37話 勉強会(上)

 時間はあっと言う間に過ぎ、テスト期間の時が来た。

 俺は今、春香と愛と沙羅の4人で俺の家へと向かっている。

 言うまでも無く学校を4人で出た時は周りが凄くうるさかった。


「ねぇ、悪琉?聞いて無かったけど悪琉の家って悪琉の他に誰かいたりするの?」

「いや、いないぞ、そもそも両親はほとんど帰って来ないから1人暮らし状態だな」

「それならうるさくしても大丈夫そうだね」

「ほどほどにな…」

「うるさくする前提なのね春香は…」


 全然うるさくしても大丈夫って言いたい所だけど、ちゃんと勉強をして欲しいので言わないでおこうか。

 一応遊びに来てもらう訳じゃ無いしな…


 そんなこんなで家に着いた。


「よし!着いたぞ」

「「「え??」」」

「ん?」


 俺の家に着いたのだが3人共驚いた表情で言葉を失っている。

 まぁ、そうだよな…俺ですら大きくて驚いた位だからな。

 一般家庭に住んでる人からしたら大豪邸だよな……


「まぁ、びっくりする気持ちも分かるが今日からここで勉強会をする訳だし慣れてくれ」

「ちょっとタイム!悪琉、ちょっと3人で話していい?」

「あ、あぁ」




「ねぇ、愛ちゃん、沙羅ち…何ここ?思ったより遥かに豪邸なんだけど…」

「大丈夫よ春香…私達も同じ事思ってるわよ」

「うん、私なんかびっくりし過ぎて一瞬頭の中が真っ白になったし…」

「これから毎日ここに通うんだよね…私達慣れるかな?」

「分からないわ…でも悪琉の家って考えれば少し気楽ではあるわね…」

「改めて実感したけどやっぱり悪琉君の家ってお金持ちなんだね」


 三人はお互いの顔を見合わせて頷いた。


「でも悪琉と一緒にいるって事はこういうのを早く慣れる必要があるって事だから頑張ろう!」

「そうね、でも分かってると思うけど悪琉がお金持ちだからと言って、それに甘えるのはダメよ2人共…」

「当たり前だよ、流石にそんな酷い事はしないよ…悪琉君は甘えて良いって言ってくれると思うけどね」

「うん、絶対そう言うわね…まぁ、仮に甘える事があっても感謝の気持ちは絶対に忘れちゃダメよ」

「「うん!!」」

「それじゃあ悪琉の所に戻ろうか」



「「「ただいま」」」


 3人は息ぴったりにそう言って来た。


「あぁ、話し合いは済んだのか?」

「えぇ、大丈夫よ」


 愛がそう言うとそれに合わせて春香と沙羅がコクンと頷いた。

 何を話していたのか少し気になりはするけど、何かを心に決めたかのような表情だったのであえて聞かなかった。


「それじゃ、ついて来て」

「「「うん」」」


「「「お邪魔します」」」

「うわー玄関から凄いね…」

「うん、私こんなに大きい家初めて見たよ…」

「そうね、外から見ても凄いけど中に入って見たら更に凄いわね…」


 皆がそう思うのも無理もない…だってこの家は元々パーティー用の家だからな……。

 それ故に玄関から気合い入ってるんだよな。




「それじゃここで勉強をしようか」

「ここは悪琉の部屋?」


 春香は辺りを見回してそう言った。


「違うよ、ここは特になんの部屋でも無いよ、ただ空いてる部屋だけど…何でだ?」

「ううん、ちょっと悪琉の部屋を見たかっただけだよ♪」

「あーでも引っ越したばっかで俺の部屋はベッドと机しか無いからここと大差ないよ」

「えーそうなの?でもえっちな本とか…」

「ねーよ」


 春香が変な事を言おうとしてたもんだから俺は食い気味でそう返した。

 うぶな沙羅はエロ本と聞いただけで顔が赤くなってるな…


「こら春香!早速勉強を始めるわよ!!」

「はぁーい」

「3人は先に始めててくれ、俺はちょっと飲み物とか用意してくるから。ちなみに飲みたい物あるか?」

「私はお茶をお願いするわ」

「私もお茶をお願いします」

「じゃあ私はオレンジジュースをおねがーい」

「あぁ、じゃあ少し待っててくれ」


 俺は飲み物を取りに冷蔵庫まで向かおうと部屋を出たが、愛がついて来た。


「どうした?愛」

「運ぶの手伝うわよ」

「大丈夫だぞ?お客さんなんだから」

「いいのよ、私がやりたい事だから」

「そうか。じゃあ手伝ってくれ」

「えぇ」


 俺達は冷蔵庫のある所まで来た。


「ねぇ悪琉?」

「どうした?」

「悪琉って普段どんな物を食べてるの?」

「ん?良く分からないけど…普通にコンビニで弁当を買ったり、時々自分で作ったりしてるぞ?」

「そうなのね…」


 愛は少し安心した様にそう言った。


「どうしたんだ?」

「いえ、意外と贅沢な食生活じゃ無くて安心したの」

「あーまぁ、お金持ちと言っても普段そんなお金を使ってないしな俺は」

「そうなのね、うん。尚更好感持てるわね」

「そうなのか?」

「そうなのよ、一般市民の私達からしたら住む世界が違い過ぎて少し戸惑っていたけれども、今の話を聞いて安心したのよ」

「そっか、なら良かったよ」


 俺達はそんな会話をした後部屋へと戻った。


「おまたせ2人共」

「じゃあ早速勉強を始めるわよ」

「そうだね」

「はぁーい」



 ~1時間後~


「はぁー疲れたーちょっと休憩ー」

「春香ちょっと早いんじゃない?」

「そうだよ春香ちゃんもう少し頑張ろう?」

「えーだって1時間もやったんだよ?」

「まぁまぁ、2人共少し位休んでもいいんじゃないか?」


 春香からしたら1時間は頑張った方なのだろう…それにしても春香は勉強が出来ない訳ではなさそうだな、やれば出来るタイプらしい。

 教えた事はすぐ理解できてスムーズに勉強が進んでいる。


「そう言えば私は勝手に思ってたんだけどさ、皆と同じ大学に行きたいとか言ってたけど…皆はどの大学に行くの」

「確かにそうだな、違う大学だったら話が変わって来るな……」


 そう言われてみればそうだ…俺も3人と一緒に大学に行きたいとか思ってたけど肝心な事を考えていなかった。

 俺は最中大学を考えていたけど愛と沙羅はどう考えてるんだ?


「私は一応、家から通えるし偏差値もかなり高いから最中大学よ」

「やっぱりそうよね私も同じで考えてたよ」

「良かったよ、俺も最中大学に行こうと思ってたから」

「今の私に行けると思う?」

「無理よ…だから勉強を頑張るのよ」

「そうだよ春香ちゃん!!!」

「一緒に頑張ろうな春香」

「うん!!頑張れる気がしてきた!!!よし!勉強するよ皆!」


 この調子なら案外直ぐに勉強出来るようになりそうだな。

 俺は全力でサポートする事だけを考えておこうか。



「3人共もう6時だけどそろそろ解散するか?」

「んー、もう少し勉強したいけど、どうしよう……」

「春香がやる気なら別に大丈夫だぞ、折角なら夕飯を食べて行くか?」

「え?いいの?」

「あぁ、と言っても出前になるけどな」

「それなら私と沙羅ちで作るよ!!」

「いやでもそれじゃあ勉強が……」

「まぁまぁ、あっそうだ!なら愛ちゃんと悪琉で食材買って来てよ!その間私と沙羅ちは勉強してるからさ!」


 そうして俺と愛は半強制的にリストの書かれた紙一つ握らされて部屋から出された。


「えっと、とりあえずスーパーにでも行くか」

「そうね…」



「それにしても春香がやる気出してくれて良かったな」

「それは本当に安心してるわ…小さい頃から一緒にいたからずっと言ってたんだけどね、勉強した方が良いよって」

「まぁ、春香の事だからどうせ勉強より運動がしたいとか言って勉強はしなそうだな…」

「そうなのよ…」


 この様子だと愛は春香の事を思ったよりも心配していたんだろうな……

 

「じゃあ、スーパーに着いたしパッパッと買って帰るか」

「そうね」


 俺たちは買い物を素早く済ませてスーパーを後にした。

 買い物中俺は考えていた。

 愛と沙羅との関係をどう進めるのかを。

 2人は春香と違って自分からアタックするタイプじゃ無いから、やはり俺からアタックして行こうと…そう考えた。


 正直今告白しても悪くない気はする。

 でもやっぱりシチュエーションは大切にしたい。


「なぁ、愛」

「どうしたのかしら」

「期末テストで俺が勝ったら話したい事があるから聞いてくれないか…」


 俺は今までにない位真剣な面持ちで言った。


「凄い真剣な顔ね…そんな顔されたら何を言いたのか分かっちゃうじゃない…」

「あ、マジか…すまん……」

「ふふっ、大丈夫…でももし私が勝ったらどうするつもりなの?」


 咄嗟に考えて提案した事だからそんな単純な事すら考えられていなかった。

 負ける気はしてないけど…確かにどうしよう…

 負けた時の事を考えたら少し気分が落ちた…


「冗談よ、そんなに暗い顔しないでよ…それじゃあ私が勝った時は、私からお話があるから聞いてよね…」


 愛は照れくさそうにそう言った。

 俺は愛の言葉を聞いて自分でもびっくりする位胸が高鳴った。

 愛からそんな事を言われるなんて想像も出来なかった。


「あぁ、でもそれなら絶対に負ける訳にはいかないな」

「ふふっ、楽しみにしてるわ」


 愛は笑顔でそう言った。

 愛の笑顔を見て俺は尚更思った。

 絶対に勝たないとなって……告白は俺の方からしたいからな。


「よし!春香と沙羅も待ってるし早く帰るか!」

「そうね」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る