16話 心に決めた想い
★七瀬 春香(side)
私はおかーさんと一緒に佐野に助けられた。
あの時私は全てに絶望していた、でも佐野が来てくれた。
あの瞬間、確実に心が救われた、でもそれと同時に別の不安が生まれた、佐野1人に対して相手は4人の上に体の大きさも変わらない。
佐野が来てくれたのは嬉しかった、でも4対1だと佐野が大変な事になると思った。
私達の事は置いて逃げてって言いたかった。
でも声が出なかった、やっとの思いで出せた声が
「佐野…、何で……」
だった、頭の中では逃げてと言っているのに声は出なかった、そんな時おかーさんが言った。
「悪琉君、巻き込みたく無いのっ!大丈夫だから逃げて!!」
私はそれを聞いて、良かったって思った、この状況じゃどうせ助からない。
なら佐野だけでも逃げて欲しい、助けに来てくれて嬉しかった、その事実だけで大丈夫だった。
それなのに佐野は逃げなかった。
4人から襲われて抵抗するので精一杯、やがてやられ始めた。
私は見てる事しか出来なくて、涙が溢れていた。
その時パトカーの音が聞こえて来た。
なんでパトカーが来たのか、誰かが見て通報してくれたのか、そんな事を考えていたら、男4人は慌てていた、佐野は安心したのか、こっちを見て笑顔になって倒れた。
なんでそんなボロボロなのに笑顔になれるのよ……。
私は心の中でそう思った。
私は次の日、佐野のお父さんに会った。
おかーさんと一緒に頭を下げて謝った。
自分の息子がボロボロになって入院したのだ、当然嫌な顔されると思っていた。
でも思っても居なかったら答えが返って来た。
「悪琉が自分でやるって決めた事だ2人がそんなに頭を下げる必要は無い」
「いや、しかしっ!!」
「う~ん、そこまで気にしてるなら、教えておこうか」
そこで佐野のお父さんから話を聞いた。
佐野がおかーさんに話を聞いて日から私達を助ける為に動いていてくれたっていう事実を。
佐野の病室に来た。
佐野の顔を見て胸が痛かった、私達を助ける為にやられてる姿が頭に浮かんだ。
私の心の中はドキドキとズキズキで訳が分からなくなっていた。
でもひたすら佐野が早く目を覚まして欲しいと思うばかりだった。
2日後、佐野が目を覚ましたので話した。
泣き過ぎて全然話せなく、情けない姿を見せた。
そんな私に佐野は優しく接してくれた。
佐野は凄く優しい顔をしていて、見ていたら不思議と落ち着いた。
私は思っていた事をしっかり伝えておかーさんと病室をでた。
私は心の中で決めていた。
これからは佐野の事をもっと理解して、返しても返しきれない恩を返していこうと。
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★七瀬 香織(side)
私には娘が1人いる。
世界で1番大切な人で、娘がいるだけで何でも頑張れた。
私には亡き夫が残した借金があった。
決して良い親では無かった、しかし結婚前はとても良いひとだった、そんな思いから離婚と言う選択肢を取れなかった。
その甘い考えを後悔した時にはもう遅かった。
借金はとても簡単に返せる額じゃない。
私は娘には絶対に幸せになって欲しい、その思いから借金の事は秘密にした。
優しい娘に打ち明けたら間違えなく、自分もバイトするって言う事が分かり切っていたからだ。
娘には部活でも何でも好きな事をして欲しい。
そんなある日、無理し過ぎたのか私は買い物帰りに倒れそうになった。
そんな時悪琉君と出会った。
悪琉君はびっくりするくらい綺麗な目をしていて、悪意みたいな物が全く感じ取れなかった。
しかしどこか寂しそうにも感じた。
余り迷惑をかけるのも悪いと思い、早めにお別れを告げた。
