42話 お泊り勉強会

「ふわぁー」


 俺は昨日の夜遅くまで色々と考えていてほとんど眠れなかった。

 昨日俺は春香達と話した後考えをまとめ、両親に約束してもらった。


 1つ、神宮寺に会ってみて印象が良くないと感じたらこの先皆とやっていくには難しいだろうからその時は婚約の話は無かった事にしてもらう。


 2つ、神宮寺が春香達と会って春香達の1人でも嫌がる人がいたら婚約は無かった事にしてもらう。


 3つ、神宮寺が4人と仲良くなれそうに無いのなら婚約を無かった事にしてもらう


 4つ、婚約者だからと言って優先するとかは無い、神宮寺を認めたとしても他4人と差をつける事なく5人平等に接する。


 この4つを約束してもらった。


「よし!今日は春香のテスト勉強の追い込みだから切り替えよう」


 集合時間は1時からだから…あと3時間あるな。

 準備しておくか。





 (ピーンポーン)


 午後1時、チャイムが鳴った。


「いらっしゃい、春香、愛、沙羅」

「来たよー悪琉♪」

「こんにちは、悪琉」

「悪琉君今日はよろしくね」

「あぁ、3人共入っていいぞ」


 悪琉は3人を部屋に連れて行った。


「3人共昨日はごめんな……」


 俺は早速昨日の事を謝った。


「大丈夫だって!昨日もいったでしょ?」

「そうだよ、悪琉君が悪い訳じゃ無いんだから」

「ねぇ、悪琉…昨日私達で話し合ったんだけどね、神宮寺さんが悪琉の事を好きだったら私達は神宮寺さんの事は歓迎するよ」


 駄目だな俺は、3人が滅茶苦茶気を遣ってくれてるよ……

 でも神宮寺が俺の事を好きって事は無いと思うんだけどな……


「ありがとう…でもさ、神宮寺と会った事も無いのに好きって事は無いと思うんだ……」

「えっと、それは、たしかに……」


 考えて無かったのか春香は狼狽えて沙羅は黙り、愛は何かを考えている。

 その後少し無言が続き愛が口を開いた。


「ねぇ、この際だから私達の考えをはっきり伝えるわね、良い?春香、沙羅」


 二人は無言で頷いた。


「私達の結論から言うと、神宮寺さんとの婚約自体は反対してないわ、ただ私達と同じ立場になるならの話よ」

「うん」

「神宮寺さんが悪琉に好意を持って無いもしくは悪琉を独占しようとしたりとか、香織さん含めた私達4人の均衡が崩れるようならはっきり言って、婚約はしないで欲しいの」

「なるほど、実はな、その事も踏まえて昨日3人と話した後、俺なりに考えて親と約束してもらったんだ」

「約束って?」

「約束はこの4つだ……」

 ……

 ……

 ……

 

