第8話 お風呂
「あー疲れた」
俺は自分の部屋に帰るなり、そう言って盛大なため息を着いた。
男子諸君には目の敵にされ、凛桜に首を絞められるし。
初日からこれでは先が思いやられる。
「ねーねー、豹舞君」
「立花さんといい、なんでそんな無音で部屋に入ってくるの!?」
俺が頭に手を当てていると、いつの間にか凛桜が俺の後ろに佇んでいた。
部屋のどこかに隠し扉があるのでは無いかというレベルで急に現れるので心臓に悪い。
「で、なんでまた俺の部屋に?」
「お風呂」
「却下」
「クビ」
「ひっど!!」
パワハラ主人もいいとこだ。
「風呂は普通にダメだろ」
「なんで?」
「高校生の男女が一緒に風呂入るなんて、恭介さんが聞いたらどう思うことか」
そう、俺が1番恐れているのは理性が崩壊する事よりも、恭介さんを怒らせる事だった。
完全に偏見だが、怒らせたら社会的に抹殺される気がする。
ましてやインターネット会社の社長だ。
言葉通り人生が終了する。
「お父さん、別に退学にならなければ何しても良いって言ってる」
「恭介さん甘くない!?」
めちゃめちゃ怖そうな雰囲気醸し出してたのに、娘にはめちゃめちゃ甘い人だった。
「それにこれは命令!一緒にお風呂入って!」
「それでもダメだ、こんな事言いたく無いが、俺が暴走したら退学沙汰になる可能性もあるぞ」
「私を襲う度胸あるの?あるわけないから安心出来るわ!ハハ!」
「この野郎……なら入ってやるよ」
「はい、言質いただきました〜」
「あ………」
煽られた俺は凛桜の口車にまんまと乗せられたのだった。
ーーーー
「……この先に裸の凛桜が……」
ちなみに俺は腰にタオルを巻いて、肩にタオルをかけている。
装備はそれだけだ。
最後の抵抗で立花さんに凛桜を止めてもらおうと説得しに行ったのだが
「それは仕事内容説明で言ったわよ、業務を全うしてね」
と感情の死んだ声で言われ、すごすごと退散してきた。
「じゃ、じゃあ入るぞー」
「う、うん」
そうして、俺は大浴場への扉を開けあたりを見回した。
「あれ、凛桜?どこ?」
声は聞こえたのに凛桜が見当たらない。
「ちょっと待っててて!近づかないで!」
「自分から誘っておいて何隠れてんの」
「心の準備ってものが必要なのよ!」
サウナらしき部屋の陰から凛桜の声がした。
全裸で余裕を見せてくるかと思ったら、やっぱりちゃんと女の子だったので少し安心した。
「出るわよ、良いわね」
「ああ」
そして凛桜が一気に物陰から出てきた。
「どう、かな?」
「良いと思うぞ」
俺はそう言って、直視するのをやめた。
結論でいえば、凛桜はちゃんとタオルを巻いていた。
だが、問題点はそこではない。
頬っぺたがほんのり赤くなってて色気すごい。
尚且つ、普段降ろしている髪を括ってお団子にしてるので真っ白なうなじが見えてる。
それで手を身体に当ててモジモジしてるのだ。
ただでさえ顔が良いのに、そんな行動されたらエロ可愛いすぎて鼻血を吹き出してしまう。
「私はもう身体洗ったから、先にお風呂入ってる!」
そして凛桜はそう言い残して、浴槽に向かって走り白濁色のお湯にダイブした。
俺はそれを何気なく目で追ったのだが、それがいけなかった。
ダイブした影響でタオルが取れ、湯の中から完全に全裸の凛桜が現れた。
しかし、当の凛桜はタオルを探していて、見られている事に気づいてない。
「これは身体より先に鼻血を止める必要があるな」
そう呟いたら後、俺の鼻から一筋の血が流れて落ちてきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます