25話 体育祭(下)

 沙羅が出て行ってから少ししたら俺も保健室を出た。

 俺は自然と頬が吊り上がってた。

 好感度的が沙羅はたいして高く無いと思ってたのに、まさか神谷より上だとは思わなかった。


 そんな事を考えていたら昼休憩の時間になっていた。

 俺は気を取り直して両頬をパチンと叩いて保健室を後にした。


 戻った後、春香達の方を見たら、親は親同士で、子供は子供同士でご飯を食べていた。

 勿論俺の親は来れてないので、一人で食べようとしていたら


「悪琉ー」


 春香に呼び止められた。


「なんだ?」

「へへ、やるじゃん悪琉~」

「何の事だ?」

「知ってるくせにー」


 春香はそうニヤニヤしていた。

 正直何の事かは何となく分かっていた。


「えっと、もしかして沙羅の事か?」

「きゃぁーー、沙羅呼びじゃん!!」

「おいおい、なんで春香がそんなにはしゃいでるんだよ」

「だって、大好きな人同士がいい感じになってるんだからそうもなるでしょ!」

「良い感じって、まだそんな関係じゃないぞ」

「ふーん、まだね、何があったのよさっきの時間に」

「ニヤニヤし過ぎだぞ春香、てかそれは沙羅に聞いてくれな」

「もーけちー、じゃあそうするね」

「あぁ」

「てか私達と一緒にご飯食べよ!」


 そう言って手を掴まれた。


「いや待て、あいつがいるだろ」

「あいつ?」

「神谷だよ神谷」

「あー、それなら男友達の方にいったよ」


 もはやそれ呼びか、まぁ、それはいいとして神谷がこんなビッグイベントの日に春香達から離れるなんて事あり得るのか?


「そうか、なら行くわ」


 俺は春香に手を引かれて愛と沙羅の元へ連れて行かれた。

 2人の前に来た。


「えっと、さっきぶり?矢野、沙羅」

「沙羅?え?なんでその呼び方?」

「いや、ちょっと色々あってな、なぁ、沙羅」

「そ、そうだね、あ、悪琉君」


 その会話を聞いて、愛は目を見開いて驚いていて、春香は相変わらずニヤニヤしている。


「ま、まぁ、何があったかは俺からは話さないからな」

「そうね、沙羅から聞く事にするわ」

「ふふふ」


 俺は弁当を開ける。


「佐野君ってそれ自分で作ってるのかしら?」

「あぁ、そうだな、親は基本帰ってこないからな、最近は練習し始めたんだよ」

「ふーん、結構上手じゃない?」

「ありがとな」

「あ、悪琉君!!!」

「ん?どうした沙羅?」

「えっと、私料理得意なんだ、だからね、良かったら今度お弁当作ってこよっか?」

「え?いいのか?」

「あっ、ちょっと沙羅ちずるーい、私も料理出来るから、私も作って来るよ!!」

「春香まで、じゃあお言葉に甘える事にするよ」


 まさか沙羅から言って来るなんてな、着実に成長してるな。


「何かごめんなさいね、この流れだと、私も作って来るって言いたい所だけども、料理は得意じゃないのよね……」

「いやいや、気持ちだけでもすげー嬉しいよ、ありがとな3人共」


 昼休憩も終わり、最終競技のリレーの時間が来た。

 走順はくじ引きで決められた。

 運が良いのか悪いのかアンカーになった。

 各組2チームで計6チームで走る。

 俺以外の走者は1人を除いて3年で唯一の2年は陸上部のエースだ。


 リレーが始まり俺にバトンが渡った時は4位だった。

 全力で走ったら、何とか1位になれた。

 

「悪琉ーかっこいいー」

「凄いです悪琉君!」

「やるじゃない、佐野君」


 3人がそう言ってくれているが俺は、この体のスペックえぐくないか?って思ってた。


「あ、あぁ、ありがと」


 そんな感じで体育祭は終わった。


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★相沢沙羅(side)


「はぁー、借り物競争嫌だな」

 私は運動が得意じゃないし誰かを連れて行くなんてハードルが高い。

 正直かなり億劫だ。

 

 スタートラインに立って、始まった。

 私は全力で走った、幸い同じレースメンバーの子達も余り早くない。

 私は紙を取って書いてある文字を見た。


『王子様』


 は?なにこれ?王子様?そんなの初めて聞いたって。

 私は頭がグルグルしていたけど、我に返って考えた。

 私の王子様は小さい頃から傑君だ、のはずだったけど今頭に浮かぶのは佐野君だ。

 そう思ったら佐野君の方に走っていた。


「さ、佐野君!一緒に来てください!」


 私は意を決してそう言った。


「あぁ、行こうか」


 佐野君がそう言ったので、走りだそうとした時


「痛っ」


 私は足を挫いた。

 

「大丈夫か?」

「うん、大丈夫」


 私は情けなくて、大丈夫と意地を張った。

 しかし、再び走りだそうとしたら挫いた所が痛んだ。


「ちょっとごめん」


 そう言って佐野君は私をお姫様抱っこをした。


「えっえぇ?」


 あまりにもびっくりして何も言えなかった。

 そしたら佐野君は笑顔でこっちを見て来た。

 心臓が破裂しそう、これは佐野君に抱っこされているからなのか、それとも多くの人に見られているからなのか、私には判断出来なかった。

 気が付いたらゴールしていて佐野君に降ろされていた。

 

「ごめんな、急に」

「う、ううん、だ、大丈夫だよ、む、むしろありがと」

「それより、滅茶苦茶めだっちゃったな」

「そ、そうだね」


 ドキドキし過ぎて全然気づかなかった。

 周りの人に凄く見られていた。

 

