40話 衝撃的な事実

「悪琉ー、今日の勉強会は無しだよね?」

「少なくとも俺は不参加だな、でも春香達はやった方がいいんじゃないか?」

「勿論そのつもりよ、春香の家でやるって昨日決めたのよ」

「そうなのか、じゃあ俺の分までよろしくな、愛、沙羅」

「うん、春香ちゃんの為に頑張るよ」

「えぇ、ちゃんと教えるから心配しなくても大丈夫よ」

「2人共お手柔らかにお願いねー」


 そんなやり取りを終えて俺は学校を後にした。


 勉強会初日から3日が経ち、今日は金曜日だ。

 この3日間は特に何かがあった訳でも無いが少し気になる事があった。

 昨日の夜、父親から連絡が来て今日の食事会で大事な話があるとの事だった。

 全く予想すらつかないがそんなに気にする必要も無いか。


 俺はそんな事を考えながら食事会へと向かった。




「えっと…ここだよな」


 俺は今日のディナーの会場へと着いた。


「父さんと母さんはもう中に居るらしいけど……」


 俺はそう思いつつ受付に向かった。


「いらっしゃいませ!ご予約してらっしゃいますか?」

「はい、佐野雄二と言う名前で予約してあると思うのですが…それが私の父親で既に中にいるらしいのですが……」

「はい!佐野雄二様でしたらお先にいらっしゃいましたよ、どうぞこちらですご案内いたします」

「よろしくお願いします」


 そう言って個室に案内された。


「おぉ、悪琉、来たか」

「久しぶりー悪琉ちゃーん」


 母さんが抱き着きて来た。

 んー、一応3日前に少しだけあってるんだけどな……


「ちょっ、母さん、3日前にもあったでしょ……」

「あんなのあった内に入らないわよ……」


 まぁ、ほとんど話せない位短時間だったしな……


「まぁまぁ、2人共座りなさい」


 父さんがそう言うと母さんが席に着いたので俺も座った。


「ねぇ、悪琉ちゃん?全然教えてくれないけど、春香ちゃんとはどんな感じなの?」


 母さんがそんな事を聞いて来た。


「なんで母さんが春香の事を?話した事すら無いでしょ?」

「まぁ、そうなんだけどね、話を聞いた感じだと凄くいい子っぽかったからさ」

「んーそうだね、まぁ隠してた訳じゃ無いんだけど実はもう春香とは付き合ってるよ」

「えーーーだったら何で会わせてくれないのー」


 いや、ただタイミングが無かっただけだよ。

 まぁ、そんな事を言っても納得しないんだろうけどな……


「もうすぐテストだからさ、終わった後に合わせようとしてたんだよ……」


 俺はそれっぽい言い訳で返答した。


「ほんとよね?絶対会わせてよ!」

「分かったよ母さん……でも反対とかしないでよ?」

「そんな事当たり前よ悪琉ちゃん!むしろ目一杯可愛がりたいのよ」


 母さんは何故か自信ありげに胸を張ってそう言った。


「まぁ、それならいいけどね」

「えぇ、任せて!」


 任せてって何か変な気もするけど…まぁ、母さんだしな……


「そろそろ良いかな…灯」

「そうね……」


 父さんと母さんが急に真摯な態度になった。


「何かあったの2人共?」

「あぁ、実はな……」


 父さんは何故かばつが悪そうだ。


「雄二さん…ちゃんと言いましょう」

「そうだね、実は悪琉に婚約者が出来た」

「ん???」


 俺は意味分からな過ぎて狼狽していた。

 婚約者?なんだそれ?

 ゲーム知識でも無いぞこんなイベントは。

 

