良くなってきてますよ」

「そっか、良かったわ」

「あっ、そうだ香織さん、婚約の話って聞いてますか」

「春香に少しなら聞いてるわよ」

「えっと、まだ春香達に話せていないんですけど、先に香織さんに相談して良いですか?」

「勿論良いわよ」


 俺は春香達に話す前に香織さんに真理の事を相談する事にした。


「なるほど……」


 俺が話終わると香織さんは少し考えた後に話始めた。


「悪琉君的にはその真理ちゃんをどう思ったの?」

「んー、正直分からない事だらけでしたね…でも悪い子では無いかなとは思いました」

「それだけ?」

「えっと、俺の事が好きって言ってたんですけどその言葉に嘘は無さそうでしたね。でも何故かびっくりする位好かれているみたいでびっくりしました」


 再び香織さんは何かを考えだした。


「それじゃあ悪琉君的には印象は良かったっていう事よね」

「まぁ、そうですね、印象自体はかなり良かったですね…」

「まぁ、ならとりあえずは安心ね」

「安心ですか?」

「えぇ、悪琉君がそう感じたのならね。でも私も会って見たいわ」

「勿論それは大丈夫ですよ、春香達と会わせる予定ですしその時一緒に会いますか?それとも別の日にしますか?」

「一緒の日で大丈夫よ」

「分かりました、ならそのつもりで予定を組みますね」

「お願いするわね」


 真理に会う時に香織さんが一緒なら少し安心感あるな……

 特に問題は起きないと思うけど、春香達だけだと少し不安もあったしな……


「それじゃ悪琉君、ちゃんと休んでね、私はそろそろ仕事に向かわないとだから行くわね」

「はいありがとうございました。」

「お大事にね」

「あっそうだ、香織さん、一応この家の鍵を受け取って貰っていいですか?」

「いいの?」

「はい!春香にも渡してるし大丈夫ですよ」

「なら受け取っておくわね」

「はい仕事頑張ってください」

「えぇ、後で春香達が来るそうだから何かあれば頼ってね」

「分かりました」


 そう言って香織さんは仕事に向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る