9話 七瀬母との出会い

 あれから1週間が経過したが特に何も無かった。

 しかし神谷がやけにこっちを見てきてちょっとめんどくさい。

 でも今はそんな事はどうでもいい、2週間後に中間テストがあるがそれも問題ない高校のテストなら少し勉強すれば簡単なはずだ。

 それよりも今から1週間後、ヒロインの一人、未だに関わりは無いが七瀬春香にピンチが訪れる。

 春香は母子家庭で父親は小さい頃に亡くなっている、その上ギャンブル狂いで多額の借金を残して亡くなった。

 

 今日から1週間後でお金を借りて10年目になる、そして闇金の人達が回収しに来るが10年目と言う事もあり闇金の人達は本気で回収しに来る。

 その結果春香は母親と共に体で払うことになる、ゲームでは主人公が幼馴染二人にも相談して、校長先生やいろいろな人からお金を借りて何とか返すって言うイベントだ。

 しかしその後皆で借りたお金を返す為にバイトに追われることになる、そして春香はもともと人一倍人に気を使う性格って事もあり、3人に申し訳ないと思い続け、苦しむことになる。

 春香はそんな事もありバドミントン部を辞め、常に空元気な自分で居続ける事になる。

 

 俺は春香とは関わりは無いが、バドミントンをやっている姿は何回か見た、凄く生き生きとしていて凄く素敵だった。

 そんな事もあり、俺は春香にはそんな思いはして欲しくないから助けたいとは思ってる。

 しかし、関係値が無い今の状態では助けようが無い。


「はぁ~、どうするかなぁ~」


 そう言って深くため息をついた。


「どうにかして1週間以内に春香に信用してもらわないとな。」


 あと、1週間何も無かったと言ったが、小さい変化で言ったら実は二つほどあった。

 一つ目は俺が料理の練習を始めてみた事、今までの人生で料理をして来た事は無かったが折角だから始めてみたが思ったより楽しい。

 二つ目は学校ではほとんど話さないが、夜毎日愛とLIMEでやり取りするようになった、とは言ってもただ普通に友達と話す様な軽いやり取り位だが。

 

 放課後になり今日は部活がOFFだから俺は早々に学校を出てスーパーに買い物に行くことにした。


「ん~今日は何の料理に挑戦してみようかな」


 スーパーに向かいながらそんな事を考えていたら、前方に明らかに体調が悪そうに買い物袋を左右に揺らしてフラフラ歩いている綺麗な女性がいた。

 初対面のはずなのに何故か見覚えがあるなと思いつつも助けに行く事にした。


「あの~、大丈夫ですか?」

「え、えぇ大丈夫です、ちょっと眩暈がしただけだから」


 女性はそう言うがとてもそんな風には見えなかった。


「良かったら肩貸すのでそこのベンチで休憩しませんか?」

「そ、そうね、ならお言葉に甘えようかしら」


 女性は少し警戒しながらもそう言ってきた


「少しここで休んでいてください、何か飲み物買って来ますよ、何か飲みたい物ありますか?」

「そんな気を遣ってくれなくても大丈夫よ」

「いや、自分がしたいだけなので、是非頼ってください」

「そう、ならお茶をお願いしようかしら」

「はいっ!」


 俺はお茶を自販機まで買いに行く為に歩いている途中考えていた、思い出せそうで思い出せないそん感じだった。

 間違いなく見た事ある顔だと思うのだが。


「お茶買って来ましたよ」

「ありがとう、そう言えば君の名前はなんて言うの?」

「佐野悪琉って言います」

「そう、悪琉くんね、私の事は香織って呼んでね」

「はい、分かりました、香織さん」

「そろそろ体調も良くなったから帰るわね」

「はい、体調にお気を付けてください」


 そう言ってお別れしたのはいいものの後ろ姿を見ていると未だふらふら歩いている。

 流石に心配になり後を追った。


「あの~香織さん、ふらふらしてるし少し心配なので家まで送らせて下さい」

「えぇ、ならお願いしてもいいかしら」


 やっぱり無理をしていたのか、苦笑いでそう言った。

 俺は香織さんに肩を貸して家まで送る事にした。


「ここが私の家よ、ありがとね」

「いえいえ、大丈夫ですよ」

「ここまでお世話になったんだから、このまま返すのはなんだか忍びないわね、良かったら晩御飯でも食べていかない?」


 俺は少し迷ったが別に断る理由もないし、香織さんについても少し気になる事もあったので、お言葉に甘える事にした。


「はい、是非お願いします」


 そう言って家にお邪魔した。

 香織さんの家は少し年期の入ったアパートだった。


「そう言えば香織さんって一人暮らしですか?」

「娘が一人いるわよ、丁度悪琉君と同じ位よ」

「それならお邪魔しちゃっても大丈夫なんでしょうか?娘さんが驚くんじゃ」

「ふふっ、悪琉君て凄く優しいのね、私の経験上、カッコイイ若い子ってほとんどの人が人を見下す様な人が多いのにね」

「いえいえ、そんな事ないですし、これ位普通だと思いますよ。」

「ふふっ、そういうとこよ♪、娘の事なら心配ないわ」


 そんな感じの会話の後特に話すことも無く、数分が経った時

 玄関のドアがガチャ、と鳴った


「おかーさん、ただいまー」

「あら、おかえりなさい」


 玄関の方を見て娘さんと目が合った。

 お互いに目を見開いた、何故なら見知った顔だったからだ。


「えっと~、香織さんの娘さんてまさか?」

「えぇ、この子、娘の春香よ」

「おかーさんっ、なんで佐野がいるのよっ!」

「えぇ?二人は知り合いなの?」

「知り合いも何も同じクラスよ、そうじゃなくてっ、おかーさんちょっとこっち来て」


 そう言って春香は香織さんを引っ張っていった。


「おかーさんこれどうゆう状況なの?」

「えっとね~……」


 今日あった事を包み隠さず話した。


「ふ~ん、そんな事あったんだね」


 春香は最近少し悪琉について考える事があった、沙羅ちは悪琉に助けられてから悪琉の方をチラチラ見ては少し顔を赤くしてる。

 愛に至っては、悪琉と一緒帰る事もあるって聞いたしその上連絡を取り合っている始末。それに愛にしては珍しく悪琉と話す時目を反らして少しもじもじしてるし。


「でもおかーさん気を付けてね、あいつ中学から同じだけど、悪い噂ばかり聞いてるよ」

「ふふっ、おかーさんはね、悪琉君はそんな子じゃないと思うわよ、彼と話してたら下心無しで私の心配してくれてるんだなって伝わって来たしね」

「まっ、まぁおかーさんがそう言うならいいんじゃない、別に」

「悪琉君には今日晩御飯食べて帰ってもらうから、仲良くしてね」

「えぇっ、ちょっ、おかーさん!なんで勝手に」

「ふふふ、じゃ、よろしくね」

「もぉ~~」

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