36話 勉強会の約束

「ねぇー悪琉ー助けてー」


 いつも通り登校したら春香が慌てて俺の所に駆け寄って来た。


「どうした春香?何かあったのか?」

「何かあったと言うかなんと言うかねぇ…」


 春香は何故か恥ずかしそうにしていたが、何があったのかは言い切らなかった

 それを見かねた愛が続きを話し始めた。


「春香は中間テストで赤点だらけだったから期末テストでは赤点を回避したいんだって」

「あー、それで恥ずかしそうにそうにしてたのか」


 別にそんなに恥ずかしがらなくてもいいと思うんだけどな。

 俺自身勉強が出来ない人を馬鹿にしたり、下に見た事なんて生きてて一度もないしな。


「えぇ、それで私と悪琉に勉強を教えて欲しいんだって」

「勿論いいぞ、今日は7月1日だからテストは後2週間後か…まぁ、何とかなるだろ」

「やったー、ありがとう悪琉ー♪」

「それならいっその事勉強会でも開くか」

「そうね、それが良いと思うわ」

「それでいつから始めるの?」


 今日から教えてあげたい気持ちもあるけどそれぞれ部活もあるしそんな訳にはいかないよなぁ。


「んーお互い部活もあるし出来るとしても1週間後かな?部活もテスト期間で休みになるしな」

「それが良いわね、春香はそれまで1人でも少しは勉強するのよ?」

「えー、1人じゃ無理だよー」

「ダメよ少しは自分でもやらないと」

「むー、分かったよーちょっとだけね」

「まぁ、それでいいわ…今はね」


 こうして見ると2人は姉妹みたいで会話を聞いてるとほっこりするな。

 

「悪琉?どうしたのよ?なんか顔が緩んでるわよ?」


 どうやら2人のやり取りを聞いていたら顔に出てたようだ。


「いや、何でもないよ」

「そう、ならいいけど…それと今は委員会でいないけど勉強会は沙羅も呼ぶつもりだからよろしくね」

「俺としては元々沙羅もいると思って聞いていたから勿論いいぞ」

「まぁ今は余り時間も無いし、詳しい事は昼休みにでも話しましょ」

「あぁ、そうだな」


 それにしても勉強会か、中間テストの春香は確か下から数えて10番目位の成績で全教科赤点だったよな…期末テストは10教科あるし少し大変そうだな。

 愛は2位だし沙羅も高順位だったから2人に関しては問題無いな。



 時間は過ぎて、昼休みになった。朝話していた様に俺達は屋上に集まって昼食を取りながら話していた。


「それで愛ちゃんと春香ちゃんにある程度聞いたけど、何処で勉強会をするの?」

「普通に図書室とかでいいんじゃない?」

「図書室は駄目ね、どうせ春香は勉強を静かに出来ないでしょ…周りに迷惑がかかるわ」

「えー酷いよ愛ちゃん…まぁ、否定出来ないんだけどね♪」


 春香はベロを出してあざとくそう言うが否定はできてくれよ…と思ったりもするけどまぁ、そこが春香の可愛い所でもあるんだけどな。


「それで結局どうするの?」

「悪琉は何処か良い所知らない?」

「ん-春香がうるさくしても迷惑がかからない所だよな…俺の家で良いか?」

「そう言えば悪琉の家には行った事ないし私は悪琉の家に行きたーい!!!」


 春香はびっくりする位凄い勢いでそう言った。

 

「春香は落ち着きなさい、それで悪琉の家って何処にあるの?」

「今住んでる所は…グループチャットで住所を送るよ」


 俺は最近引っ越した方の家をグループチャットに送った。


「学校から近いのね」

「そうだな、少し前まではちょっと遠くに住んでたんだけど通学が大変だったから引っ越したんだ。それに防音もしっかりしてるしうるさくしても大丈夫だぞ」

「それなら良さそうだね、悪琉君の家で勉強会をしましょ」

「やったー、悪琉の家だーーー」

「春香?勉強会だからね?」

「分かってるって♪」

「ならいいけどね…」


 愛はちょっと怪訝な瞳を向けていたがまぁ、大丈夫だろう。


「ちなみに春香は中間テストの時とかってテスト勉強したのか?」

「してないよー」


 春香は胸を突き出して自信ありげにそう言った。


「はぁー、何でそんな偉そうに…」

「ははは、春香ちゃんらしいね」


 愛は呆れたようしていて沙羅は苦笑いでそう言った。


「まぁ、今回からはしっかり勉強しような、ちゃんと教えてあげるからさ」

「んーまぁ、悪琉がそこまで言うならやってみようかな?」

「うん、頑張ろうぜ!将来の為にもなるしさ!」

「将来かー、悪琉は大学とか行くの?」


 春香は先ほどまでと違って真剣な面持ちでそう言って来た。


「そうだな、取り敢えず大学は行こうとおもってるよ」

「ふーん、愛ちゃんと沙羅ちは?」

「私も大学は卒業しておきたいと思ってるわよ」

「私も2人と同じかな」


 春香はそれを聞いて何かを少し考えた後に口を開いた。


「よし!私勉強頑張るよ!!」

「春香ちゃん?どうしたの急に?」

「私も皆と大学に行きたい!!」

「あー、なるほどね…それで今のままじゃ行けないと思ったのね」

「うん!だから皆よろしくね!!!」

「分かってるわ、春香がやる気になってくれるなら私は協力するわよ」

「そうだよ、一緒にがんばろ!」

「じゃあ皆で勉強を頑張るか!取り敢えず来週からな」


 皆で同じ大学か……うん普通に楽しそうだな。

 春香がやる気になってくれるなら俺達も頑張って協力しないとだな。


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★七瀬 春香(side)


 私は今、久しぶりに自分の部屋で机と向かい合っている。

 皆と同じ大学に行くために今日から勉強を頑張ろうと思う!

 因みにおかーさんに大学に行きたいと言ったら二つ返事で応援してくれた。

 皆の期待に応えるためにもしっかりとしないとだね!


「よし!やるぞ!!」


 …

 …

 …


「うぅー全然集中出来ないよー、そろそろ休憩しよっかな」


 私はそう思い時計を見たらまだ30分しか経って無かった。

 体内時計では2時間位は勉強をしたと思っていたのに…

 それにしても全然問題が解けない…どうしよう。

 そうだ!取り敢えず皆に連絡してみよう!


『皆ー助けてー』

『どうしたんだ春香』

『今勉強してたんだけどね全然集中出来ないし問題も分かんないよー』

『それは当たり前よ、集中力は一旦置いといて問題が分からないのは今まで勉強をしていなかったせいよ』

『春香ちゃん、少しずつで良いからね、ゆっくりやろうね』

『でもそれじゃ1人でどうやって勉強すれば…』

『もうっ、仕方ないわね…分からない場所は教えてあげるから通話しながらやるわよ』

『え?ホント!!愛ちゃんありがとう!』

『それなら私も一緒に勉強していい?』

『勿論いいわよ』

『だったら勉強会が始まるまでは皆で通話しながら1.2時間位勉強するか?』

『ありがとう3人共ー大好きだよーーーー』


 そんな感じで私の為に3人が一緒に勉強をしてくれた。

 悪琉も愛ちゃんも沙羅ちも凄く優しくて、私は本当に恵まれているなって感じる。

 私はより一層勉強を頑張ろうと思えた。

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