その後私は帰ろうとしたが、まだふらふらしていた。
悪琉君はそんな私を見て家まで送ってくれると言った。
初めて会った私にどうしてここまで良くしてくれるのか不思議に思い少し考えた。
でも悪琉君の顔を見たら、純粋に心配の気持ちで言ってくれてると分かったので受け入れた。
家に着き何もお礼しないで返すのも気が引けたので、晩御飯に誘った。
暫くして、娘が返って来た。
意外だったのは娘と悪琉君が同じクラスだった事だ。
娘曰く悪琉君は悪い噂が多いらしい、でも私からしたらそんな子にはとてもじゃないけど思えなかったので、不思議に思った。
娘がお風呂に行った後悪琉君が聞いて来た、どうして無理して働いてるのかって。
私は当たり障り無い感じで答えた。
悪琉君はそんな私に1人で抱えないでと言って来た、私は何て答えればいいか分からずに声が出なかった。
そしたら悪琉君が自分の過去を話し始めた、私は黙って聞いた。
悪琉君が悪い噂があった理由、優しい目をしているのに何故か悲しい目をしている理由が分かった。
私は悪琉君がずっと1人で頑張っていたんだと思ったら、涙を流して悪琉君を抱きしめていた。
悪琉君が帰る時一緒に話した。
わたしは悪琉君のに全て話していた、何故か悪琉君に話したら心が楽になった。
悪琉君はそんな話を聞いて、自分に出来る事があれば言って欲しいと言ってくれた。
しかし、高校生の悪琉君を危険に巻き込む訳にはいけないので断った。
そんな事があり、次の日から私は、元気で生活出来ていた。
久しぶりに悪琉君が晩御飯を食べに来る日、私は気合いを入れていた。
それなのに、あんな恐ろしい事が起きた。
取り立てが来てこれ以上待たないと言って来た。
そんな話は聞いていなかった。
よりにもよって娘まで巻き込む形になってしまった。
私は土下座して娘だけは見逃してもらう様に頼むしかなかった。
そんな事で見逃してくれる訳も無く私どころか娘まで連れて行かれそうになった。
その時、絶望と涙で前が見れなかったが、誰かが来た。
よく見たら悪琉君だった。
どうやら私達を助ける為に来てくれたらしい。
私は逃げて欲しくて逃げてと叫んだ。
しかし悪琉君は逃げなかった、悪琉君の目は本気だった。
悪琉君は4人相手に一生懸命に戦っていた。
次第に悪琉君はやられ始めた。
暫くしたらパトカーが来た、私は少し安心した、悪琉君がこれ以上やられないで済むと思ったらからだ。
悪琉君はサイレンが聞こえた瞬間こちらを向いて笑顔になった。
その瞬間分かった、悪琉君は元々男4人に勝てると思って無かったと、ボロボロになるって分かってた上で私達を助けに来てくれたんだと。
その後、悪琉君の親から話を聞いた。
その話を聞いて私は自己嫌悪した。
私が悪琉君に借金の話をしたせいで悪琉君はこんな無茶をしたんだと。
でもそんな私に悪琉君は言ってくれた。
罪悪感を感じて欲しくないと、私はそんな言葉を聞いて再び心が救われた。
だから私は決めた、元々感じていた罪悪感の分まで感謝の気持ちに変えようと、そして悪琉君に出来る事は何でもしようと。
私は娘と同じ年の子に恋心を抱いている事に気付いた。
仕方ないよ、夫を亡くし女手1人で娘を育て、借金と言うプレッシャーに常に潰されそうになっていた。
そんな中、体を張って私達を助けてくれた、そして私は長年の呪縛から解放されたんだ、好意を抱かない方が難しいよ。
でもそれは表に出さない様にしないと、こんな事悪琉君に知られたら困らせる事になるだろうから。
それでも、心の中で思う位なら大丈夫だよね、私は結ばれ無くても良い、悪琉君の近くで支えてあげられればそれだけで私は幸せだ。
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