「えっと、どういう意味?」

「だから婚約者が出来た」

「いやいや!それは聞いたよ、何でそうなったのかって事だよ!」

「実はな、俺が凄くお世話になっている恩人とも言える人に娘と悪琉を婚約させてくれと頼まれたんだ……」

「それで引き受けちゃった感じ?」

「あ、あぁ、すまん」


 何となく話の内容は理解出来た。

 簡単に断れる相手じゃ無かったのだろう…恩人って言ってたしな。

 でも俺はどうすれば良いのだ…既に2人恋人がいると言って良い状況なんだぞ…それに愛と沙羅もいるし。

 皆になんて言えば…はぁー。


「まぁ、断れないって事はわかったよ…相手の娘さんはこの話をどう思ってるの?」


 いくら俺達が良いと思ってても相手が少しでも嫌がるなら余り乗り気にはなれないからな。


「婚約者の方が嫌がってる事は無いぞ」

「そうなんだ…それで、どんな人なの?」


 名前を聞けばもしかしたら思い出せるかも知れない。

 ゲーム内や悪琉の過去で会っていたかもしれないし。


「名前は神宮寺真理(じんぐうじまり)だ」

「神宮寺ってあの?」

「あぁ、神宮寺正和(じんぐうじまさかず)が父親で大企業、神宮寺家の一人息子で母親が神宮寺クレアだ」


 神宮寺正和と言ったら容姿、性格、仕事の手腕、どれも最高峰と言われ妻が7人位居る超有名人じゃねーか。

 父さんの恩人にそんな大物がいたのか……

 それに神宮寺真理と言えば神宮寺家の子供の中でも1.2位を争うくらい優秀って言われてる子だよな……

 なんでそんな子と…マジでどういう事だよ……。

 

「なんで俺なの……?」

「そこなんだがな…実は教えてくれなかったんだよ…正和さん曰く悪意がある訳じゃ無いから今はまだ分からなくて良いとだけ言ってたよ…いつか娘の方から理由を話すって……」


 尚更意味分からん。

 でも俺に害を与える訳じゃ無さそうで良かった。

 まぁ、納得いかない事は多いけどな……

 

 てか、いつかは言うんだ、この際4人と交際する可能性があるって言った方が良いか。

 そうすれば婚約の話もどうにかなるかもだしな


「でもさ、父さん…俺実は交際してる人は1人なんだけど他にも恋人になるかもしれない人が3人もいるんだ……」

「4人か…思ったよりも多いな…でも全員本気なんだろ?」

「うん…本気だよ」

「だったら何も問題無いよ、一夫一妻が良いって人も少なくないけれど、相手の娘さんは一夫多妻で問題無いらしいぞ」


 思ってた反応と全く違う。

 この世界では男子は交際相手が複数いてもおかしくないから別に普通なのか……。


「悪琉ちゃんが悩むのも分かるけどね、相手の娘さんには悪琉に恋人がいるかもとは言ってあるのよ。でもそんな事は関係ないそうよ、寧ろ同じ人に嫁ぐかも知れないからちゃんと挨拶がしたい。そう言ってたわよ」

「なるほど…分かったよ」


 現状抵抗する方法は無さそうだな……。

 取り敢えず会うだけ会うか。

 しかし、春香達に説明するのが大変そうだな…もし誰か1人でも反対の人が居たら父さんと母さんには申し訳ないけど無理にでも断わってもらうか……


「まぁ、取り敢えず会ってみるよ……」

「あぁ、なら来週の日曜日に予定を組んでおくよ」

「うん」


 不安な事が一気に増えたな……

 それにしても神宮寺真理か…どんな人なんだろう……

 凄く優秀らしいけどいい人だったらいいけど……




 食事会が終わった後、雄二と灯は話していた。


「んーやっぱり余り乗り気じゃなかったな……」

「そうね…悪琉ちゃんにはもう好きな人がいるもんね……」

「あぁ、春香ちゃんだけだと思ってたら他に3人も居たとはな」

「やっぱり断る事って出来ないのよね?」

「難しいな…何故か向こうは悪琉以外は有り得ないと言わんばかりに積極的なんだ」

「そう……」


 実はこの婚約は2人としても良く分からない点がいくつもあった。

 それ故に、何故悪琉にこだわるのか理解出来ていなかった。

 それを聞いても、何か企んでる訳でも悪意がある訳でも無いから大丈夫、真理ちゃんからいずれ悪琉に話すだろうからそれまで聞かないで待っていて欲しいと言われるだけだった。


「でも、正和さんは信用出来る人だから俺達が余計な心配する必要もないだろう、後は悪琉と真理ちゃん次第だ」

「それはそうだけど、悪琉ちゃんの言ってた4人は大丈夫なのかしら?」

「それは、少し心配だな…まぁそれに関して問題があれば俺が4人に頭を下げて説明するよ…何かあれば悪琉にも申し訳ないしな」

「その時は私も一緒に謝罪するわ……」

「あぁ、いつも済まないな……」

「うん、大丈夫よ」

 

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