 それを聞いて3人は一気に安心した顔になった。


「なんだ、緊張して損した」

「そうね、結構私達なりに考えてたのだけど余り意味なかったわね」

「でもそれなら皆安心できるじゃん」

「すまん、最初に言っておくべきだったな」


 昨日親に相談しておいて良かった。

 俺は3人の安堵した表情を見て胸をなで下ろした。


「それじゃあ、私達は安心して神宮寺さんに会えるね」

「そうね、私達は女同士だし悪琉よりは神宮寺さんの本音を聞き出せると思うしね」

「うん、神宮寺さんが悪琉君に好意を持ってればいいけど」

「ほんとありがとな3人共」


 俺は3人の話を聞いて昨日までの不安がほとんど無くなった。

 そんな俺の顔を見て3人が言った。


「やっといつもの顔になったね♪」

「そうね、悪琉には落ち込んだ顔は似合わないわね」

「そうだね、やっと元気になってくれたね」

「よし!一回この話は終わって私の勉強を見てよ」

「そうね、早く追い込みしないと春香が赤点を取っちゃうものね」

「ふふ、そうだね、勉強しよっか、ね!悪琉君」

「あぁ、そうだな!」


 マジで良い子達過ぎるな……

 絶対に大切にしないとな。



「はぁー疲れたよー」

「しかし春香ってやっぱ覚え滅茶苦茶いいよな」

「そうだね、びっくりだよ」

「そうね、でも今まで本当に勉強をしてこなかったのね…こんなに覚えが良いならちゃんとしてれば良い成績がとれると思うわ」

「へへへー、ありがとうー、3人的に今の私だとどの位点数取れると思う?」

「そうだな、俺が思うに全教科赤点ギリギリ取らない位かな?」

「じゃあ、60点ギリ超える位か、今までの私からしたら凄い点数だね!」

「これから追い込みするなら全教科合計700点位は取れると思うよ私は」

「まぁ、どれも春香次第だけどね」

「もー、愛ちゃんはいつも厳しいなー」

「あなたがちゃんとしないからよ」

「ははは、少し休んでから勉強を再開するか」

「「「うん(そうね)」」」


 3人と一緒に過ごして俺はもうすっかり元気になっていた。


「やったー」

「良い感じね、この調子なら平均70点越えも難しく無さそうだね」

「よくやったな春香」

「やっぱり春香ちゃんはやれば出来る子だったんだね」

「えへへ、3人共褒めすぎだよー」

「はいはい、直ぐ調子に乗らないの」

「はーい」

「沙羅もこの勉強会で英語の苦手意識が大分減ったみたいね」

「うん!愛ちゃんと悪琉君が教えてくれたおかげだよ!!」


 実は今回の勉強会で俺と愛は春香が英語が苦手と言っていたので、教える事にしていた。

 その結果春香は単語の習得自体は出来ていたけど応用が苦手みたいだった。

 そこを中心に教えたらある程度理解してくれて中間では62点と赤点ギリギリだったが期末では80点は取れる位になっていた。


 こうして俺達の勉強会は無事に進んで行った。


「じゃあ、先に風呂に入ってくれ」

「いいの?」

「勿論、それと3人一緒でも余裕で入れるからな」

「分かったわ、じゃあ先に入らせてもらうわね」

「ありがとう悪琉君」


 そう言って3人を風呂まで案内して入って貰った。


 ★七瀬春香視点~


 お風呂の中で私は愛ちゃんと沙羅ちの裸を見た。


「うわっ、久しぶりに2人の裸みたけど沙羅ちは暴力的な胸をしてるし、愛ちゃんはスタイル完璧すぎるよ!!」

「春香だって、引き締まってて男性受けすると思うけど」

「むー、悪琉はどんな体が好みなのかな……」


 私がそんな事を呟いたら愛ちゃんと沙羅ちが自分の体を見て顔を赤くした。

 私はそんな2人を見て可愛くてもっと揶揄いたくなった。


「そういえば、胸が大きい人がタイプっていってたっけな?」


 私がそう言うと愛ちゃんは少し残念そうにして、沙羅ちは更に顔が真っ赤になった。


「でも、スタイルとバランスが大切って言ってた気もするなぁ」


 そう言うとさっきとは逆で愛ちゃんの顔が明るくなって、沙羅ちは少ししょぼんとしていた。

 本当に2人共可愛い過ぎるよ。


「2人共体洗いっこしよ」

「もう、春香ったら、仕方ないわね」

「ふふふ、そうしよっか」


「ねぇ、2人共、私今日の夜悪琉の寝室に忍び込もうと思うの」


 お湯に浸かりながら私のそんな言葉を聞いて2人はピクって動いた。


「えっと、春香?悪琉の寝室って私達が寝る部屋の隣よね?」

「そうだよ?」

「春香ちゃん、それはちょっと……」

「そうよ、私達が隣にいるのにそんな事……」

「大丈夫だって、2人共、添い寝してもらうだけで別に何もしないよ~」


 春香はニヤニヤしてそう言った。


「そ、そんな事分かってるわよ!」

「そ、そうだよ別に変な事なんて考えてないよ!」


 愛と沙羅は顔を赤くして慌てて良い訳をしていた。


「もー、2人共本当に可愛いなー」


 私はそう言って2人に抱き着いた。


「ちょっと、春香離れなさい」

「春香ちゃんちょっと苦しいよ」

「いいじゃん、いいじゃん」

「もう、仕方ないわね」

「そ、そうだね」


 私はなんだかんだ言って許してくれる2人が大好きだ。

 

 ★悪琉視点~


「悪琉ー上がったよ」


 そう言って春香達が風呂から上がって来た。


「お、おう」


 俺は風呂上がりの3人を見てつい狼狽えてしまった。

 春香はオレンジのパジャマと濡れた髪の毛が普段以上に可愛いく感じさせる。

 愛は水色のパジャマは少し子供っぽさを感じさせ、ギャップが凄いし濡れた髪の毛が凄く色っぽい。

 沙羅はピンクのパジャマで恥じらう姿が普段の可愛さがより浮き彫りになっている。


「ははーん、さては悪琉…私達に見惚れてるね?」


 流石に見過ぎてたか。


「すまん、3人共可愛くてついな……」

「ははは、悪琉ったら正直だね」

「まぁ、その、ありがとう」

「へへ、嬉しいよ」

「よし!じゃあ俺も風呂行ってくるな!!」


 俺は少し気恥ずかしくなってそう言った。

 


「はぁー心臓が持たないって……」


 俺はお湯に浸かりながら呟いた。

 3人のパジャマ姿は控えめに言って最高だった。

 普段見れない姿っていつもより凄く可愛く見えるんだよな。

 俺は風呂の中でそんな事を考えていた。


「じゃあ3人共俺は隣の部屋で寝るけど何かあったら言ってくれ」


 風呂を上がり俺は3人にそう言った。


「えぇ、大丈夫よ、お休みなさい」

「お休みなさい、悪琉君」

「おやすみー悪琉ー」

「あぁ、お休みな」



「はぁー今日は良く寝れそうだな」


 昨日はほとんど眠れて無かったけど、3人と話せて心の淀みが無くなって気分が凄く良かった。

 寝るか。

 そう思った時


 (こんこん)

 ドアがノックされた。


「悪琉ー、一緒に寝ていい?」

「あぁ、でも今日は本当に寝るだけだぞ?」

「流石に大丈夫だよ」


 春香は初めて肌を重ねた日以降、俺に勝ちたいとか言って、積極的になり春香の方から誘ってくる事が多くなっていた。

 まぁ、負けた事は無いんだけどな。


「そうか、なら大丈夫だぞ」

「うん♪」

「お休み春香」

「お休み悪琉」


 そう言って俺は春香を横に寝せたら直ぐに眠りに着いた。


「ふふふ、よっぽど疲れてたのかな、気持ちよさそうに寝てる。私達の為にいっぱい悩んでくれてありがとね悪琉」


 春香は悪琉が寝た後そう言って、悪琉に軽く唇と唇を重ねて眠りに着いた。

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