32話 悪琉の誕生日会

 6月26日(佐野悪琉の誕生日の次の日)の放課後


「じゃあ、悪琉、私達は準備するから先に行くね」

「あぁ、俺は6時に行けばいいんだよな?」

「そうだよ、じゃあまた後でね♪」

「あぁ、沙羅と愛もまた後でな」

「「えぇ(うん)、また後で」」


 そう言って3人は先に帰った。


「どこで時間つぶそうかな」


 俺の家は春香の家とは真逆なので、家で時間を潰すと言う事は出来ない。

 新しい家はまだ行った事ないしな。 


「ま、適当にそこら辺でブラブラしておくか」



 時間をつぶして6時になった。


「じゃあ、そろそろだな」


 ピンポーン、チャイムを鳴らしたら直ぐに4人が来た。


「「「「いらっしゃい」」」」

「あぁ、皆ありがとう」


 皆で部屋に向かった。


「じゃあ、改めて悪琉!」

「「「「誕生日おめでとう!!!」」」

「ほんと、ありがとう!」


 俺達5人はケーキなどを食べながら楽しく過ごしていたら、香織さんの電話が鳴った。


「皆、ちょっとごめんね、職場から電話が来て1時間位出かけないと行けなくなったから少し出て来るわね」

「はい、大丈夫ですよ香織さん!」

「じゃあ、また後でね悪琉君」

「はい!」


 そう言って香織さんは外に出た。


「おかーさんはいなくなったけど、そろそろプレゼントあげようか」

「そうだね」

「そうね」

「おお、プレゼントか」

「実はね悪琉、私達さ、色々考えたんだけどね、結果的にお揃いの物をプレゼントしたくてね」

「お揃い?」

「そう!特別感を出したくてね!」

「まぁ、確かにそれは特別感あるな」

「私からはこれね、黄色のブレスレット!悪琉の腕に着けていい?」

「あぁ、勿論」


 春香にブレスレットを着けてもらった後


「じゃあ俺も着けてあげた方が良いか?」

「うん!!」


 春香の腕にもつけてあげた。


「ふふ、お揃いって思ったよりも嬉しいね♪」

「確かにそうだな」


 春香が言うように確かに嬉しい。


「じゃあ次は私ね、私のは黒色のブレスレットよ」

「あぁ、ありがとな」

「ありがとな、じゃ無くてほらっ早く腕貸しなさいよ」

「あ、あぁ」


 そう言って愛はブレスレットを着けてくれた。

 愛が俺に直接着けてくれると思わなかったから正直ドキドキした。


「あっ、そうだ悪琉!2人からは言いづらいと思うから私から先に言っておくけど、2人が悪琉とお揃いのブレスレットを着けるのは学校の外だけだよ」

「そうだな、流石に学校ではな」

「うん、学校に着けて行く時は…そう言う時よ♪勿論私は着けていくけどね♪」

「えっと、それって俺も愛と沙羅のは着けて行かない方が良いのか?」

「いいえ、悪琉は常に着けてていいのよ」

「そうか、えっと、じゃあ今は愛の腕にも着けてあげてもいいのか」

「そ、そうね」


 愛は腕をこちらに向けた。

 俺はブレスレットを着けて上げた。

 愛も緊張してそうだ、目が泳いでる。


「あ、ありがとう」

「おう」

「それじゃあ次は私ね、私はピンク色のブレスレットね」

「うん、ありがとう」


 俺は腕を出してつけてもらった。


「じゃあ、沙羅も腕出して」

「う、うん」


 愛も凄かったけど沙羅は顔が真っ赤だな。


「よし!」

「ありがとう…」

「悪琉は風呂に入る時と寝る時と運動する時以外は常に着けていてね♪」

「あぁ、勿論そのつもりだぞ」


 その後4人で話して楽しんだ。


「時間も時間だしそろそろ解散の時間ね」

「そうだね、そろそろお母さんが心配する時間だしね」

「あぁ、じゃあこの辺で解散だな、3人共マジでありがとな、スゲー嬉しかったよ。ブレスレットも一生大切にするよ」


 そうして愛と沙羅が帰ったので俺も帰ろうとしたら。


「悪琉はまだ駄目よ、おかーさんが今帰って来てるからね」

「まぁ、そうだな、俺は別に早く帰らないといけない訳じゃ無いしな」


 その5分後に香織さんが帰って来た。


「ただいまー」

「「おかえりなさい」」

「それじゃ、早速だけど悪琉!おかーさんと2人で話してきてね♪」

「え?あ、あぁ」


 俺は良く分からなかったが取り敢えず香織さんと2人で話す事にした。


「香織さん!お疲れ様です」

「えぇ、ごめんね悪琉君、途中で抜けちゃって」

「いえいえ、お祝いしてくれるだけで凄く嬉しいですよ」