「いや~熱々でしたね、1位の方のお題は何だったのでしょうか」


 1位?いつの間に?って1位て事はおだいが…


「ちょ、ちょっと、まっ」

「お題はーーー王子様でーす」


 駄目だ恥ずかし過ぎる、皆盛り上がり過ぎだよ。

 絶対顔真っ赤だよこれ、これじゃ前向けないよ。


「大丈夫か相沢?」


 佐野君が優しく声をかけてくれる。


「う、うん」

「足痛いよな?」

「す、少しだけ」

「嘘だろ?歩くのもやっとだろ、もっかい担いで良いか」


 え?え?もう一回?私は頭がパンクしそうだった。


「え、い、いや」


 自分がなんて言ってるか理解出来てなかった。


「嫌か?」


 嫌?私は嫌だっていったの?今はそんな事はどうでもいいや。

 ただ佐野君が少し悲しそうな顔をしていて心が苦しくなった。


「い、嫌では…ないです」


 私はついそう言ってしまった。


「じゃ、運ぶな」

 

 そう言って私は佐野君に抱っこされて運ばれた。

 保健室に運ばれるまで胸の鼓動がうるさすぎて何も話せなかった。

 保健室運ばれて、先生に治療されている間にすこしづつ落ち着いた。

 治療を終えて先生が出て行った。


「大丈夫か?」

「うん、ありがとう」


 私は落ち着いたので佐野君と話した。


「でも、大分目立ったな」

「そうですね」

「相沢の両親も不思議そうに見てたぞ」

「そ、そうなの!」


 そこまで気がつかなかった、流石に恥ずかし過ぎるよ。


「あぁ、てかさ、何で俺を選んでくれたんだ?」

「えっとね、正直に言うと、佐野君ともう1人と迷ったんだよね」

「あぁ、神谷だろ」

「え、何で分かるの?」

「いやだって、相沢が絡んでる男子なんて神谷しか居ないし、お題を見た後俺と神谷の事を交互に見てたしな」

「そ、そうなんだ」


 そんな、佐野君にそう言われるのちょっと恥ずかしな。


「あぁ、続き聞かせてくれよ」

「そうだね、理由はカラオケの件とか、私とゲームしてくれる所とか、私なんかと仲良くなりたいみたいな事言ってくれたりとか、そう言うのもあってどっちがカッコイイか考えたら佐野君だったから」


 私は自分が思ってる事を素直に話した。

 佐野君相手だと何故か素直になれるんだよね。


「そ、そうか、いや、そう言ってくれるのは滅茶苦茶嬉しいわ」

「……」


 佐野君が顔を赤くしてそんな事を言う物だから私は何も言えなかった。

 只々ドキドキが強くなる一方だった。


「でもな、私なんか、は頂けないな」

「え?」


 何を言ってるのか分からなかった。


「さっき私なんかと仲良くなりたいって言ってたけど、俺からしたら相沢なんかじゃなくて、相沢だから仲良くしたいって事はちゃんと理解してくれ」

「そ、そんな」


 佐野君は何を言ってるんだろう、そんな事を言われたら私は…

 私は更に顔が赤くなってるのが分かる。


「前から思ってたけどさ、相沢はもっと自分に自信をもった方がいいぞ」

「それは分かってるんだけどね、どうしても皆が私を褒めてくれても、お世辞なんじゃないかって思っちゃうんだよね……」


 私の悪い所だ、佐野君がそう言ってくれてもどうしても信じられない。


「んー、俺からしたらさ相沢はな、見た目が滅茶苦茶可愛いし、性格も良い、趣味も俺と割と合うし、凄く素敵な女性だぞ?」

「え、えぇ」


 褒め過ぎだよ佐野君、私は頭がパンクしそうだ。


「大体相沢は知ってるか分からないけど、相沢と矢野と春香は、学校の三大美女って呼ばれてるんだぞ?もっと自分に自信もとーぜ、俺は相沢が自信がつくまで褒め続けるぜ」


 そんな笑顔で言われたら…駄目だ私自身分かってる、自分がどうしたいかを。

 私は覚悟を決めて深呼吸をした。


「佐野君てさ、最近凄く春香と仲いいよね」

「あぁ、そうだな」

「付き合ってたりするの?」

「いや、付き合っては無いけど、凄く大切な人ではあるな」

「じゃあさ、なんでこんなに私に優しくしてくれるの?」

「うーん、まぁ、下手に誤魔化さないで正直に言うけど、春香に負けない位には相沢の事も大切だと勝手に思ってるからだな」

「ふぅぅー」


 私は勇気を出す。


「なら私も前に進みます!」

「あぁ」

「だから私の事は春香ちゃん見たいに名前で呼んで下さい!」

「勿論いいぞ、これからもよろしくな沙羅」

「は、はい、よろしくお願いいたします、あ、悪琉君」

 

 私はそう言って悪琉君の頬っぺたにキスをした。

 息苦しい、早く逃げたい。


「い、今はこれが限界ですっ!」


 私はそう言って逃げようとしたら、慌て過ぎて転びそうになった。

 その時悪琉君に掴まれた、助けようとしてくれたのだろうが、結果的に私を押し倒す形になった。

 顔が近いこれ以上は本当にやばい!私はそう思い声が出た。


「あ、悪琉君」


 私がそう言うと悪琉君は慌てて離れた。


「す、すまん」

「だ、大丈夫だよ、助けようとしてくれたんだから」

「そ、そうか」

「うん、じゃあ私先に行くね」

「あぁ」


 保健室を出た私は頭が真っ白になっていて気づいたら春香ちゃんと愛ちゃんの所にいた。

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