12話 ばれ始める神谷傑の裏の顔

 昼休みになり屋上へ向かった。

 ドアを開けたら春香がいた。


「で、どうしたんだ?」

「あんた昨日おかーさんと何を話したの?」

「大した事ないよただの世間話みたいなもんだよ」

「嘘ね、まぁ言えないんだったら、別にいいけどね」


 わざわざ屋上にまで呼び出したからにはもっとしつこく聞かれると思っていたから意外だった。


「え?良いのか?」

「良いわよだって、言いたく無いのに無理に聞くのも悪いでしょ」

「じゃあ何でわざわざ屋上にまで呼び出したんだ?」

「えぇそれはちょっとね」

「ん?なんだ?」


 春香はすこしもじもじして言いづらそうにしていた


「ありがとね」


 その言葉の意味が良く分からなかった。


「え?どういう事?俺は何もしてないぞ?」

「ううん、おかーさんって昔から自分一人で何でも抱えようとするんだけどね、私には何も話してくれないんだ。でも私に心配を掛けない為にそうしてるんだって分かってたから深く聞けなかったんだ」

「それと俺に何の関係があるんだ?」

「佐野は自分では分かって無いのかも知れないけど、昨日佐野を送った後、帰って来た時のお母さんの顔が、明らかに肩の荷が降りたような柔らかい感じだったんだ」


 春香はそう言うが根本的な解決はしていない、でもその言葉を聞いて俺も嬉しい気持ちになった。


「おかーさんって普段ずっと笑顔なんだ、でもね生まれてからずっと一緒にいるから分かっちゃうんだよね、笑顔の内側に何か抱えてるんだろうなって、でもね昨日はそれを感じなかったんだ」

「ふ~ん、良く分かんねーけど、何か力になれたなら良かったよ」

「そんな訳だからありがとね、ごめんね、時間使わせちゃって」

「おぁ、その位気にすんな」

「あっ、そう言えば香織さんに話聞いたか?」


 香織さんはあぁ言ってたけど、やっぱり春香が家にお邪魔する事に賛成してくれてるとは思えない。


「えっと、おかーさんに聞いた事だとあんたが来週も家に来るって事しか聞いてないんだけど、その事?」

「あぁ、七瀬的には大丈夫なのか?」

「大丈夫も何もおかーさんがノリノリなんだから私が反対する訳無いでしょ!それにあんたは別に悪い奴じゃないじゃない」

「そっか、なら良かった、ありがとな」

「別にお礼を言われるほどじゃないわ、まぁ、ありがとね」


 そう言って屋上から去って行った。


「はは、少しだけど春香も信用してくれてるんだな、まぁ香織さんのおかげってのがでかいのかな」


 春香は普段パリピのギャルって感じなんだけど、信用している(異性)に対してはツンデレ気味になるんだよな。


「まっ、本当に少しだったけどな」


 そう言って昼ご飯を食べた。



 放課後部活が終わりトイレで用を足して出ようとした時。


「しっかし傑ってホントついてるよな~」

「な~、あんな可愛い幼馴染3人と結婚の約束までしてるなんて普通ありえねーよ」


 そんな話が聞こえて来た、恐らく傑と同じクラスで同じバスケ部の佐藤と坂口だろう。

 何でトイレの前で止まって話してんだよ、でれねーじゃねーか。


「ま~な、昔からずっと一緒にいたし、運命共同体みたいな感じかな、親同士も交流があるしな~」

「んで、実際どうなんだよ傑?」

「どうって何がだ?」

「いやいや、三人と結婚の約束してるんだろ?それなのに何もして無いなんて普通ありえねーだろ」

「それな~、何もしてないなんて流石にヘタレ過ぎる」

「はぁ~お前らな~、俺がそんなヘタレな訳ないだろ」

「お?それで実際何処まで行ったんだ?」

「そんなの最後まで行ったに決まってんだろ、てかそんなの中学で済ませるに決まってるだろ」


 そんな会話学校でしてんじゃねーよ、俺みたいに誰が聞いてるか分からねーだろ。

 てかそれが事実どうか分からねーけど本当だとしても、言っちゃだめだろ、三人に迷惑かけるなんて想像に難しくないだろ。


「ふゅー、流石傑だぜ、いいなぁ~俺なんて女子と付き合った事もないぞ」

「佐藤の話なんてどうでもいいんだよ、んで、ヤってみてどうだったんだよ!」

「確かに!それめっちゃ気になるわ」

「あー、滅茶苦茶良かったぞ、お前らもやってみればわかるぞ」

「どの位の頻度でやてるんだ?」

「ん~部活もあるし、一人につき週2回位だな」

「えぇー滅茶苦茶ヤってんじゃねーか」

「はは、まあいいだろ、さっ、早く帰えろーぜ」


 そう言って去って行った。

 俺はトイレから出て大きくため息をついた。


「「はぁ~~~~」」


 自分以外のため息も聞こえて来たので、横を見てみたら春香がいた


「えっと、佐野?今の話聞いてた?」

「あ、あぁ、聞いてたな」


 そう言うと春香はまた深くため息をついた。


「折角だから少し話聞いてくれる?」

「あぁ、いいぞ」

「じゃ、帰りながら話すから行きましょ」


 そう言って一緒に帰る事になった。


「さっきの話なんだけど……」

「あぁ」

「あれ、全部嘘だから信じないでよね」

「ん?全部ってのは?」

「はぁ?そんな事私に言わせないでよ」

「えっと、要するに一緒に寝たって事か?」

「えぇ、そうよ、勿論結婚の約束もして無いしね……、後当然私以外の二人も同じよ」


 どこか浮かばない表情をしながらそう言った。


「ん~、にしても神谷は何でそんな嘘を自慢してんのかな?」

「えっ、私の話信じてくれるの?」


 目をぽかんと開けながら驚いてそう言った。


「あぁ、当たり前だろ、七瀬とはそんな話した訳じゃ無いけど、噓つくような奴じゃ無いってのははっきり分かるしな」

 

 そう言って春香の方を見たら直ぐに目を反らされた。

 暗かったからどんな表情をしているかは分からなかった。


「そ、そう、ありがとう」

「あぁ」

「実はね少し前からなんかおかしいなって思ってたんだよね、傑と仲良い男の子達がやけにニヤニヤしながら私達の事見てくるし……。まさかあんな訳分からない事まで言ってるなんて……」

「ん~やっぱ教えとくべきかな?」

「え?何かあるの?」


 春香が神谷の事を好いている事が分かってるから正直迷った、でも少し考えて隠すべきで無いと思い言う事にした。


「ん~実はな……」


 俺は入学して間もない頃から男友達の前だけで、幼馴染の3人と結婚する事になってるとか、お互いに好き合ってるとか、そんなラブラブアピールをしていた事を教えた。

 春香は少し戸惑ながらもこう言った。


「そ、そうだったんだ……」


 少しの沈黙の後


「佐野、少し考えたい事があるからここからは一人で帰るね」

「あぁ、分かった、じゃまた明日な」

「うん!」

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