「ふふふ、悪琉君らしいわね、それじゃ私からのプレゼントを渡していいかしら」

「え?香織さんからもプレゼントがあるんですか?」

「勿論、実はね色々とあってね今さっき受け取ってきたんだよね」

「あぁ、なるほど、だから途中で抜けたんですね」

「えぇそうよ、それでプレゼントはこれよ」


 そう言って香織さんはプレゼントを見せてくれた。


「えぇ?これって…お金があっても手に入りずらい○○限定版のバッシュじゃないですか!!」

「そうよ、ちょっと学生時代の伝手があってね、特別に譲って貰ったのよ」

「まじっすか、めっちゃ嬉しいです!!!」

「ふふふ、なら良かったわ」


 俺がバッシュを眺めていたら


「ねぇ、悪琉君」


 香織さんは真面目な顔で名前を呼んで来た。


「はい、どうしました?」

「悪琉君は春香の事好きなのよね?」


 香織さんから意外な質問が来た。

 正直に言って今の俺はもう、ゲームの春香とこの世界の春香は全くの別として考えられてる。

 勿論、愛や沙羅もそうだ。

 それ故に変に嘘つく必要も無いので正直に答えるとした。


「はい!好きです!」

「そうよね、でも春香だけじゃ無いわよね」

「そうですね、正直に言うと愛と沙羅…それに香織さんにも同じ感情を抱いています…」


 俺は香織さんの事も話すかどうか迷ったが、素直に気持ちを伝えたいと思ったので話す事にした。


「うん、何となく分かってたわ…」

「すいません…」


 少し無言が続いた後


「実はね、私も悪琉君と同じ気持ちなの」

「え?」


 意外過ぎる返答に理解できなかった。


「悪琉君が助けてくれたあの時からそう思ってたのよ、でも年齢や春香の事を思ったら隠すしか無いなって思ったのよ。でも春香にはバレバレでね、話し合った結果私も想いを伝える事にしたの」

「そ、そうなんですね、香織さんがそう想っていてくれてるとは全然思いもしなかったんですが…そうですね、滅茶苦茶嬉しいです…」

「でもね、今は私よりも春香と愛ちゃんと沙羅ちゃんの事を優先して欲しいの」

「えっと、それは何で?」

「まぁ簡単な理由よ、私は最後で良いの、若い子達を優先して青春を送って欲しいの。それにね、悪琉君が高校を卒業しないと進める関係も進めないしね♪」


 まぁ冷静に考えてみれば、普通に高校生と大人じゃマズイもんな。


「確かにそうですね…」

「だからね、今はここまで」


 そう言って香織さんは触れる合うだけの軽いキスをしてきた。


「かっ、香織さん!?」

「この位までなら大丈夫よね♪」

「そ、そうですね、この位なら」


 俺はいきなり過ぎて顔が赤くなっていた。


「でも高校を卒業したら全員平等に扱ってね」

「それは当たり前です、まぁ愛と沙羅に関してはどうなるか分かりませんけどね」

「そうね、でも悪琉君は好きなんでしょ?」

「まぁ、それはそうですね…」

「それなら悪琉君が頑張んないとね」

「はい…」


 確かにそうだ、言われてみれば俺は春香達に幸せになって欲しいとは思ってたけど、何故か自分で幸せにしようとは思えてなかった。

 でもそれじゃ駄目だ、今の俺は間違いなく香織さんを含めた4人の事が好きだ。

 だからこれからは俺が4人を幸せにしよう。

 俺はそう心に決めた。


「ふふふ、顔つきが変わったわね」

「はい!ありがとうございます」

「大丈夫よ、そろそろ春香の所に戻りましょ」

「そうですね!」


 俺と香織さんは春香の下へ戻ったら春香はニヤニヤしていた。


「ほほぉーこの感じだと良い感じだったんだね」

「えっと、まぁそうだな」

「そっか、なら良かったよ」

「春香のおかげよ♪ありがとね」

「うん!」

「よし!もう夜だしそろそろ帰るな」

「そうね、その方が良いわね」

「じゃ、少しだけ送ってくよ」

「別に大丈夫だぞ?」

「いいのいいの」


 そうして俺と春香は外に出た。


「なぁ、春香」

「どうしたの?」

「明日か明後日空いてるか?」

「うん明日は土曜日だし空いてるよ!」

「なら、明日デート行かないか?」

「デート!!!行く!!!絶対いく!!!」

「じゃあ、明日の午後1時に駅前集合で」

「うん!!分かった!!また明日」

「あぁ」


 俺は明日、春香との関係を進めてみようと思う。

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