30話 昼休みのお弁当

傑の誕生日会の次の日

 

 俺はいつも通りに登校したが明らかな異変があった。

 春香達が傑と全く話してない。

 いや、どっちかと言うと春香達はいつも通りで、変なのは傑の方だ。

 いつもなら傑の方から話しかけに行ってるのに今日はチラチラ見るだけで何故か声をかけようとしない。


 そんな事を考えていたら、スマホが鳴ってLIMEを確認したら、グループチャットの招待で春香達3人がいるグループだった。

 3人の方を見たら、春香はニコニコしてて、沙羅は目が合うとスマホで顔を隠し、愛は目が合うとそのまま小説を読み始めた。

 そしてその後


『悪琉!今日は購買行かないで先に屋上行っててね!』

『何でだ?』

『いいからいいから、楽しみにしててね♪』

『了解』


 俺は良く分からなかったが取り敢えずそう答えた。


 そんなこんなで4限の授業が終わり屋上に俺は居た。

 春香が遅かったのでLIMEしようとしたら屋上の扉が開いた。

 そこには春香だけじゃなく、愛と沙羅もいた。


「悪琉ーおまたせー」

「今日は沙羅と矢野もいるんだな」

「えぇ、今日からは私達も一緒よ」

「今日からは?」

「えっとね、色々あってね…今日からは私と愛ちゃんも一緒じゃだめ…かな?」


 沙羅が少し涙目でそう言って来た


「いやいや、勿論大丈夫だぞ、何があったか分からないけどむしろ嬉しいぞ」

「て事で今日からは4人一緒でねー」

「あぁ、沙羅と矢野もよろしくな」


 俺が笑顔でそう言うと


「ね、ねぇ」


 愛が恥ずかしそうに口を開いた


「どうした?矢野?」

「その呼び方変えない?」

「呼び方?」

「だからっ、その、愛って呼んでって事よ!!」


 愛がそう言って顔を真っ赤にして目をそらした。

 普段とのギャップが凄くて俺はつい


「可愛い…」


 そう呟いてしまった。そうしたら愛が


「は、はぁ?な!、何言ってんのきゅ、急に!!!」


 明らかに動揺したようにそう言った。


「はいはい、お2人さん私達がいる事忘れないでねー」

「悪琉君、早く呼んであげて!!」


 春香はからかう様にそういって、沙羅は珍しくワクワクしながらそう言った。


「あぁ、じゃあこれからは愛って呼ぶよ、愛も悪琉って呼んでくれ」

「え、えぇ、よ、よろしくね、あ、悪琉…」


 愛はびっくりする位動揺していた。


「いえーぃ、じゃあ、悪琉と愛ちゃんが更に仲良くなった所で、私達が作って来たお弁当をたべましょう」

「私達?」

「そう!私と沙羅ちと愛ちゃんが作って来たのよ♪」

「春香と沙羅は分かるが、愛は料理出来ないんじゃ無かったのか?」

「愛ちゃんはね、料理が苦手だけど悪琉君に作ってあげたくて頑張ったんだよ」


 沙羅がそう言うと愛が


「ちょっと、沙羅、余計な事言わないでいいのよ!!」

「それで愛が作ったのはどれだ?」

「えっと、その卵焼きよ…」

「そうか、じゃ、最初に頂くな、頂きます」


 そうして食べたが全然おいしかった。


「うん、苦手とは思えない位美味いぞ!」

「そ、そう、なら良かったわ」


 愛は照れながらそう言った。


 その後俺たちは4人でお弁当を食べた。

 春香も沙羅も凄く料理が上手で正直かなりびっくりした。


「「「「ごちそうさまでした」」」」

「いやー、滅茶苦茶美味しかったわ、3人ともありがとな!!」

「うん、これからも毎日作って来るからね!!」

「いや、毎日は流石迷惑じゃないか?」

「そんな事無いよ、愛ちゃんはまだ1人じゃ無理そうだけど、私と沙羅ちは作る気満々よ」

「そうなのか?沙羅」


 俺がそう尋ねると沙羅はコクンと頷いた。


「そっか、でもお金は払わせてくれ、負担は掛けたくないからな」

「悪琉らしいね♪どうせ断っても聞いてくれないだろうから分かったわ」

「私もそれで大丈夫です」


 そんな俺たちの会話を愛は少し羨ましそうに聞いていた。


「なぁ愛?」

「何よ」

「知ってると思うけど俺も料理練習中だから、お互い上手になったら作り合わないか?」


 俺がそう言うと愛は嬉しそうな表情になった。


「そ、そうねじゃあそうしましょうか」

「あぁ、楽しみにしてるな」

「ずるーい、私達も悪琉の手料理たべたーい、ねぇ、沙羅ち?」

「は、はい、私も是非食べてみたいです」

「はは、そうだな勿論2人も作って来るよ」

「「やったー(ありがとうございます)」」


 そんな会話をしていた時


「ねぇ、悪琉?少し暗い話になっちゃうけど聞いてくれる?傑の誕生日会で有った事を」

「何かまずい事でもあったのか?」


 そう言われて思い出す。

 何故か傑の様子がおかしかったなと。


「沙羅ちと愛ちゃんもいいよね?話しても」

「悪琉君なら大丈夫だよ」

「私も同じよ」

「悪琉、実はね……」


 そうして春香はその時の話をした。


「なるほど、だから傑の様子がおかしかったのか」

「まぁ、そうなるわね」

「それにしてもごめんな、沙羅」

「え?何で悪琉君が謝るの?」

「だって、俺の不注意で写真を撮られちまった訳だし」

「いやいや、あれは仕方ない事で私は感謝はすれど怒るみたいな事は全くないよ」

「そうだよ、悪琉は沙羅ちを助けただけなんだから」

「そうね、何がどうあろうと盗撮した人が悪いのよ」

「そうか、3人共ありがとう。でも結果的に2人に何事も無くて良かったよ」

「ほんとにねー私も聞いた時はびっくりしたよー」


「あっそれで今日からは屋上で食べるって事か」

「そーだよ!!」

「じゃあ、改めて今日からよろしくな、沙羅、愛」

「うん、よろしくね悪琉君!」

「そうね、よろしく頼むわ悪琉」


 その後は他愛ない会話を楽しんで、昼休みが終わりに近づき俺達が教室に帰ろうとしたら


「ねぇ、悪琉?」

「どうした?春香」

「悪琉の誕生日会、色々な事があると思うけど覚悟しておいてね♪」

「え?どういう意味だ?」

「当日になれば分かるわ、ただ悪琉にとって良い事しかないって事は保証するよ♪」

「まぁ、ならいいけど…」


 俺はこの時思ってもみなかった。

 誕生日会の日が俺にとって大きな意味を成す事になるなんて…

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